真緒パーティー VS ドラゴン (前編)
今回は真緒パーティー VS ドラゴン 前編です。
「グオオオオオ!!!」
ドラゴンの雄叫びが全体に響き渡り、肌が痺れる様な感覚が伝わる。
「マオぢゃん……ごれは流石に無理があると思うだぁ…………」
「マオさん、逃げましょう!!」
真緒達が逃げようとしたその時、ドラゴンの真下に丸い窪みの穴があり、そこに、他の石とは異なる赤黒く光る石が見えた。
「あれって…………」
「あれが“ヘルストーン”ですよ~」
ヘルストーン、エジタスが言っていたヘルマウンテンの活動エネルギーの源と呼ばれる石。その石の上に覆い被さる様に、ドラゴンがいた。
「恐らくですが、里の上昇気流が止まった原因はあれでしょう~」
「そ、そうなんですか!?」
「はい、ヘルストーンは言わば活動エネルギーの塊で、山一つ丸ごと動かす程です。相当な熱量を放出している事でしょう。しかし、そんな熱が上から蓋をされ、放出出来ないとしたら?」
ハッ、と何かに気がついた真緒達はドラゴンの方に目を向けると、僅かな隙間からヘルストーンが放出している湯気が漏れ出ていた。
「そうか!ドラゴンが覆い被さるせいで、放出される熱はその場に留まり、下の里まで届かなかった。だから、熱で発生する筈の上昇気流が止まってしまったんだ!」
「じゃ、じゃあ、里の上昇気流を元に戻す為には…………」
「このドラゴンを倒すしか無い…………」
あまりに荷が重すぎる。ドラゴンは、会話の最中でも攻撃を仕掛ける素振りは見せず、真緒達をずっと睨んでいた。
「マオぢゃん…………やっぱり無理だよぉ……」
「ドラゴンは、一匹だけでも国家戦力だと聞きます。そんな相手を私達四人で倒すだなんて、無謀です!」
「皆、諦めちゃ駄目だよ!!何か弱点がある筈…………スキル“鑑定”」
真緒はドラゴンのステータスを調べる為に、久しぶりにスキルの鑑定を使った。だがしかし、そこに表示されたのは目を疑う数値だった。
レッドヘルドラゴン Lv65
種族 ドラゴン
年齢 540
性別 雌
職業 ドラゴン
HP 15000/15000
MP 3000/3000
STR 800
DEX 600
VIT 950
AGI 250
INT 320
MND 750
LUK 360
スキル
ブレス 破壊の咆哮 逆鱗
魔法
無し
称号
生態系の頂点
「こんな……こんなのって…………」
絶望。どれだけ束になって掛かっても勝てないと悟ってしまう。足が震える。心臓の鼓動が早くなり痛みすら感じた。逃げたい…………今すぐここから逃げ出したい。真緒の足が出口へ歩き出そうとする。
「…………っ!!」
しかし、動かす事は出来なかった。理由は簡単、鳥人の人達が脳裏を過ったからだ。
「…………皆、戦おう」
「ええっ!?」
「正気ですかマオさん!?」
「逃げたって、誰もあなたを責めませんよ~」
真緒の言葉に仲間達は驚愕し、逃げる様に説得する。
「そうかもしれない……でも今逃げたら、次再び高い壁が立ち塞がった時、また逃げ出してしまう。それじゃあ、いつまで経っても先に進めないよ。皆、戦おう!鳥人の里の為にも今後の私達の為にも!!」
「…………仕方ないだなぁ」
「一度決めたマオさんは、誰にも止められませんからね」
「死んでも知りませんよ~」
説得しようとしていた三人が、逆に説得されてしまった。
「私は空中から仕掛ける。皆は地上をお願い!!」
「分がっだぁ!」
「任せて下さい!!」
「やれやれ……」
真緒は虚空の力を使い空中に飛び上がり、ドラゴンの方へ接近する。そして、地上ではハナコとリーマが突撃していた。
「グオオオオオ!」
ドラゴンは、真緒達が近づいて来るのを確認すると、雄叫びを上げ長い尻尾を飛んで来る真緒目掛けて、叩き込んで来た。
「おっと!」
真緒はドラゴンの尻尾を、上手く回避した。
「このドラゴン、動きは遅いみたい!冷静に避けて行けば大丈夫だ!!」
次にドラゴンが狙ったのは、ハナコ達だった。巨大な牙で噛みつこうとする。
「リーマぢゃん、避けるだぁ!!」
「勿論です!!」
ハナコとリーマは、それぞれ左右に跳んで噛みつきを回避した。
「はぁぁあああ!!スキル“ロストブレイク”」
「グオオオオ…………」
ドラゴンがハナコ達に気を取られている隙に、空中にいた真緒が頭にスキルを叩き込んだ。ドラゴンは、悲痛な叫びを上げた。
「やった!効いてるよ!」
「グオオオオオ!!!」
「危ない!!」
真緒が喜んでいると、ドラゴンは再び尻尾を叩き込んだ。しかし、真緒はそれを冷静に対処する。
「隙あり!スキル“熊の一撃”」
「食らいなさい!“ウォーターキャノン”」
「グ、グオオオ…………」
すると今度は真緒に気を取られている隙に、地上にいたハナコとリーマが足にスキルと魔法を叩き込んだ。空中と地上のコンビネーションがドラゴンを苦しめる。ドラゴンは先程よりも悲痛の叫びを上げた。
「いける……この調子で押し切ろう!!」
「オラ達、実は強ぐなっでいだんだなぁ!!」
「ドラゴンと言っても、大した事ありませんね!」
真緒達が勝利を確信していたその時、ドラゴンが鼻から大きく息を吸い込んだ。
「おや、遂に来ました……」
この時エジタスは戦いには参加しておらず、離れた位置から真緒達を見ていた。
「ドラゴンの真骨頂、“ブレス”」
エジタスがそう言った途端、ドラゴンの口から高熱な火が、ハナコとリーマに噴射された。
「ハナちゃん!!リーマ!!」
突然のブレスに反応出来ず、火の海に包まれるハナコとリーマに、真緒が叫んだ。
「そんな…………私のせいだ。私がちゃんと逃げるのに賛成してたら…………ハナちゃん、リーマ……ごめん……」
「マオぢゃん!」
「マオさん!!」
「!!?」
二人の死を悲しんでいると、後ろから声が聞こえる。真緒が振り返るとそこには、ハナコとリーマがエジタスと一緒に立っていた。
「ハナちゃん!!リーマ!!無事だったんだね!」
「エジタスさんが助けてくれました!」
二人は無傷であった。それは、ブレスが吐かれる直前に、エジタスが二人に駆け寄り肩に触れ、転移を使って脱出したのであった。
「師匠…………ありがとうございます!!」
「危なかったですね~、もう少しで二つの特大ステーキが出来上がっていましたよ~」
「オラはミディアムレアが良いげどなぁ」
「あ、あはは…………」
エジタスのジョークにハナコの返答で、苦笑いを浮かべるリーマ。
「もう、ハナちゃんったら……」
「マオぢゃん、危ない!!」
「えっ!?し、しまった!!」
真緒がその光景を呆れて見ていると、ハナコが真緒に大声を上げる。真緒目掛けて三度目の尻尾が叩き込まれた。ハナコの声で気がついた真緒だったが、反応が遅れ見事に命中した。
「きゃあああ!!」
「マオぢゃん!」
「マオさん!」
真緒は、壁まで吹き飛ばされめり込んだ。さらにドラゴンは間髪入れず、鼻から大きく息を吸い込んだ。
「まだブレスを吐ぐづもりだぁ!!」
「エジタスさん!転移でマオさんを助けられないんですか!?」
「無理ですね、転移は連続して使用出来ないのを知っていますでしょ?」
「そんな…………マオさん!!逃げてーー!!」
「か、体が抜けない…………!!」
真緒はめり込んだ体を抜こうと必死になって動くが、なかなか抜け出せずにいた。
「マオぢゃん!!!」
「いやぁぁあああ!!!」
リーマの悲鳴と共にドラゴンの吸い込みが止まった。そして、勢いよく口から吐き出そうとした、その瞬間!!
「スキル“ロックオン”からのスキル“急所感知”食らいな!!」
「グ、グオオオ…………!!!」
突如、ドラゴンの体にターゲットマーカーが出現し、唯一の逆鱗に移動する。そして目にも止まらぬ速度で、矢が打ち込まれた。ドラゴンは突然の痛みに混乱しながらあらぬ方向に、ブレスを吐き出した。
「今のはいったい……」
「どうしたマオ、少し見ない間に弱くなったか?」
「そんな…………嘘でしょ……」
真緒達の目線の先には、信じられない人物が立っていた。約一名を除き、誰もが帰りを待ち望んでいた存在。
「集中力が散漫するなんて、お前らしく無いぞ」
「フォ……フォ…………フォルスさん!!!」
そこに立っていたのは、真緒達の欠けてはならない大切な仲間の一人、フォルスであった。
フォルスが帰って来ました!!
次回 真緒パーティー VS ドラゴン 後編 お楽しみに!
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