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わたつみの魔王  作者: 山谷 宗
序章
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プロローグ

黒一色だった画面が白く変わり、さらにぼやけた何かが映し出された。撮影者がピントを合わせたのか画面は徐々に鮮明になり、それが風にはためく星条旗であることがわかった。


次いで画面は水平線で分かたれた青空と時折白波を立てる深い青の海面に切り替わった。船上からの撮影なのか画面は大きく揺れるがカメラは固定されているようで、細かなブレは生じていない。


画面が一瞬暗転したのち、カメラは甲板で短艇の引き揚げ作業と短艇の指揮に当たったらしいライフジャケットを着用した士官を映し出した。彼は傍らの年輩の士官と会話をしているが、音声が記録されていないため、どんな会話をしているのかはわからない。


画面は再び風にはためく星条旗を映し出し、その数秒後、画面には海面に浮かぶ艦影が映し出された。


陽光に照らされた艦影は上甲板中央に設けられた艦橋以外に突起がなく、低い乾舷と相まって背鰭を突き出した海棲哺乳類のようにも見える。その特徴的な姿から、このフネが潜水艦であることがわかる。唯一の艦上構造物である艦橋は流線形に整えられ、水中の抵抗を軽減しようとする設計者の意図が窺えた。


その姿にはスマートさと俊敏さ、そして冷たい凄みのようなものが感じられ、「ドン亀」と揶揄されたような野暮ったさは全くない。


しかし船体の濃い灰色の塗装はあちこち剥がれ、吃水線の辺りには海草やフジツボが付着している。その様子からこの艦がしばらく整備を受けることなく放置状態にあったことがわかる。


潜水艦はうねりに揺られながら海面を漂っており、動き出す様子はない。


すると突然、上甲板前部、艦橋上、上甲板後部の三ヶ所から黒煙と何かの破片が噴き上がった。どうやら艦内に仕掛けられた爆発物が爆発したようだ。


その後数分間は、潜水艦は何事もなかったかのようにうねりに揺られていた。しかし艦首が徐々に沈下していき、それに伴って艦尾がゆっくりと持ち上がり、やがて鈍い金色の推進器が露になった。


艦の前傾斜は徐々に大きくなっていき、艦橋が水没する頃には船体はほぼ直立状態になった。そのまま艦はゆっくりと沈んでいき、そして二個の推進器が沈んだ直後、艦尾は完全に海に飲まれた。海面は艦内から噴き出した空気で激しく泡立っていたが、その様子を映すと画面は暗転した。


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