第6話 公園
「足イタイ……」
今日はそんなに寒くなく、この見晴らしのいい公園から町をぼんやり眺めるなんて、私には絶対に似合わないと思っていた緩やかな時間を堪能できるなんて、やっぱりそんなワケは無かった。筋肉痛だよ。痛さに悶えながら家でゴロゴロしてても悲しくなってくるだけだし、こういう時は逆に筋肉を軽く動かした方が良いとかなんとか聞いた気がするしで、昨日に引き続き偵察をすることにして、ここにやって来たのだ。
いやね、昨日は結局、偵察らしい偵察は出来なかったのよ。歩くので精一杯で……なんか前だけを向いて、ただひたすら歩いていた……なんでそんなことをしたんだ? 昨日の私は、どうかしていた。でもまあ、たしか昨日は誰とも会わなかったし、車とかが走っているのは見かけなかった気がする。そっちの方面は無人だったことがわかった、ってことで良しとしようではないか。
そして今……痛い足をさすりながら見下ろす先には、一台の車が走っているのが見える。あれは車というよりトラックかな? 配達でもしてるのかな……やっぱり誰もいないってわけではないんだね。あの車で三台目だっけ? ボケーっとし過ぎて時間の感覚が薄れちゃってて、その上ボケ過ぎて見逃してる車とかもありそうで、頻度とかもうよくわからないけど、たまーに人通りがある程度には人がいるようだ。あ、人そのものが歩いているのは見てないか。
「まあ、こんな感じなら休みの日には、こういうところでノンビリするのも悪くはないな……これ以上寒くなると、さすがにキツいけど……あと足イタイ……」
なんか今日は足の痛さばっかり訴えてしまっているな。しかし痛いのだから仕方がない。せっかく公園に来たのだから、まわりの風景とかを事細かく表現できればとは思う。しかし……そもそもこれまでそういうモノについて意識を向けたことが無かったせいで、何をどう言っていいのかわからない。
なにか普段と違うところはあるのだろうか? 普段の光景がよくわからないから、いまいち判断が出来ない。木々は……冬らしい枯れ具合で、桜が満開とかあからさまに変なことにはなっていない。花咲か爺さんも灰を撒いていない。それどころか爺さんすらいない。灰もない。私にとっては、この目の前の間違い探しゲームは難易度が高すぎる。せめて間違いの個数くらいは教えて欲しい。そもそも間違いは有るの?
「……そんなことより、そろそろお昼にしようか」
なんとピクニックだ。この私がピクニック! 誰もいないこの公園だからこそ、気兼ねなくベンチに座ってコンビニのおにぎりをパクパクできる。弁当は汁の処理とかダルいし、レンジも無くて冷えたら不味そうだから、やめておいた。パンも鳩とか群がってきたら嫌だから、やめておいた。
そう、動物の類はいるんだよ。カラスも。あいつら我が物顔でこの町を占拠しないか心配だ。そのうち戦わねばならない日が来るのかもしれないな。……それにしても自販機でわざわざ買ってやったというのに、こいつめ。
「飲み物はホットでも冷えるか……魔法瓶の水筒が必要なのか? 面倒だな」
やっぱりピクニックするならコンビニでイートインのスタイルが良いかな!