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悪友



 ガヤガヤとした詰所で帰り支度を整えながら、この後の予定を考える。

 まだ時間は昼過ぎ。ちょうどお茶の時間くらいだろう。



……確か新しい菓子店ができたと言っていたから、のぞいてみてもいいかもしれない。



 家で待っている従姉への土産を考える。

 いろいろ行動が危なっかしいのにじっといていられない従姉は大人しくしているだろうか。

 早朝、深夜と呼んでも差し支えない時間からの勤務で家を出る時、見送りに出てきてくれたが寝巻きを踏んで転びかけていた。

 半分寝ている従姉をベッドに入れて、もう一度ちゃんと寝ることと、1日大人しくしていることを言い含めてきたけれど、本当にちゃんと大人しくしているだろうか。



「なぁにニヤニヤしてんだよっ。」

「うるさいな。」

「なぁなぁ。今日なんかあるか?たまには飲みに行かねぇ?」

「あー………。いや、新しく店ができたって言ってたから、そこ寄って土産買って帰る。」

「また従姉ぇちゃんかよっ。」

「悪いか。」



 このうるさいのは同期で見習いから正騎士になったカイル・ヒューレット。

 おんぶお化けのように人の背中にくっついていて着替えづらいことこの上ない。悪ガキがそのまま成長したような行動と口調だが、人がいい。カラッとした性格だ。



「よしなさい。馬に蹴られますよ。」



 でかいおんぶお化けを引き剥がしてくれたのはマティス・モルガン。やはり同期で見習いから正騎士になった。

 口調も醸し出す雰囲気も穏やかで木漏れ日のようだが、腹の中はきっと、髪色と同じで真っ黒だ。たまに口からその黒さが漏れ出している。



「けどよー。男とつるむほうが楽じゃん? 同年の女ってめんどくさいじゃねーか。言葉遣いがどーだ服がどーだ飾りがどーだ。誉めなきゃ機嫌悪くなるし誉め間違えたらもっと機嫌悪くなるし。姉上なんてもっとめんどくせぇ。」

「そこを上手く機嫌良くさせるのが紳士でしょう?」

「いやー、必要ない時には無理だわー。」



 こんな会話を世の淑女が知ったらなんというか。

 カイルもマティスも、子爵家の子息だけあり、公式の場ではそつなく女性のエスコートをこなす。

 カイルでさえ紳士に化けるし、マティスは言わずもがな。

雰囲気は正反対だが、かたや野性味あふれた美貌で、かたや麗しく穏やかな美貌の二人だ。当然とても人気がある。なのに普段のこの残念さ。俺としては付き合いやすいからいいのだけど。

 それはそれとして、俺は明るいうちに帰って、庭で従姉とお茶をしたい。

 うちの従姉はずっと愛でていたいくらい可愛い。



「そういえば、いつになったら紹介してくれるんです?その自慢の従姉上を。」

「そーだそーだ。いっつも時間が悪い、具合が悪いっつって、何年経つんだよ。」

「いや本当に間が悪かっただろうが。 俺と休みが合ってないばかりか、時間空いても夜中じゃないか。そんな時間に大事なルナに会わせられるか。」



 今言ったことは嘘でも方便でもなく、本当にタイミングが合わなかったのだが、それだけでなく、二人の為人を見極めたかったというのもある。


…この二人なら、会わせても大丈夫だろう。



「なら、今日来る?か?明日非番ならそのまま泊まればいいし。」



 私服に着替え終わり剣帯を巻き調整しながら、二人に問う。

 新しい店の菓子は買って帰るけど、多分従姉も昼間になんか作ってるんだろうし。こいつらになら、うん。食わせてもいいかな。傷つけること言わないだろうし。



「俺非番。え、まじいいの?」

「私は夕方からですね。でもいいんですか? どう言った心境の変化なのか怖い気がするんですが。」

「出掛けの状態からすると、ちゃんと大人しくしてたら今日は体調いいはずなんだ。……嫌なら来なくて全然構わないぞ。むしろ邪魔だし。」



 扉に足を向けながら、どうするんだと視線をやる。



「いく。」

「いきます。」



 もちろん、二人を従姉に合わせるのには下心がある。

 従姉を守るナイトは多い方がいい。

 俺も姉も18になった。本来なら披露目を済ましている年齢だが、姉の体調が不安定すぎて伸ばし伸ばしにしていた。

 他の国はどうか知らないが、我が国では、披露目を行い、社交界に出られる大人と見なされなければ婚約もできない。上流貴族になると婚約に王の許可が必要になる。流石にもう無理だ。俺が我慢できない。

 従姉に………ルナに婚約の打診が来るのも、俺に言い寄ってこられるのもまっぴらだ。

 ルナを守るのは俺だ。



「なら早く着替えて。20数えるうちに終わらなければ待たずに先に行くよ。」



 心持ち早目のペースでカウントした20だったけれど、二人は数え終わる前に用意を終わらせた。





男子校のノリ……かな?

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