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10 王都への途中 2

 『任せてください』とは言ったものの、さてどうするか。


 俺はゆっくりと歩きながら考える。

 奴らまでは、まだ離れている。

 こちらに気づく気配は無さそうだ。 


 俺は目を凝らし奴らの観察を始める。


 橋の前にはオークが四体。

 全員が木で作られたハンマーを持っている。

 上半身は裸だ。

 薄い布で下半身を覆っている。

 

 オークの中には冒険者から盗んだ防具は身に付けている個体もいるが、今回の奴は何も身に付けていない。

 

 

 おそらく橋を通ろうとする人々を襲い食料を奪うつもりなのだろう。

 隠れずにあんな堂々と橋の前に立っていたら、明らかにバレバレなのに……


 オークと戦うのは初めてではない。

 数体ほど倒した経験がある。


 しかしどれも一対一の状況だった。

 一対四は初めてだが、まぁなんとかなるだろう。

 さしてオークは強い魔物ではない。


 奴らは背丈やがたいこそ良いものの動きが単調すぎるのだ。

 動作がいちいち大げさなため、次の攻撃が読みやすい。

 簡単に回避できる。


 しかし侮ってはいけない。

 その破壊力は抜群だ。


 パワーだけはあるのだ。


 新米の冒険者はその大きな身体に圧倒されて、一歩も動けず一撃をもらうらしい、とギルフさんが言っていた。


 もしそうなれば骨の一本や二本はゆうに折れてしまうだろう。

 いわば初心者キラーだ。



 さてと。

 あらためて今の状況を整理しよう。

 時刻は夜の九時半程。

 辺りは暗く、月明かりだけがこの夜を微かに照らしていた。

 

 ターゲットはオーク四体。

 そして今持っている武器はナイフ四本。

 一本は父から貰ったもの。

 残りの三本はギルフさんが魔物の肉をさばくときに使っていた物を貰った。

 

 開けた平野だ。長時間姿を隠せそうは物は何も無い。

 暗殺をするには不向きな場所だ。

 ここは正面から突っ込むしか無さそうだな。

 

 今回の作戦はとてもシンプル。

 速攻で夜襲を仕掛ける。

 それだけだ。


 そうこう考えている内に結構な距離まで来た。

 ここからはできるだけ音を立てないように一つ一つの動作に注意を払う。


 匍匐前進(ほふくぜんしん)で背の低い草に身を隠しながら近づいていき、こちらの姿が見えないだろうギリギリのところまで接近していく。

 少しづつ、ゆっくりゆっくり。


 よし、後はじっくりとその時を待つのみ。

 ベストなタイミングを見つけることが大切だ。


 四体のオークを同時に観察する。

 少しの仕草も見逃さない。

 必要なのは根気だ。

 自分が確実に殺れるその時をじっと待つ。


 すると、そのタイミングは思っていたよりもすぐに訪れた。

 

 四体のオークたち全員が俺のいる方向とは違う向きに視線を向けた。


 今だ!

 俺は全速力で飛び出した。

 音を消すことなんて忘れて、ただ速度だけを追求した走り。

 



 ザッザッザッと地面を強く踏み込む音で一体のオークはやっとこちらの存在に気が付き始めた。

 それに続き他三体のオークたちも順次俺に視線を向け始めた。


 俺は持ってきたナイフを三本手に取り、こちらに首を向けた順にナイフを投擲した。

 


 サーーッと乾いた音をたてて真っ直ぐに進むそのナイフは、俺よりも断然早く、奴らも避けることすらできなかった。


 間もなく一番最初に投げたナイフが、一体のオークの顔面に突き刺さる。


 『グエエェェェェェェ!』


 と大きな悲鳴を上げながらその場にドサッと倒れた。


 『グエェェェェェェ!』

 『グエェェェェェ!』


 他の二体も続いて地面に倒れこむ。

 

 それを確認し俺は残り一体のオークへ向かって直進した。

 急な出来事に、まだ状況を把握できていない様子で困惑している。


 しかし、段々と接近してくる俺に対し、手に持っているハンマーを振りかざす。

 頭上よりはるか高くに持ち上げられたそのハンマーは、俺を目掛け垂直に振り下ろされる。


 おれはそれをサイドステップで右にかわし、すかさず敵の背後を取った。

 力強く振り下ろされたハンマーの衝撃が地面を振動させ、ジーンと俺の足に伝わってくる。


 これを受けたら一たまりもないな……。


 そう思いながら腰にさしたお気に入りのナイフを抜きとった。


 2メートルを超えるオークの巨体はハンマーを振り下ろしてかがんでいるにもかかわらず、その首元は俺の身長より高かった。


 足に力をこめ、軽くジャンプする。

 

 

 逆手で持ったナイフを左から右へと一瞬で動かし、後ろを振り替えようとするオークの首をはねた。


 血があふれ出す前に俺は首を失ったオークの胴体をけり、後ろに退いた。

 

 

 ドサッという音を立て体と首がほぼ同時に落ちた。

 むせるような血のにおいにおもわず口元をふさぐ。


 よし。

 これで一件落着だ。

 

 再び夜にいつも通りの静けさが戻った。

 

 すると、その静寂を壊すかのようにゴートさんが駆け寄ってきた。


 「兄ちゃん、すげえな!」


 興奮気味な口調で話すゴートさんはなんだかうれしそうだった。


 「ちと、見くびってたぜ!!これなら試験も簡単に受かるかもしれねえな!!」



 そうだといいが……









ここまで読んでいただきありがとうございます。

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