1 昔々の出来事
初投稿です。
誤字脱字変換ミスに加え、文脈がおかしいことがありますので、優しく教えていただけたら幸いです。
月明りが眩しい夜。
鬱蒼とした森の中、馬を駆る男がいた。
何かに恐怖するように歯を食いしばり、行く手を遮ろうとする枝を打ち払うこともせず、当たるに任せ、唯々、遠く、先だけに視線を向け、一分でも一秒でも早く、先に行こうとしていた。
男の心臓が、嫌な鼓動を打つ。
背中に冷たい汗が伝い、手綱を持つ手は震えながらも、馬に先を急くことを強いている。
男が引いた守護陣は、秘匿のため、転移陣から離れたところにあった。
…………早く…早く!
……間に合ってくれ
……どうか
守護陣の発動は、陣からどんなに離れていても、設置者である男に伝わる。
害をなすものを排除し守る為のそれは、守るべき対象者の血で発動し、設置者である男にしか解くことはできない。
……故に。
発動された今、男が解除するまで、守護陣は解除されず、発動者は護られているはずなのだ。
それなのに、嫌な予感が止まらない。
名を叫びながら、馬をどれだけ走らせたのだろうか。
実際はそんなに長い時間ではなかったのかもしれないが、男にとっては何十分、何時間にも感じた。
やがて、ぽっかりと、木々のない場所に出る。
森の中にできた小さな広場のようなその場所には、中央に一際大きな木が一本生えていた。
その木が大きすぎたが故に、影の出来る範囲では、ほかの木々が育たなかったのだろうことが知れた。
その、大樹の根本が、男の目的地だ。
半円の守護陣はちゃんと機能している。
人影も見える。
一人が一人を抱き抱え、木に寄りかかっている。
その姿を捉えた時、男の心臓は"ドクン"と、脈を打ったが、馬から転げ落ちるように降りながら人影に急いだ。
男は、心のどこかが壊れていくのを、脳の片隅で認識した。
なぜ、二人は赤いんだろうと考えながら。
「………フェリオス?………セレネ…?」
抱き抱えられた者と、守るように抱き抱え木に寄りかかる者の名を呼ぶが、呼ばれた二人はぴくりとも動かない。
なぜ、反応しないのか、理解したくないというように、男は、最初は恐る恐る。徐々に強く揺さぶっていく。
「………起きて……なぁ…起きろよ…!」
揺すっても、頬を叩いても目を開けなかった。
まだ、二人は暖かい。
まだ、流れる血は固まっていない。
……けれど、脈がない。
……息をして、いない。
「………………っっぁあぁあああああ!!!!!」
男の絶叫が響いた。
その日、ひとつの島が沈んだ。
御伽話にもなりそうな位、昔にあった国の最後だった。
遅筆ですが、完結目指して頑張ります。