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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第六章 冒険編 出来損ないの小鳥
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温泉 女性編

温泉の回を二本立てにしてみました。

今回は女性編です。

 「そうだったんだ…………そんな事が……」


 リーマ達は、宿屋で目が覚めた真緒に、気絶した後の出来事を細かく話した。


 「皆、助けてくれてありがとう。フォルスさんの事も……」


 「いえ……私は只、マオさんだったらそうするかなって、思っただけですよ」


 「そっか…………」


 「はい…………」


 気まずい空気が流れる。どうしても、フォルスの事を考え込んでしまう。


 「な、なぁ皆!折角温泉のある宿屋に来だんだがら、入っでみねぇが?」


 「そうですね!気分転換に良いかもしれません。行きましょうマオさん!」


 ハナコの提案に便乗するリーマは、真緒に共感を求めた。


 「そうだね……いつまでも、うじうじしたって始まらない!行ってみようか、温泉!」


 「「はい!!」」

 

 そう言うと真緒達は、部屋を後にして温泉へと向かった。




***




 「はぁ~、気持ちいいねぇ……」


 「ほんどだなぁ……」


 「この温泉の効能は疲労、肩こり、寝不足にまで効果があるらしいですよ」


 真緒達は男女に分かれ、温泉に浸かっていた。ここの温泉は外に繋がっている為、露天風呂の形式になっている。また、岩で囲んで作った岩風呂で、周りの景色にも溶込んでいた。


 「へぇー、詳しいね」


 「いやまぁ、あそこの看板を見ただけなんですけどね」


 リーマが指差す方向に、看板が岩に突き刺さっており、この温泉についての詳細が記されていた。


 「何だ、そうだったのか」


 「ふふふ、少し物知りになった気分でした」


 他愛ない会話。温泉のお陰で先程まで、暗い雰囲気だった真緒達は、変わり始めていた。そして、ここで真緒はどうしても気になる事があった。それは…………。


 「いつも思っていたんだけど……やっぱり、ハナちゃんの胸……大きいねぇー」


 「あ、あんまり見ないでぐれよ……オラだっで恥ずがじいだぁ」


 真緒はハナコの、溢れんばかりの大きな胸を凝視していた。ハナコの胸は、大きすぎて湯船に浮いてしまう程であった。


 「えぇー、いいでしょ?別に減るもんでも無いんだから!」


 「それでも駄目だぁ!リーマぢゃんがらも何どが言っでぐれよぉ…………リーマぢゃん?」


 ハナコがリーマに助けを求めるが、リーマは暗い表情をしながら下を向き、自分の胸をペタペタと触っていた。


 「いいなぁ……羨ましいなぁ……」


 まるで呪詛(じゅそ)の様に呟くリーマ。顔こそずっと下を向いていたが、誰に向けられた言葉かは明白だった。


 「ぞ、ぞんな良い物じゃないよ!重ぐで肩は凝るじ、ごんな風に浮いでじまっで邪魔でじょうがないだよぉ!」


 「ハナコさんには、小さい胸の人の気持ちなんか、分からないんですよ!私だって大きい胸で肩凝ってみたいです!湯船に浸かったら、浮いて邪魔になって欲しいです!でも……でも……」


 「リーマ!もういいよ!それ以上自分を傷付けるのは止めて!」


 真緒は、どんどん惨めになっていくリーマを見るのが耐えきれず、慰めるように抱き締める。


 「リーマの気持ち、良く分かるよ……」


 ポヨン、とリーマの顔に柔らかい感触が伝わってきた。


 「言っときますけど、マオさんも同罪ですからね……」


 「えっ!?」


 真緒は思わず、抱き締めていた手を離してしまった。


 「マオさん、まるで自分も胸が小さいみたいに言ってますけど……そこそこありますからね?」


 「え、ええ!そんな事無いよ!肩だって凝らないし、湯船に浸かっても浮かないよ!」


 「それは!マオさんが程よい胸の大きさの人だからですよ!!」


 真緒の胸は、ハナコとリーマの丁度中間に位置する位の大きさである。


 「抱き締められた時、その感触が確かにありました!」


 「だ、だからそんな事無いよ!私は、リーマと同じ位の大きさだよ!」


 「それじゃあ、確かめてください!」


 そう言うとリーマは、自分の胸を真緒に無理矢理押し付ける。


 「痛い痛い!!」


 「ほらやっぱり!痛いのは、私に胸が無いからなんですよ!」


 「違うよ!今のはリーマが無理矢理押し付けるから……」


 「もう聞きません!胸がある人の言う事なんて!!」


 「リーマ!」


 そっぽを向いて会話を遮断するリーマに、声を掛ける真緒。すると……。


 「ちょっとさー!!マジうるさいんですけどー!!!」


 この一連の出来事をきっかけに、怒鳴り声が響く。


 「あ、ごめんなさい!」


 まさか他にも人がいた。湯気のせいでよく見えなかったのが原因である。


 「ほんとさー!!最低限のマナーを守ってくれない!?」


 「本当にごめんなさい…………あ!」


 うるさくしてしまった事をきちんと謝る為近づくと、真緒は思わず声をあげてしまった。


 「あ、真緒!!」


 「真緒だって!?」


 そこにいたのは、愛子、舞子、そしてシーリャの三人だった。


 「あら!マオさん、お久しぶりですね」


 「……あなたは確か……」


 その中で、シーリャが真緒に話し掛けてきた。


 「カルド王国第一王女。シーリャ・アストラス・カルドです。マオさん……とても心配していたんですよ」


 「えっ?」


 「マオさんが城から出ていってしまったと聞いて、無事かどうかずっと心配していたんですよ」


 「…………そうですか」


 見え見えの嘘。王女としてのイメージを下げないように、心配していた姿を演じている。


 「でも、無事で何よりでした」


 「…………そうですか」


 シーリャとの会話は無意味だと判断して、早々に終わらせる。そして、問題の愛子に顔を向けた。


 「ひ、久しぶりだね……」


 「……本当はあんたの事を今すぐにでも、殺してやりたいけど……生憎、武器は脱衣場の方にあるからね。今回は見逃してやるよ、寛大な私に感謝するんだね!」


 再会をして最初の言葉が殺してやりたい…………相当な怒りが愛子から、見て取れる。


 「にしても……あんた、本当に変わったねぇ、まともに会話を成立させられず、他人に迷惑を掛けてたあんたが、今ではうるさくして他人に迷惑を掛けるんだから!」


 「マオさんは、悪くありません!悪いのは、騒いでしまった私なんです!」


 小バカにする愛子にリーマは、真緒を庇うように前に出た。


 「真緒……あんたまだこんな連中とつるんでいたの?」


 「…………何が言いたいの?」


 真緒の言葉に重みが増していく。


 「信じられないよねー!こんな、一癖も二癖もありそうな連中と一緒にいるだなんて、特に亜人と一緒だなんて……私だったら堪えられないよ!」


 愛子はハナコを見ながら、(けな)すような言葉を発した。


 「ハナちゃんをバカにするな!」


 真緒はその場で立ち上がり、愛子の言葉に怒りを露にする。


 「ハナちゃんはいつも明るくて、落ち込んでいる私を励ましてくれる。その明るさに私は何度も助けられた!私は、ハナちゃんを仲間として誇りに思っている!!」


 「マオぢゃん…………」


 真緒のハナコに対する想いが、温泉全体に深く伝わってきた。


 「…………あ~あ~、折角温泉に入ってるのに何か冷めてきちゃった。舞子、シーリャ、私先に上がるね」


 「えっ!?ちょ、ちょっとまってよ愛子!」


 愛子が温泉から上がるのを見ると、舞子も一緒に上がって行った。


 「それでは皆さん、ごきげんよう」


 それに続くようにシーリャも上がって行った。


 「…………」


 「…………」


 「…………」


 温泉には、真緒達だけになった。気まずい空気が流れ、さっきまでの楽しい雰囲気は何処にも無かった。


 「上がろっか……」


 「うん…………」


 「はい…………」


 三人は、気まずい空気のまま温泉から上がるのであった。




***




 「はぁー、何かどっと疲れちゃったね」


 真緒達は、温泉から上がると自分達の部屋へと戻った。


 「ごめん、オラが温泉に入ろうなんで余計な事言っだばっがりに……」


 「ハナちゃんが悪い訳じゃないよ!」


 「そうですよ!ハナコさんは、元気付けようとしただけなんですから、何も悪くありません!」


 「マオぢゃん……リーマぢゃん……ありがどう」


 二人の言葉に、ハナコの罪悪感が消える。その時、真緒がふと思い出す。


 「そう言えば、師匠は?」


 部屋を見回すも、エジタスの姿は何処にも無かった。


 「まだ、温泉に入っでいるんでねぇが?」


 「あ、そっか……」


 「…………それですよ!!」


 「ど、どうしたのリーマ?」


 突然大きな声を上げるリーマに、マオとハナコは驚いてしまった。


 「二人供、今がチャンスだと思いません?」


 「何が?」


 「エジタスさんの素顔を覗くチャンスですよ!!」


 「ええーー!!」


 エジタスの素顔を覗くというリーマの言葉に、さらに驚いてしまう。


 「何故なら、エジタスさんが今温泉に入っているという事は、あの肌を見せない服や仮面は外している筈です!」


 「で、でもそれは師匠のプライバシーに関わる事だし……」


 「バレなければ良いんですよ」


 「オラは賛成だぁ!」


 「ハナちゃん!?」


 ここでまさか、ハナコが乗り気になってしまった。


 「さぁ、後はマオさんだけですよ」


 「でも……私は……」


 どうしても悩んでしまう。今まで世話になった恩を仇で返すみたいで、気が引けてしまう。


 「マオさん……エジタスさんの素顔を……気になりませんか?」


 「…………気になる」


 「じゃあ、やる事は一つですね……」


 「…………うん」


 ついに、罪悪感よりも好奇心の方が勝ってしまった。真緒は静かに頷いた。


 「それでは行きましょうか、男湯を覗きに!!」


 こうして、女子三人の覗き作戦は開始したのである。

次回は 温泉 男性編です。


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