11 王都グランメル
キナノ村から出発して三日がたった。
オークを討伐して以降はこれといった問題はなく、グランメルまでは順調に進んだ。
そして、今俺は丘の途中、グランメルのすぐそばまで来ていた。
丘を登り終えると王都の全容が露になった。
「おお!」
正直、その言葉しか出てこなかった。
想像していたよりも数倍大きく、田舎者の俺は絶句するほどの衝撃を受けた。
「へへ、すげえだろ!俺も初めて来たときは度肝を抜かれたぜ」
そう自慢げに、鼻の下をこすりながらゴートさんは言った。
「あれが俺たちグランド王国最大の都市、王都グランメルだ!」
興奮した口調で話すのも無理はない。
それほどにまですごいのだ。
巨人でも入るのかというほどに、作られた大きな門からは城壁が連なり、まだ少し離れているこの場所からでも王都の全容を見渡すことができない。
丘の上からグランメルを一望すると細やかに敷き詰められた街並みが広がっていた。
中でも目立つのが、ひときわ高くそびえ立つ立派な城だ。
その大きさはこの国の国力を現しているのだろう。
あそこにはグランド王国の国王がいる。
さすがはこの国一番の権力者だ。それに見合ったところに住んでいる。
お城での生活ってどんな感じなのだろう。
やっぱりメイドさんとかがたくさんいて、掃除、洗濯、洗い物などの雑用は全部やってくれて、毎日贅沢な日々を送っているんだろうな。
その分俺みたいなただの平民にはわからない苦労があるのだと思うが、そんな生活が少しうらやましいと思った。
もし試験に合格したら一人暮らしになる。
これまではテイラさんやギルフさんがやってくれていたことを全部ひとりで行わなければならない。
もちろん今まで家の手伝いはある程度してきたので、大体の手筈はわかるが、わかるからこそ、その大変さも理解している。
丘を下るともう町の中は見えず、大きな門が俺たちをどっしりと待ち構えていた。
これ、一体何メートルあるんだろう……。
自分の身長の何十倍も大きい建物を見たのはこれが初めてだ。
そのあまりの高さに圧倒され、上を見上げながらぽかんと口を開けていた。
遠くからでは気づかなかったが城の城壁にはいくつか目立つ傷があり、それが昔の戦争の歴史を現しているようだった。
俺たち以外にも、王都に入るために商人やら冒険者やらが列を作って並んでいた。
その列の最後尾に俺たちも並ぶ。
長い列だったが俺たちの順番はすぐにやってきた。
門番であろう分厚い鎧を身に付けた衛兵に、ゴートさんは何やら許可証を見せた。
門番はそれを堂々とした態度で受け取ると、鋭い視線を向けた。
「よし。入れ!」
門番はそれを隅々まで確認すると、堅苦しい口調でそう言った。
俺たちはそのまま門を潜り抜けた。
おお!
そこには遠くから見るのとは、また違う美しさが広がっていた。
キナノ村って相当田舎だったんだな。
今更ながらそんなことに気づいた。
門を通り抜けた瞬間から、市場での賑わいの声や、広場で演奏している楽器の音が聞こえてくる。
賑やかな街に思わず胸が躍る。
絶対に合格してみせる!!
そう強く思えた。
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