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皇帝陛下のお世話係〜女官暮らしが幸せすぎて後宮から出られません〜  作者: 柊 一葉
第二部

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1巻発売記念SS「夜にやってくるあいつ」

書籍1巻が発売されました。

めちゃんこかわいい紫釉(シユ)様のイラストにときめきまくりですので、紫釉(シユ)様と飛龍(フェイロン)のお話を書きました。


ちょっと未来のお話です。


「本日よりこちらでお休みいただきます」


十歳を迎え、皇族の成人年齢に達した紫釉(シユ)は、今日から後宮ではなく宮廷の最奥にある場所に住まいを移した。


儀式、儀式、また儀式。

果てしなく続くかと思うような仰々しい儀式の連続に、心身ともに疲弊した後、ようやくゆっくり眠れるというのが今夜である。


「………………」


目が冴えてしまい、まったく眠れそうにない。

疲れているのになぜ……?と紫釉(シユ)は寝台の上で天井を見上げてそう思った。


するとそこに、かすかな足音が聞こえてくる。


(あいつか)


自然に口角が上がる。

むくりと身を起こした紫釉(シユ)は、長い髪を手で整えて寝台を下りた。


──カツン……


窓際で鳴った音。

後宮で暮らしていたときから変わらぬ合図だった。


紫釉(シユ)は窓に近づくと、そっとそれを開ける。


「ここまで侵入するとは腕が上がったな」


そう言って笑う紫釉(シユ)に対し、やってきた一人の少年はニッと笑い返した。


「紫釉(シユ)様が寂しがってると思ったんだよ」


武官候補が住まう場所は、そう近くない。しかも闇に紛れてここまで見張りの目を盗んでくるのは、たった一人だった。


「飛龍(フェイロン)、今日は何用だ?」


側近候補ではない飛龍(フェイロン)は、武官を目指している。初めて会ったのは五歳のときだが、二年ほど前からたびたび夜に後宮へやってくることがあった。


側近候補とは明確な上下関係があるが、飛龍(フェイロン)とは色々な縛りの外にある関係性を保っていた。


「あれあれ」


「?」


飛龍(フェイロン)は、真上を指さしてそう言った。紫釉(シユ)はそれにつられ、窓から少しだけ顔を出し上を見る。


そこには、真っ暗な夜空にいくつも流れる光の筋が走っていた。


「星が……?」


初めて見る流星に、紫釉(シユ)は驚いて見入ってしまう。


「そうそう、流星。見に行こう?」


「行くって?」


「屋根の上」


「本気か?」


皇帝の寝所へやってくるだけでも見つかれば重罪、さらには勝手に連れ出そうなど正気ではない。


「さすがにダメだ。見つかった時に庇ってやれぬ」


紫釉(シユ)は残念そうに首を振る。

しかし飛龍(フェイロン)は、その腕を強引に取って言った。


「大丈夫だって。ちょっとだけ見逃してくれって頼んであるから」


「は?」


振り返った飛龍(フェイロン)は、左手を上げて合図を送る。

その方向には、武官の服を着た長身の男がいた。


紫釉(シユ)は呆れた顔で呟く。


「蒼蓮まで何をしておるのだ」


「ははっ、抜け出すのも皇帝の楽しみだってさ。どうせ眠れないんだろう?行こうよ紫釉(シユ)様」


小さく息をついた紫釉(シユ)は、窓枠に手をかけてひらりと外へ飛び出した。

トンッと小さな音が地面に響き、二つの足音が林の方へと移動する。


「あっちに梯子(はしご)を用意してあるんだ」


「それは助かる」


「さすがに寝衣じゃ壁を蹴って登れないもんな」


「……我はそういうのは得意でない。そなたとは違う」


蒼蓮と合流し、三人になった人影は執政宮の一部に到着する。そこには、巻き込まれた秀英(シュイン)と麗孝(リキョウ)が待っていた。


「今日だけだからな……!?」


兄に叱られるのは、もう何度目か。

秀英(シュイン)の苦言に、飛龍(フェイロン)は「はいはい」となおざりに返事をした。


紫釉(シユ)はそれを見てくすりと笑う。


「すまぬな。我のためと思うて今宵は許してくれ」


心のどこかで、「皇帝として成人を迎えればもう何もかも諦めなければいけない」と思っていた。だがさきほど飛龍(フェイロン)がやってきたことで、そうではないのだと密かに安堵する。


「では、紫釉(シユ)陛下。お気をつけて」


蒼蓮は、穏やかな顔つきでそう告げた。

紫釉(シユ)は黙って頷くと、すでに梯子を上がっている飛龍(フェイロン)の後を追う。


見上げれば次々と星が流れていて、とても美しい光景だと思った。


(星が流れるは不吉だと申す者もおるが、これほどに美しいならばきっとよいことがあるに違いない)


十歳にして皇帝歴七年の紫釉(シユ)は、これからの日々に期待を膨らませるのだった。






5月17日発売!

「皇帝陛下のお世話係」ノベル2巻&コミックス1巻


挿絵(By みてみん)


ノベル版は半分くらい書き下ろしで、新しいエピソードが満載です♪

紫釉様の成長や凛風の仕事ぶり、蒼蓮の深まる愛情と不憫がより楽しめる内容になっております!


どうかお楽しみください!


漫画版では、吉村悠希先生の描く麗しい世界観が最高です。

お兄ちゃんと蒼蓮の不憫かっこいい姿よ……!( ノД`)煌びやかな中華の世界、詰まってます。


なお、小説版もマンガ版もずっと名前にふりがなついてます。読めない・覚えられないが解消されて、ストレスフリーな中華をお楽しみいただけます。


ありがとうございます、スクウェアエニックスさん…!


※アニメイトさんなどでの特典配布は、なくなり次第終了です。



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― 新着の感想 ―
[一言] 中華風の作品は好きなのですが漢字が読めず断念してしまう作品もある中、ふりがなはとても嬉しいです!!少ししか登場しなかったですが飛龍が1番好きなキャラクターでした。他のなろうやコミカライズも読…
[一言] 次の章からの飛龍くんの出番がありそうですか? 大人の中の陛下は子供らしさが不足しがちかもしれないので飛龍みたいなオトモダチがいてくれるとホッとすると思うのですけれど。
[一言] 5歳じゃない!?そうか、成長するよな…そうだよな… と思った陛下推しの私です。大きくなっても変わらず可愛いな陛下。 成長すればするほど、どんどん制約は出てくるけど、きっと陛下の周りの大人…
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