第4話 プラの日
ピーッ、ピーッ、と音がする。ああ、いつもの収集車か。普段と変わらない日常の始まり――うん? そんな話だったっけ?
「収集車が来てる……人、いたんだ」
昨日の夜に私が出したゴミを回収している。結局ゴミはそれしか無かったようだ。あっという間に行ってしまった。まあなんだ、ゴミの問題は、これで解決したのかな? もう三日目になるが、ここまでトラブルが一切無くて怖いくらいだ。なんという理想郷なんだ。あとは電気と水さえ止まらなければ何の問題もないのではないか。うーんでも、いろいろメンテナンスとかの話があるか。
コンビニの商品の補充とかも気になる……とはいえ、なんとなくだけど、そっちは大丈夫そうだな。こびとさん達が頑張ってなんとかしてくれていると思っておこう。それにしてもプラの回収は助かった。SDGsがどうのこうの言ったところで、コンビニで買う食べ物系にはプラ容器のオマケが、ほぼ漏れなく付いてくるではないか。あれらの処理をしてもらえなかったらと思うと……詰んでいたかもしれない。そんな理由でギブアップしてしまう可能性もあったわけか。恐ろしい。
「やっぱり補充はされているな」
昨日買いだめして、しばらくは来る必要が無かったのに、日課の作業をしている間にどんどん気になりだしてしまって、昼食をとったついでに結局またコンビニまで来てしまった。来たからには、やはり何かを買って帰るべきだろうか。板チョコでも買っておくか? 賞味期限が長いし、非常食としては優秀だろう。
昨日なかったはずの、今日の夜遅くに消費期限が来る弁当が置いてある。冷凍食品を私が昨日ごっそり持って行った棚は、今はぎっしり物が詰まっている。昨日はあまり気にしていなかった、私が普段近寄らないレジカウンター脇の揚げ物コーナー? なんて言うのかよくわからないケースの中には、揚げたてホヤホヤかはわからないものの、昨日から置いてあるわけではないであろう、それなりに美味しそうに見える揚げ物が並んでいる。
あれを買うには店員に声をかけないといけないから、健康のためということで我慢をしている。今日も我慢だ。そもそも店員がいないし。あれの代替となる冷凍食品は昨日既に手に入れた。電子レンジでチンすれば美味しくなる。文明の進化は、すばらしい。私のまわりに人がほとんどいなくなってしまっているのに、その文明だけを引き続き享受できるなんて、こんなウマい話があっていいのだろうか。
私が気づかないうちに手に入れたチート能力が常に自動的に発動していて、その結果、こびとさん達がウマい具合に動き回ってくれているかのような状況が生み出されているのだろうか。朝の収集車の人は、大きなこびとさんだったのだろうか? ……考えても謎しか出てこないし、その答えが導き出せるわけもない。
「困ってないんだから、謎解きは一旦保留で良いか」
とりあえずは、なるべく困った状況にならないように、常に冷蔵庫と冷凍庫には入るだけの食料を入れておいて、そのうち非常食なんかも一通り揃えたりして、水も買いだめしておいた方が良いのか。そうだな、今日は二リットルの水のペットボトルを二つ買って帰ろう。昨日はそういう事を忘れていた。非常時にちゃんと備えるとなると……やっぱりスーパーとか行く方が良いのか。いつ行こうかな。
明日とかは、ちょっと遠出をしてみたいし、非常時に備えるのもそんなに慌てなくていいだろう。それこそ、いざとなったらこのコンビニに駆け込んで籠城するだけで、案外どうにかなるんじゃないのか? もし商品を補充する人とかが来てくれたら、その時に助けが必要な状況なら素直に助けを求めれば、そんなに邪険にされない気もする。
「そのノリでいこう。せっかくだから楽しむことを優先していこう」