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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第六章 冒険編 出来損ないの小鳥
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真緒パーティー VS ドラゴン (前編)

今回は真緒パーティー VS ドラゴン 前編です。

 「グオオオオオ!!!」


 ドラゴンの雄叫びが全体に響き渡り、肌が痺れる様な感覚が伝わる。


 「マオぢゃん……ごれは流石に無理があると思うだぁ…………」


 「マオさん、逃げましょう!!」


 真緒達が逃げようとしたその時、ドラゴンの真下に丸い窪みの穴があり、そこに、他の石とは異なる赤黒く光る石が見えた。


 「あれって…………」


 「あれが“ヘルストーン”ですよ~」


 ヘルストーン、エジタスが言っていたヘルマウンテンの活動エネルギーの源と呼ばれる石。その石の上に覆い被さる様に、ドラゴンがいた。


 「恐らくですが、里の上昇気流が止まった原因はあれでしょう~」


 「そ、そうなんですか!?」


 「はい、ヘルストーンは言わば活動エネルギーの塊で、山一つ丸ごと動かす程です。相当な熱量を放出している事でしょう。しかし、そんな熱が上から蓋をされ、放出出来ないとしたら?」


 ハッ、と何かに気がついた真緒達はドラゴンの方に目を向けると、僅かな隙間からヘルストーンが放出している湯気が漏れ出ていた。


 「そうか!ドラゴンが覆い被さるせいで、放出される熱はその場に留まり、下の里まで届かなかった。だから、熱で発生する筈の上昇気流が止まってしまったんだ!」


 「じゃ、じゃあ、里の上昇気流を元に戻す為には…………」


 「このドラゴンを倒すしか無い…………」


 あまりに荷が重すぎる。ドラゴンは、会話の最中でも攻撃を仕掛ける素振りは見せず、真緒達をずっと睨んでいた。


 「マオぢゃん…………やっぱり無理だよぉ……」


 「ドラゴンは、一匹だけでも国家戦力だと聞きます。そんな相手を私達四人で倒すだなんて、無謀です!」


 「皆、諦めちゃ駄目だよ!!何か弱点がある筈…………スキル“鑑定”」


 真緒はドラゴンのステータスを調べる為に、久しぶりにスキルの鑑定を使った。だがしかし、そこに表示されたのは目を疑う数値だった。


 


 レッドヘルドラゴン Lv65

種族 ドラゴン

年齢 540

性別 雌

職業 ドラゴン


HP 15000/15000

MP 3000/3000


STR 800

DEX 600

VIT 950

AGI 250

INT 320

MND 750

LUK 360


スキル

ブレス 破壊の咆哮 逆鱗

 

魔法

無し


称号

生態系の頂点




 「こんな……こんなのって…………」


 絶望。どれだけ束になって掛かっても勝てないと悟ってしまう。足が震える。心臓の鼓動が早くなり痛みすら感じた。逃げたい…………今すぐここから逃げ出したい。真緒の足が出口へ歩き出そうとする。


 「…………っ!!」


 しかし、動かす事は出来なかった。理由は簡単、鳥人の人達が脳裏を過ったからだ。


 「…………皆、戦おう」


 「ええっ!?」


 「正気ですかマオさん!?」


 「逃げたって、誰もあなたを責めませんよ~」


 真緒の言葉に仲間達は驚愕し、逃げる様に説得する。


 「そうかもしれない……でも今逃げたら、次再び高い壁が立ち塞がった時、また逃げ出してしまう。それじゃあ、いつまで経っても先に進めないよ。皆、戦おう!鳥人の里の為にも今後の私達の為にも!!」


 「…………仕方ないだなぁ」


 「一度決めたマオさんは、誰にも止められませんからね」


 「死んでも知りませんよ~」


 説得しようとしていた三人が、逆に説得されてしまった。


 「私は空中から仕掛ける。皆は地上をお願い!!」


 「分がっだぁ!」


 「任せて下さい!!」


 「やれやれ……」


 真緒は虚空の力を使い空中に飛び上がり、ドラゴンの方へ接近する。そして、地上ではハナコとリーマが突撃していた。


 「グオオオオオ!」


 ドラゴンは、真緒達が近づいて来るのを確認すると、雄叫びを上げ長い尻尾を飛んで来る真緒目掛けて、叩き込んで来た。


 「おっと!」


 真緒はドラゴンの尻尾を、上手く回避した。


 「このドラゴン、動きは遅いみたい!冷静に避けて行けば大丈夫だ!!」


 次にドラゴンが狙ったのは、ハナコ達だった。巨大な牙で噛みつこうとする。


 「リーマぢゃん、避けるだぁ!!」


 「勿論です!!」


 ハナコとリーマは、それぞれ左右に跳んで噛みつきを回避した。


 「はぁぁあああ!!スキル“ロストブレイク”」


 「グオオオオ…………」


 ドラゴンがハナコ達に気を取られている隙に、空中にいた真緒が頭にスキルを叩き込んだ。ドラゴンは、悲痛な叫びを上げた。


 「やった!効いてるよ!」


 「グオオオオオ!!!」


 「危ない!!」


 真緒が喜んでいると、ドラゴンは再び尻尾を叩き込んだ。しかし、真緒はそれを冷静に対処する。


 「隙あり!スキル“熊の一撃”」


 「食らいなさい!“ウォーターキャノン”」


 「グ、グオオオ…………」


 すると今度は真緒に気を取られている隙に、地上にいたハナコとリーマが足にスキルと魔法を叩き込んだ。空中と地上のコンビネーションがドラゴンを苦しめる。ドラゴンは先程よりも悲痛の叫びを上げた。


 「いける……この調子で押し切ろう!!」


 「オラ達、実は強ぐなっでいだんだなぁ!!」


 「ドラゴンと言っても、大した事ありませんね!」


 真緒達が勝利を確信していたその時、ドラゴンが鼻から大きく息を吸い込んだ。


 「おや、遂に来ました……」


 この時エジタスは戦いには参加しておらず、離れた位置から真緒達を見ていた。


 「ドラゴンの真骨頂、“ブレス”」


 エジタスがそう言った途端、ドラゴンの口から高熱な火が、ハナコとリーマに噴射された。


 「ハナちゃん!!リーマ!!」


 突然のブレスに反応出来ず、火の海に包まれるハナコとリーマに、真緒が叫んだ。


 「そんな…………私のせいだ。私がちゃんと逃げるのに賛成してたら…………ハナちゃん、リーマ……ごめん……」


 「マオぢゃん!」


 「マオさん!!」


 「!!?」


 二人の死を悲しんでいると、後ろから声が聞こえる。真緒が振り返るとそこには、ハナコとリーマがエジタスと一緒に立っていた。


 「ハナちゃん!!リーマ!!無事だったんだね!」


 「エジタスさんが助けてくれました!」


 二人は無傷であった。それは、ブレスが吐かれる直前に、エジタスが二人に駆け寄り肩に触れ、転移を使って脱出したのであった。


 「師匠…………ありがとうございます!!」


 「危なかったですね~、もう少しで二つの特大ステーキが出来上がっていましたよ~」


 「オラはミディアムレアが良いげどなぁ」


 「あ、あはは…………」


 エジタスのジョークにハナコの返答で、苦笑いを浮かべるリーマ。


 「もう、ハナちゃんったら……」


 「マオぢゃん、危ない!!」


 「えっ!?し、しまった!!」


 真緒がその光景を呆れて見ていると、ハナコが真緒に大声を上げる。真緒目掛けて三度目の尻尾が叩き込まれた。ハナコの声で気がついた真緒だったが、反応が遅れ見事に命中した。


 「きゃあああ!!」


 「マオぢゃん!」


 「マオさん!」


 真緒は、壁まで吹き飛ばされめり込んだ。さらにドラゴンは間髪入れず、鼻から大きく息を吸い込んだ。


 「まだブレスを吐ぐづもりだぁ!!」


 「エジタスさん!転移でマオさんを助けられないんですか!?」


 「無理ですね、転移は連続して使用出来ないのを知っていますでしょ?」


 「そんな…………マオさん!!逃げてーー!!」

 

 「か、体が抜けない…………!!」


 真緒はめり込んだ体を抜こうと必死になって動くが、なかなか抜け出せずにいた。


 「マオぢゃん!!!」


 「いやぁぁあああ!!!」


 リーマの悲鳴と共にドラゴンの吸い込みが止まった。そして、勢いよく口から吐き出そうとした、その瞬間!!


 「スキル“ロックオン”からのスキル“急所感知”食らいな!!」


 「グ、グオオオ…………!!!」

 

 突如、ドラゴンの体にターゲットマーカーが出現し、唯一の逆鱗に移動する。そして目にも止まらぬ速度で、矢が打ち込まれた。ドラゴンは突然の痛みに混乱しながらあらぬ方向に、ブレスを吐き出した。


 「今のはいったい……」


 「どうしたマオ、少し見ない間に弱くなったか?」


 「そんな…………嘘でしょ……」


 真緒達の目線の先には、信じられない人物が立っていた。約一名を除き、誰もが帰りを待ち望んでいた存在。


 「集中力が散漫するなんて、お前らしく無いぞ」


 「フォ……フォ…………フォルスさん!!!」


 そこに立っていたのは、真緒達の欠けてはならない大切な仲間の一人、フォルスであった。

フォルスが帰って来ました!!

次回 真緒パーティー VS ドラゴン 後編 お楽しみに!

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