初めましてのお茶 〜その後〜
間話扱いです。
短いです。
誤字脱字変換ミス、ご容赦ください。
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その後二人ともだいぶ打ち解け、ソルが騎士団でどれだけ強いかや演習時の逸話などを話してくれて、つい根掘り葉掘り聞いてしまった。
……へぷしょっ
「ルナ? 寒い?」
「寒くはないけど、くしゃみ出ちゃった。淑女失格ね?」
「淑女は失格だろうけど可愛いから大丈夫。」
ソルディスは用意していた肩掛けをルナティアにかける。
「そろそろ風が冷たくなってきましたね。カイル、お暇しましょう。」
「だなー。今日は楽しかった。」
マティスとカイルは楽しかったというけれど、楽しかったのはルナティアの方だ。
2人の騎馬まで送っている時、そういえば。とソルディスが口を開いた。
「そういえば、マティスとカイルは次の王家主催の舞踏会出るのか?」
「あーー……そうだった。出ろと厳命されてるぜ。」
「私もですね。流石に逃げられなくなりました。」
「じゃ、一緒だな。……頼みがある。一緒にいてくれないか。ルナがデビューになるんだ。一緒にいるつもりだけど俺だけでは目が行き届くか不安なんだ。……下手な奴には預けたくないし。」
本当はそれが今日のお茶に誘った本命の話題だった。
この二人ならルナの拒否反応が出ないだろうと思っていたが念の為。お茶に誘い、飲食を共にして実際に大丈夫か確認した上で頼もうと思って誘ったのだ。
受けてくれるかどうかは二人次第だが。
「それは全然構わねーぜ? 虫除けしてればいいんだろ?」
「むしろ願ったりですね。……ティアは嫌ではありませんか?」
二つ返事で引き受けてくれた。
「ぜんぜん。嫌じゃないです。迷惑かけてごめんなさい、私はお披露目されないでもいいと言ったのですけれど。」
「だめだよ。叔父上の希望通り、叔父上を継ぐのはいいけれどそれならルナがお嫁さんになって俺を婿にもらってくれなきゃ。それにはデビューして、婚約許可貰って、俺を婚約者として周りに広めなきゃ。」
「ソルが養子になって、お嫁さん貰えば…いいじゃない。私って言う小姑はそのままだけど、離れを使わせてもらえればそんなには迷惑かけないかと思うのよ。」
「だめ。却下。なに? ルナはいいの? 俺がルナ以外の女の人と一緒になってもいいの? 俺はやだよ? 他の女と一緒になるのも嫌だし、ルナが他の男のものになるのも嫌だ。」
「でも、こんな成長しない体じゃ…迷惑しかかけられない。」
「ルナがいい。成長しなかろうが腕がなくなろうが動けなかろうが、ルナがいい。ルナしかいらない。いつも言ってるでしょ。いい加減諦めて俺のものって自覚して。」
余談だが、ルナティアは幼い時の事件から、成長は止まっている。
それ事件以来、体調の良い時があまりなく、度々体の不調を訴える。それは外傷も伴い時に命すら危ぶまれるもの。体調が良かったとしても、ソルディスと一緒でないと外出は許してもらえない。両親よりソルディスの方がルナティアの変化をいち早く感じ取れるからだ。
ソルディスにとっては嬉しいだけなのだが、ルナティアには嬉しい以外にやはり申し訳ない思いが多分にある。
言い伝えがある。
“金髪金眼、銀髪銀眼、黒髪白眼。三者が揃うは吉凶の予兆”
今代第四皇子は黒髪白眼だ。
ルナティアとソルディスは生まれた時、隠し育てられ、披露目前にどちらかが排除される可能性が高かった。二人の色が伝承通りだったから。
ルナティアは銀髪銀眼、ソルディスは金髪金眼でうまれた。うまれた時、マルティネス夫妻とソブラン夫妻は悩み葛藤し結託して隠すことに決めた。我が子たちを。隠し通せるギリギリまで。
やがてソルディス兄弟の両親が早逝し、ルナティアの両親・ソブラン侯爵が引き取りしばらくした時、痛ましい事件が起きた。
痛ましい事件ではあったが、良いこともあった。ルナティアとソルディスの纏う「色」が変わったのだ。
ルナティアは金髪赤銀目に。
ソルディスは銀髪金眼に。
……隠さなくても良くなったのだ。
育たないルナティアを見て奇異な視線を向けるものはいる。
だがルナティアもソルディスも「吉」と出るか「凶」と出るかわからない、危険人物として監視され、いざとなったら排除される対象ではなくなったのだ。
そして、ソルディスと婚約するのなら、侯爵家の娘と公表するのなら、社交界デビューをしなければならないのだ。
「色々と事情がありそうですね。ティアが遠慮している様ですが“相愛”と言うことであれば協力は惜しみませんよ。」
「虫除けしてる間、抱き上げててもいいか? いや! 怒るなよ! 淑女なのはわかってるしお前のだってのもわかってるから!」
カイルの発言に煽るディスの気配が一気に黒くなるが、カイルの案にはマティスも賛成の様だ。
「そうですね。そのほうが私“たち”にとっても大事な人と認識されるでしょうし、そうそう言い寄ってくる豪の者もいないのではないでしょうか・・・。男も女もね。」
マティスはそう言って、すっと自然にソルディスからルナティアを抱きとった。
「ずいぶん軽いですね。ちゃんと食べていますか? …おや…?」
「おい!!」
「……マティス様?」
自分を抱く腕が変わったのはわかった。疑問形になったのは、ソルディス以外に触られた時の嫌悪感がほとんどなく不思議だったから。そして、幼児を抱き慣れている様な安定感だった。
思わず顔だろうあたりをぺたぺたと触ってしまう。
「はい。私です。居心地は悪くないですか? 舞踏会用のドレスとなるとまた抱き上げ方は考えないとならないですね。」
「私は踊れないですし、長く歩けないのでほとんど抱き上げられていると思います。それを考慮してコルセットとか締め付けるものは少なくして、クリノリンもつけないつもりなんです。なので、あまり変わらないかと。」
「なら安心だな。」
「は……ぅうひゃぁ。」
淑女にあるまじき声が出てしまったが、マティスからカイルの手に渡った様だ。
移動させる時の抱き上げ方が少々乱暴だが、腕の上に落ち着いてしまえば安定感がある。
「どうだ? 居心地悪くねぇか? って本当に軽いな。食えば成長するんじゃね? 今度うまいもん食いに行こうぜ。」
カイルは片腕で危なげなく抱き上げ、空いた片手でルナティアの頭をわしわしと撫でる。
「ふふっ。カイル様はお兄様って言うより、お兄ちゃんって感じですね。」
カイルの顔あたりもペタペタ触る。
ルナティアは触った感じから二人の顔が整っていると知り、舞踏会ではやっかまれるだろうことが予想された。それと同時にマティスが言った『願ったり』の意味もなんとなくわかった。
歳が若く、地位があり、実力もあり、見目がいい。
女性が放っておかないだろう。
それを避けられて『願ったり』だと言うことはあまり騒がれるのが好きではないのか、まだ決めたくないのか。
「もういいだろ。……ルナ?」
ルナティアの真後ろからソルディスの声が聞こえる。この声は多分きっと困った眉毛になって目尻が下がって両手を出してくれてる。迷わずソルディスがあるだろう方に両手を伸ばすとふわっと抱きしめてくれた。
「…ソル…。」
ソルディスの腕に戻ってホゥっと息をついた。
「なるべく離すつもりはないけど、いざと言う時は、頼む。」
「ご迷惑をおかけします。」
二人は自分たちにも利があるからお互い様だと笑っていた。
ルナティアとソルディスの心には伝承が巣食っていた。
生まれた時は伝承通りだった二人。
ソルディスが死にかけて、目が覚め、ルナティアの成長が止まったら変化した外見。
もしルナティアが成長できたら、戻ってしまうかもしれない。いや、戻ってしまうだろうと予感している。
なにが原因で成長が止まり外見が変化したのかわからないけれど、他人から聞いた現在の自分たちの外見は幼い頃の二人の色を取り替えたかの様だ。
ルナティアとしてはソルディスが元気に笑っていてくれればいいだけなのだけど。
もし自分が危険人物なんだったら、逆に、ソルディスが被害を被る前に誰かに排除してもらいたいと思う。
…ひだまりの様なソル。だいすきなソル。…ソルに降りかかるすべての災厄は全部引き受けてあげる。だから、笑っていて欲しいと願う。
お読みくださりありがとございます。