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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第七章 冒険編 極寒の楽園
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氷雪の主

投稿が一日遅れて申し訳ありません。

なるべく早くに投稿が出来る様に、全力を尽くします。

 氷像軍団との戦いに勝利した真緒達が先へ進んでいると、合体して球体となった氷像達が再び襲い掛かって来た。それらから無我夢中で逃げ、発見した扉に飛び込むとそこには大量の氷付けにされた人間、そして全身が白で統一されている美しい雪女が立っていた。


 「そうか……こいつがここにいる人間を氷付けにしたのか!」


 「酷い……」


 「…………」


 雪女は無言のまま、真緒達をじっと見つめる。


 「教えて下さい、どうしてこの人達を氷付けにしたんですか!?」


 「…………」


 真緒の問いかけに、雪女は返答せず右手をそっと前に突き出した。すると、雪女の周りに雪が集まり真緒達に向かって押し寄せて来た。


 「話が通じる相手では無さそうだ!スキル“ロックオン”!!」


 雪女の体にターゲットマーカーが表示される。


 「スキル“急所感知”!」


 ターゲットマーカーは、左胸へと移動した。


 「さっきの氷像には効かなかったが、今度こそ…………食らえ!!」


 フォルスの矢が、雪女目掛けて放たれた。


 「…………」


 雪女が左手を挙げると、床から突如氷の壁が出現してフォルスの矢を防いだ。


 「何だと!?」


  「それなら、氷像達と同じ様に固めてやります!」


 リーマは、魔導書を開いた。


 「さぁ、覚悟しなさい!“ウォーターウェーブ”」


 開いた魔導書から、大量の水が波の様に溢れだし、雪女に目掛けて押し寄せる。


 「…………」


 それを見た雪女は、両手を横に広げる。すると周りの雪が集まり、“ウォーターウェーブ”と同じ様に大量の雪が波の様に押し寄せ、水の波と雪の波がぶつかり合った。水と雪では部が悪く、押し負けてしまった。


 「つ、強い…………」


 「マオぢゃん、準備は良いだがぁ!?」


 「勿論だよ!!」


 リーマの攻撃が防がれた瞬間、入れ替わる様に真緒とハナコが、雪女の目の前に飛び出す。


 「スキル“ロストブレイク”」


 「スキル“熊の一撃”」


 剣と拳、二つのスキルが雪女に向かって放たれた。


 「…………!!」


 見事命中し、氷付けになった人間達の方へと吹き飛ばされた。しかし、吹き飛ばされる途中で素早く手を振り、氷付けになった人間達の前に別の巨大な氷を出現させ、それにぶつかる形になった。


 「どういう事……?」


 その光景に真緒は違和感を覚えた。ぶつかる衝撃を抑えたいのであれば、氷では無く雪にする筈だ。だが、そうはしなかった……それはまるで氷付けになった人間の氷が、傷付かない様にしていた。


 「スキル“ロックオン”、スキル“急所感知”」


 再び雪女の左胸に、ターゲットマーカーが表示される。


 「今度のは一味も二味も違うぞ!!“三連弓”」


 フォルスの持っていた三連弓の効果が発動し、三本の矢が連続して雪女目掛けて放たれた。


 「…………」


 雪女は目の前に巨大な氷を出現させ、飛んで来る三連続の矢を弾いた。


 「クソッ、そう上手くは決まらないか…………」


 その時だった。弾かれた矢の一本が、氷付けになった人間へ飛んで行った。


 「…………!!」


 すると雪女は目を大きく見開き、なりふり構わず両手を動かし、氷付けになった人間の目の前に巨大な氷を出現させ、飛んで来る矢を防いだ。


 「もしかして彼女は……」


 またもその光景を目撃した真緒は、ある可能性に確信を得た。


 「こうなったら、俺達全員で一斉に攻撃を仕掛けるしか無い!」


 「ちょ、ちょっと待って!!」


 雪女に一斉攻撃を仕掛けようとするが、真緒が待つ様に声を掛ける。


 「どうした、マオ?」


 「また何がを閃いだだかぁ?」


 「あ、いや……そう言う訳じゃ無いんだけど……」


 こうした窮地に立たされた状況で、幾度もなく勝利に導いていた真緒がわざわざ一斉攻撃を止める訳は、何かを思いついたのであろうと仲間達は期待したのだが、その真緒から否定的な言葉が返って来た。


 「それじゃあいったい、どうしたんですか?」


 「…………もしかしたらあの雪女は、悪い人では無いかもしれません……」


 「「「「!!?」」」」


 真緒の信じがたい言葉に、戸惑いを見せる四人。


 「何を言っているんだマオ!お前には見えないのか、氷付けにされている人達の姿が!」


 「そうですよ、それにあの雪女は氷と雪を操ります。氷付けにしたのは、あの雪女なのは明白です!」


 「そうかもしれない…………でも、あの雪女は二度に渡って、氷付けになった人達が傷付かない様にしたんですよ!?」


 「「「「…………」」」」


 確かに、真緒の言っていることは正しい。一回目の時が偶然だったとしても、二回目の弾いた矢に関しては偶然という言葉では片付けられない。


 「……だとしても、じゃあ何故最初の時、俺達に向かって攻撃をしてきたんだ!?」


 「……もしも、あの攻撃が攻撃では無かったとしたら?」


 「何だと!!?」


 そう言うと真緒は、雪女の方へと歩き始めた。


 「おい、何をするつもりだ!?」


 「マオぢゃん!?」


 「マオさん!!」


 「私を信じて!」


 そして、真緒と雪女が向かい合った。


 「…………安心して下さい。もうこれ以上、あなたに危害を加えるつもりはありません」


 「…………」


 すると、雪女は最初の時と同じ様に右手をそっと前に突き出した。雪女の周りに雪が集まり真緒に向かって押し寄せて来た。


 「マオ!!」


 「落ち着いて下さい。マオさんを信じてみましょう~」


 「エジタスさん…………」


 フォルスは、押し寄せる雪から真緒を守ろうと動こうとしたが、エジタスに遮られた。


 「…………こ、これは」


 押し寄せる雪は、真緒の足下でその勢いを止めた。そしてみるみる内に雪の上に文字が刻まれて行った。


 『皆様これまでの非礼、心よりお詫び申し上げます』


 「やはり、あなたは私達と戦うつもりなど無かったのですね?」


 「まさか…………本当だったなんて……」


 フォルス達は驚きつつも、真緒と雪女の側へと歩み寄る。


 「だけど、どうしてそんな紛らわしい真似をしたんだ?普通に口で喋ればいいだろう?」


 『悲しい事に、私の吐息は全ての物を凍らさせてしまうのです……』


 そう刻むと雪女は天井に向かって、フゥーと息を吐いた。するとあっという間に天井はさらに凍り付き、あまりの寒さに天井の雪が固まり氷柱が出来た。


 「な、成る程……だからこうして文字で伝えるしか無かったんだな……」


 『はい……ですが、そのせいで皆様には余計な誤解を招いてしまいました。本当に申し訳ありませんでした』


 雪女は、真緒達に深々と頭を下げて謝罪した。


 「いえ、結果的に私達は無傷で済みましたので気にしないで下さい…………それよりも、こうして文字にしてまで会話をするという事は、私達に何か頼み事があるのでは無いですか?」


 『…………実は私達の町を救って欲しいのです』


 「……町?」


 真緒達は、雪女の救って欲しいという頼み事の中にあった“町”の単語に引っ掛かった。


 「あの、町というのはどういう意味なのでしょうか?」


 『…………ついて来て下さい』


 雪女は真緒達に背を向け、洞窟の更に奥へと歩いて行った。その後を追い掛ける真緒達は、奥の方から微かな光が差すのを確認した。


 『ここが私達の町、“アンダータウン”です』


 「そんな、こんな事って……!!」


 「常識の枠を越えてるぞ!」


 「オラ、夢でも見でいる様だぁ……」


 「おやおや、これは凄いですね~」


 「こんな地下洞窟に巨大な町があるだなんて……!!」


 真緒達は目の前の光景に驚愕した。様々な建造物が建ち並び、噴水を中心とし市場や娯楽街など王国に比肩を取らない広さを有していた。だがそれも、全て氷付けになっていなければの話だが……。


 「…………凄いの一言ですけど、どうしてこの町は氷付けになっているんですか?あなたが雪女である事と何か関係があるのでしょうか?」


 『…………全部、私が悪いのです』


 「えっ…………?」


 雪女の頬を涙が流れ落ちる。しかしその涙は、地面に落ちる前に凍り付いてしまった。


 『この様な氷付けの町になってしまった訳を話す為にも、私の過去について話さねばなりません…………全ての始まりは五十年前、私がこのアンダータウンを訪れた時でした』

次回、雪女の過去へと突入します。

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