悪天候
今回から第七章が始まります。
「寒ーい!!!」
真緒達は現在、雪が積もった大雪原を歩いていた。
「何処までこの雪道は続いているんですか!?」
「まだ、雪原に入ってから十分も経っていないぞ」
例の如くリーマが最後尾で、マントで体を包みながら寒さを訴えていた。
「どうして、こんな所を歩かないと行けないんですか!?」
「さっきも言っただろう。ここを通らないと“クラウドツリー”に辿り着く事は出来ないんだ」
「そうですけど…………」
「暑かったヘルマウンテンが、懐かしいね」
あまりの寒さに、一度聞いた質問をもう一度聞いてしまうリーマ。それに呆れながらも、フォルスはきちんと答える。そして、暑かったヘルマウンテンの時の事を思い出す真緒。
「でも確かに、リーマの言う通り凄く寒いね。私は鎧を着ているからまだ何とか堪えられるけど…………リーマは薄着だからね……」
「そうなんですよ!!こんな事なら防寒着位持ってくるんでした……」
真緒の体は鎧で覆われている為、ギリギリ冷気が肌には届いておらず、寒さを感じてはいなかった。しかし帽子とマント、あとは全部薄着であるリーマには地獄その物だ。
「でも……おかしいんだよな」
「何がですか?」
「俺がまだ里にいた頃、ここは草木が生い茂るのどかな場所だった筈なんだ……」
フォルスが辺りを見回すも、あるのは真っ白な雪ばかりである。
「俺がいなかった十五年の間に、何があったんだ?」
考えれば考える程、謎は深まって行くのであった。
「そう言えばフォルスさんは、平気なんですか?リーマに負けず劣らず薄着ですけど……」
「忘れたのか?俺は鳥人だ。羽毛が全身から生えているから、ちょっとやそっとの寒さではビクともしない」
「あ、そうでしたね……」
「…………」
今日程、人を妬ましく思った事は無いだろう……フォルスの事をじっと睨み付ける魔法使いがそこにはいた。
「それを言うならハナコ、お前の方は大丈夫なのか?」
「フォルスざん、オラは熊人だぁ。毛が沢山生えでいるがら、へっぢゃらだよ」
「え、でも……ハナちゃん、毛があるのは耳と手だけだよね。それに、お腹が出てるよ…………」
ハナコの場合、毛が生えているのは丸い耳部分と特徴的な熊の手だけである。さらに、ハナコの服装は半ズボンにおへそが丸出しのクロップドTシャツであった。
「このぐらい大じだ事無いだぁ。ぞれに寒さなんが、鍛えれば克服出来るだよぉ」
「寒さって克服出来る物でしたっけ…………?」
ハナコの常人離れした体に、驚かされる真緒達。
「とにかくだ、文句を言ってても始まらない。先に進むしか無いんだ!」
「わ、分かりましたよ…………」
フォルスの説得に渋々従うリーマは、震えながらも歩いて行く。
「…………きゃあ!!ゆ、雪が靴の中に入ってきました!つ、冷たいです…………」
突然雪が靴の中へと侵入し、思わず叫び声を上げてしまったリーマ。
「うーん、これではいつまで経っても先に進めないぞ……」
「ご、ごめんなさい……」
「…………あ、そうだ!確かリーマには火属性魔法が使えるんだから、歩く道を炎で溶かしたらどうかな?」
「!!、その手がありましたか!ありがとうございますマオさん。早速使ってみたいと思います!」
真緒の見事なアイデアに、明るい気持ちを取り戻したリーマは、急いで魔導書を開いた。
「行きますよ……“スネークフレイム”」
リーマの魔導書から、炎で形成された蛇が生み出され、これから歩く道に向かって放たれる。しかし、リーマの蛇は一瞬で氷付けにされてしまった。
「…………そんな!?」
「これは……どうなっているんだ?」
「魔法が凍るなんて、そんな事があるんですか?」
「夢でも見でいる様だよぉ……」
「不思議ですね~」
魔法の炎が凍るという、信じられない光景を目の当たりにしてしまった真緒達は、驚きの表情を隠せなかった。すると突然、雲行きが怪しくなって来た。
「今度は何だ!?」
フォルスの言葉と共に、強い風が吹き荒れ、吹雪と化してしまった。
「きゃあ!!」
「ごれは、いぐら毛があるオラでも寒ぐ感じるだぁ…………!」
さらに天候は悪化し、吹雪のせいで先が見えなくなってしまった。
「リーマ!だいじょ……うわぁあ!!?」
「そんな、リーマ!!」
「リーマぢゃん!」
真緒達が、先程から寒がっていたリーマに目を向けると、漫画でしか見た事が無い様な全身が氷付けの姿になっていた。
「カチンコチンですね~」
「言ってる場合ですか!」
「急いで何とかしないと俺達まで、氷付けになってしまうぞ!!」
「な、なぁ……あの洞穴に避難ずるのはどうがなぁ!?」
ハナコが示した場所には、微かに洞穴が見えていた。
「よし、ひとまずあそこに避難しよう!!」
「ハナちゃん、リーマを運ぶのを手伝ってくれる?」
「勿論だよ!」
真緒とハナコの二人は、氷付けになったリーマを洞穴まで運んだ。
***
「何とか凍死は、免れたみたいだな…………」
「……あ……ああ……」
真緒達は洞穴で吹雪から逃れ、焚き火を起こして氷付けになっていたリーマを溶かしていた。
「リーマ、大丈夫?」
「へ、へ、平気です。こ、このくらいどうってことありません…………ヘッ、クシュン!」
明らかに平気では無い様子のリーマに、何かしてあげられないかと考える真緒達。
「そうだ!俺とハナコがリーマの体に寄せ合えば、少しは暖かくなるんじゃないか?」
「良い考えだなぁ!」
「ご、ご、ご迷惑を掛けてしまってごめんなさい」
「気にするな、お前の体を暖めるのが最優先だ」
「ぞうだよぉ、困っだ時はお互い様だぁ」
そう言うと二人は、リーマと体を寄せ合い押しくらまんじゅうの形になった。
「あー、凄く暖かいです……」
「マオとエジタスさんも、体を寄せ合うと良い。少しでも寒さを凌ぐんだ」
「ええっ!!私と師匠の二人で!?」
真緒はエジタスの方を見るが、頬が赤く染まっているのに気が付き素早く顔を背けた。
「おや、私とは嫌ですか~?」
「い、いえ、そう言う訳では無いんですけど…………で、ではよろしくお願いします……」
エジタスに嫌なのかと問われ、恥ずかしながらもピッタリと体をくっ付ける。
「ほぉ~成る程、確かにこれは暖かく感じて、かなりの寒さ対策になりますね~」
「そ、そうですね……と、とても暖かいです……」
真緒の場合、体よりも顔の方が暖かくなるのを感じていた。
「しかし……いきなり悪天候に見舞われるなんて……どうなっているんだ?」
「私の魔法も、氷付けになってしまいました……」
「…………あれ?」
何かに気が付いたのか急に真緒が立ち上がり、奥の方へと歩き出した。
「マオさん、どうしたのですか~?」
「皆、ちょっと来て見てよ!!」
洞穴の奥の方から、皆を呼ぶ真緒の声が響き渡る。
「マオ、何かあったのか?」
「マオぢゃん?」
「マオさん、どうかしましたか?」
他の四人も真緒の声に釣られ、後を追い掛ける。
「皆、見てよ…………」
「こ、これは……」
そこには、洞穴には決してある筈の無い人工的に作り出された階段が、更に奥の方へと続く様に存在していた。
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