表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第七章 冒険編 極寒の楽園
98/300

冷たい女(前編)

今回から雪女の過去が明らかになります。

 当時の私は体だけで無く、心まで冷たい女でした。気に入らない者も気に入った者も誰それ構わず、氷付けにしていました。それは強さの証明、自分という存在を世の中に示したかったのかもしれません。


 「あら、この洞窟の奥から人間の気配を感じるわね」


 特に自分よりも劣っている生物を中心的に狙い、その大部分を占めていたのが人間でした。


 「ふふふふ、人間の悲鳴が一番心地良いのよね」


 期待に胸を膨らませながら、私は“アンダータウン”に足を踏み入れました。


 「おや、旅の人ですか?ようこそ、ここは“アンダータウン”。地下深くに存在する楽園です」


 「そう、“アンダータウン”って言うの…………気に入ったわ。この町を更に私好みに作り替えてあげる!」


 そう言うと私は、親切に声を掛けてくれた若者を一瞬で氷付けにしてしまいました。


 「うわぁあああ!!」


 その悲劇を目撃した別の若者が、噴水のある広場へと走り出した。


 「ふふふふ、良いわ良いわ。怯え、逃げ惑いなさい…………じわじわと追い詰めてあ・げ・る……」


 私は逃げた若者を、歩いて追い掛けました。ゆっくりと時間を掛けて楽しみたかったのです。


 「皆、大変だー!!!」


 「おいおい、どうしたんだそんな大声上げて……また女房に隠れて浮気でもしたか?」


 息を切らしながら大声を上げる男性に、噴水広場にいた数人の内の一人が冗談混じりに聞いて来た。


 「そんなじゃねぇーって!今さっき、入口の方で全身真っ白な美しくも恐ろしい女が、案内係のマープを氷付けにしちまったんだよ!!」


 「美しくも恐ろしい女だー?やっぱりお前浮気してるんじゃねぇかよ。駄目だぜー、女房は大切にしないと……」


 「そう言う意味じゃ無い!!本当に氷付けにされちまうんだよ!俺達も急いで逃げないと……」


 必死に、危険が迫っている事を伝えようとするが、全く持って信じてもらえない。


 「…………ん、もしかしてあれか?お前の浮気相手?」


 「ふふふふ…………」


 「も、もう来たー!!」


 男が指差す方向には、不気味な笑みを浮かべながらゆっくりと歩いて来る雪女がいた。


 「ちょっと待てよ。マジかよ、よくあんなべっぴんさんを捕まえられたな!?」


 「おいバカ!!近づくんじゃ無い!」


 その男は哀れにも、雪女に歩み寄ってしまった。


 「俺はウェイ、あそこで騒ぎまくっている男の知り合いだ、よろしく頼む」


 そう言うとウェイは、片手を雪女に差し出し握手を求めた。


 「あら、ご親切にどうも」


 それに答える様に私は、彼の手を握りました。そして一瞬で氷付けにしてしまいました。


 「わざわざ自分から氷付けになりに来てくれて……」


 「きゃあああああ!!!」


 ウェイが氷付けにされた事により、噴水広場では大パニックが起こり、皆四方八方に逃げ回った。


 「ふふふふ、鬼ごっこは大好きよ」


 私は遊び感覚で、町の人達を追い掛けました。一人一人に恐怖を与え、追い詰めて行きました。




***


 


 「がぁああ!!…………」


 「これで三十九人目、人間を氷付けにするのって本当に楽しいわ!」


 人間達を氷付けにして行き、次で四十を迎えようとしていた時、その人は現れました。


 「おやおや、あなたが雪女さんですかな?」


 そこに立っていたのはオールバックで、整った張りのあるスーツに身を包んだ初老の男性であった。


 「私を雪女だと知って近づいて来たと見て取れるけど、おじいさん、何者かしら?」


 「私は、この町の町長を務めている者ですよ」


 「あら、町長自ら出て来るなんて私は運が良いわ」


 そう言いながら、ゆっくりと町長の方へと歩み寄る雪女は町長を直ぐ様氷付けにしてしまった。


 「これで四十人目、ふふふふ」


 雪女が気持ちよく高笑いしていると、氷付けになった町長から、何かが溶ける音が聞こえて来た。


 「ど、どういう事、私の氷が溶かされている!?」


 「…………いやはや、危なかった。この“炎の王冠”が無かったら一生氷付けでした……」


 そう言うと町長は懐から、常に揺らめいている王冠の形をした炎を取り出した。火傷を負わないのが不思議な位、赤々と燃えていた。


 「“炎の王冠”ですって…………?」


 「随分昔の話です。元々この洞窟は私のお祖父さんの、そのまたお祖父さんの時代に見つかった地下空洞でしてな。そこを発展させていた時に、発見されたのがこの“炎の王冠”という訳です」


 町長の説明に苛立ちを覚えた雪女は、今度こそ氷付けにしようと右手を前に突き出した。


 「大人しく凍りなさい!!」


 雪女の右手から吹雪が発せられ、瞬く間に町長を氷付けにした。


 「……お止めなさい。そんな事をしても無意味ですよ」


 「!!?」


 しかし、またしても“炎の王冠”が氷付けにした町長の氷を溶かした。


 「そ、そんな……私の力が効かない……」


 「“炎の王冠”よ。その秘められた大いなる力を解き放ちたまえ……」


 町長が呟いた瞬間、“炎の王冠”がより赤々と燃え上がり、赤いオーラが雪女を包んでいく。


 「な、何だこれは!?」


 「私の一族は、代々“炎の王冠”の扱いを研究しました。その歴史の中で私の父は“炎の王冠”を扱うのに成功し、それを私が受け継ぐ事で使える様になりました。それでもほんの一部ですがね……」


 赤いオーラに包まれた雪女は、徐々に白い肌が血色の良い小麦色の肌へと変化していった。


 「ここであなたを倒すのは簡単です。しかし、それはあまりに酷な話…………そこであなたの力を封印させて頂きました」


 「封印だって!?」


 恐ろしい事実を聞いた雪女は、咄嗟に両手を前に突き出したり、挙げて見る等して確かめる。すると、確かに力が出せなくなっていた。


 「ふざけるな、早く元に戻せ!!」


 「ええいいですとも、あなたが町の人々から感謝される様になったらすぐ、元に戻して差し上げましょう」


 「違う、今すぐ元に戻せ!!」


 喚き散らす雪女だが、町長はそれを無視して、氷付けになった住人の氷を溶かす為に歩いて行ってしまった。


 「力が使え無くなった今のあなたは、只の一人の女性です。その事をしっかりと胸に刻んでおいて下さい」


 「クソ爺が、絶対に殺してやる……」


 歩いて行く町長を、後ろから殺気だって睨み付ける雪女。


 「言葉使いにも気を付けなさい。その調子では一生掛かっても、感謝されませんよ」


 「ふん、誰が感謝なんかして貰うもんか!!」


 「はぁー、これは時間が掛かりそうですね……」


 クールで冷たかった彼女が、今は荒々しく暴言を吐く人に変わった。これも“炎の王冠”の力と言えよう。


 「あ、そうそう……言い忘れていましたが、あなたの寝泊まりするのは私の家ですから忘れずに覚えておいて下さいね」


 「えっ…………えーーーー!!!」


 こうして私は、“炎の王冠”によって力を奪われ、取り戻す為には町の人々から感謝されなければならない。そして町長さんとの同居生活が始まりました。

評価・コメントお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ