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6話

 そんな有り様でしたから、両親も周囲の人達も、初めは信じていませんでした。


 しかし、家宝を持ち出して失ってしまった事は本当なので、娘は罰を受けることになりました。


 美しいと評判だった長い髪が、村の皆の面前、お父さんの手でばっさりと切られました。


 その時、正に今切られたはずの髪が、まるで生きているようにするするとお父さんの手から滑り出て、娘の首筋に戻ったのです。


 皆びっくりして、お父さんはもう一度、今度は地面に切り落としましたが、また髪は舞い上がり娘と繋がったのでした。


 娘の話が真実であったことを、やっと皆が納得してくれました。




 暫くは羨ましがられたり、神様のように扱われたりしました。


 娘の真似をして泉まで行き、宝を投げ入れた人もいたようですが、不思議なことに、もう男が出てくることはありませんでした。




 数十年が経ち、お父さんとお母さんが年老いて亡くなっても、娘は十六歳のままでした。


 娘は多くの男から結婚を申し込まれましたが、いつも断っていました。もし人を好きになったら、その人が年老いて死にゆくのを見届けなければならないからです。


 だから誰も好きにならないように、頑なでした。


 それにしても、周囲の人は年をとって死ぬのに、娘だけはずっと若いままです。


 初めのうちは神様みたいに持て囃していた村の人達も、次第に娘を冷たく扱うようになっていきました。


 年をとらないなんて気味が悪いし、それよりも羨ましくて許せなかったのです。


 居場所が無くなった娘は、村を出ることにしました。


 若い娘の一人旅です。生き物にも、人間にだって、襲われるかも知れません。短刀は懐に忍ばせ、長刀は腰に差して、当ても無く、娘は村を発ちました。




 それはもう、数百年も前のお話になりますが、きっと今でも、娘は何処かを旅しているのでしょう。


 だって、決して死ぬことは無いのですから。

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