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きっかけ

まだ前振りです。

すっ飛ばしても問題なしです。


 最近、甘い花々香りのする風が漂うようになってきた。

 そろそろ春なのだろう。

 日差しの暖かさに誘われて窓を開けても、風が冷たいと思うことが少なくなった。


これは何の花かな。

春成りのベリーはそろそろかな?


 そんなことを考えながら、私は指先の感覚を頼りに刺繍をしていた。

 上手くできたら従弟にあげるつもりのハンカチの縁取りをしている。


 私は目が見えない。

 見えないと言うと語弊があるかも。

 光があるかないかはわかるし、天候と体調が良ければ、もの(?)の影くらいはぼんやり見える。

 足もちょっと悪い。

 だいぶ良くなったけど、まだ走るのは無理。

 ゆっくり、ゆっくり、歩き方を意識して歩けば、自室から玄関くらいまでは歩ける。

 ……………階段は手すりをがっちりつかんでないと危ないけど。

 あと、不定期に、突発で吐くほどの頭痛が起きる。数回に一度は意識を失うほどのがあって、その時はだいぶ脈が弱まって危ない状態になるらしい。

 普段は元気なんだけどね。


 昔は、普通に健康だった。

 いや、健康状態は普通だったけど、普通以上におてんばだったと思う。

 従弟のソルと間違えられるくらい、おてんばだった記憶がある。

 ドリフォロスという執事がいるのだけれど、ドリフォロスがまだ執事見習いだった頃。

 メイドを出し抜き部屋から抜け出して、カエルを捕まえに行って、沼にはまってドリフォロスに怒られたり。

 庭園を散歩中、護衛を撒いて、庭園にある果樹の実が食べごろだったから、木登りして採ろうとしたけど木から落ちて、庭師に泣かれ、護衛とドリフォロスに怒られたり。

 夜遅くまで職務しているお父様の顔を見たくて、メイドに見つからないように、窓から部屋を抜け出し、屋敷の外壁伝いに、お父様の執務室に行ったらドリフォロスがいて、心配で怒りすぎて泣かれたり。


 …………うん。ろくなことしてないね。

 ドリフォロス、ごめんね。でも、あの時ハゲてなかったから平気だよね。

 今はどうなんだろう。ちゃんと髪の毛あるかな。生えてるかな。


 ちょっと遠い目をしてしまうが、それくらい、私は健康体だった。


 だけど、今から10年前の6歳の頃の話。

 その日はいい天気だった。

 門の中は安全だと言われていたから、ソルと庭園で遊んでいたら、侵入した賊に襲われたのだ。

 その時は運悪く、護衛は屋敷にお茶の支度を言いに行っていて、私たち二人だけだった。


 ソルは、私と同い年の父方従弟。

 お父様の弟の子だけれど、賊に襲われて家族を亡くし、それからソルはうちで一緒に育った。ソルには兄様が一人いて、兄様のリヒトはすでに騎士寮に入っていたから一緒に育った感じはないけれど、うちを実家のように思ってくれていると思う。休みの日にはうちに「ただいま」って帰ってきてくれるから。

 ソルは物心つく頃から一緒にいて、一緒に育って、私には大事な大事な存在。姉である私が守らなくちゃと思ったのに、あのとき、逆に守ってくれた。庇ってくれた。

 私を庇ったから、賊に切られて、殴られて、血だらけになって。

 右腕も動いていないし、頭と口からも血を流してるのに、私を抱きしてめて離さなかった。自分の体で私を隠すように。


 護衛が来て賊は取り押さえられたけど、護衛がきたのを確認した途端、ソルから力が抜けた。

"……けがしてない?…よかった……"

って。私の心配だけして。


 護衛と医師といろんな人が、ソルは助かる見込みが少ないと言っていた。

 仮に命が助かったとしても。

 頭の骨が少し折れてて多分頭の中で出血しているだろうから、知能や言語などに影響が出るだろう事。

 右肩と背骨を深く刀で切られて、右腕と下半身が動くようになるか分からないという事。


 お父様はソルに家督を継がせたく思っていて、ソルもそれをわかっていて、期待に応えようと頑張っていた。

 なのに、跡継ぎじゃないからって気楽に過ごしてた私なんかを庇って。遊ぶのだって、抜け出すのだって、全部私が連れ出して、ソルは止めてたのに!

 ソルが怪我をしてしまった。


 あの時はまだちっちゃくて、こんなふうに何がダメだったとか、周りの人が言っている言葉の意味なんかほとんどわかってなかった。

 だけど、周りの大人はソルのこと諦めかけてるのがわかった。

 ソルが私を庇って、死んじゃいそうなけがして、でも、最後まで私の心配してくれてたソルにごめんなさいって謝りたくて。でも、ソルは目を開けてくれなくて。手を握っても握り返してくれなくて。

 いつもなら、不安に思って手を握ったり抱きついたりすると、寝てても目を覚まして「どうしたの?」って言ってくれるのに。

 ソルの目は閉じたまま。

 優しい声も聞かれない。

 けがしたのが私だったらよかったのにと思ったんだ。


 屋敷のベッドに寝かされたソルの手をずっと握ってた。

 医師や家人たちが忙しなくする中、私は何もできなくて邪魔だっただろうけど、手を握ってたらソルは私を置いて死んだりしないんじゃないかと思いたかった。ソルは心配性だし優しいから。


 そしたら、奇跡が起きた。

 朝。

 ソルが目を開けて、私を見るなり、

"……おはよう、ルナ。痛いところはない?…"

って、普通に聞いてきた。

いつもの大好きな優しい声。優しい笑顔。

"……何で泣いてるの…?……"

握り返してくれなかった手で、私の頭を撫でながら。


 幸い、ソルの怪我は後遺症も残らず、順調に回復した。




"そろそろ帰ってくるかなー。今日は新しくできたお店のケーキを買ってきてくれるって言ってたんだよね。楽しみーー。"


 ソルは家督を継いだ兄様の手伝いができるように、または、うちの家督を継げるようになるまでの期間、お父様の補佐について勉強もするけれど、自分を鍛えたいといって、頑張って騎士になった。

 ソルにとって、大事な人たちを守れるように。

 その中に私も入っているのが、とても嬉しい。


 大好きな従弟はどんなふうに成長したのだろう。

 お日様の光でキラキラしてた、お日様とおんなじ色の髪。

 怖い夢を見たときでも目を合わせると安心する、あったかい金色の眼。

 いつかまた、見られたらいいな。


うーーー。

自分の中で描きたい情景と文章が噛み合わないこの現象。

後日修正すると思います。

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