温泉 女性編
温泉の回を二本立てにしてみました。
今回は女性編です。
「そうだったんだ…………そんな事が……」
リーマ達は、宿屋で目が覚めた真緒に、気絶した後の出来事を細かく話した。
「皆、助けてくれてありがとう。フォルスさんの事も……」
「いえ……私は只、マオさんだったらそうするかなって、思っただけですよ」
「そっか…………」
「はい…………」
気まずい空気が流れる。どうしても、フォルスの事を考え込んでしまう。
「な、なぁ皆!折角温泉のある宿屋に来だんだがら、入っでみねぇが?」
「そうですね!気分転換に良いかもしれません。行きましょうマオさん!」
ハナコの提案に便乗するリーマは、真緒に共感を求めた。
「そうだね……いつまでも、うじうじしたって始まらない!行ってみようか、温泉!」
「「はい!!」」
そう言うと真緒達は、部屋を後にして温泉へと向かった。
***
「はぁ~、気持ちいいねぇ……」
「ほんどだなぁ……」
「この温泉の効能は疲労、肩こり、寝不足にまで効果があるらしいですよ」
真緒達は男女に分かれ、温泉に浸かっていた。ここの温泉は外に繋がっている為、露天風呂の形式になっている。また、岩で囲んで作った岩風呂で、周りの景色にも溶込んでいた。
「へぇー、詳しいね」
「いやまぁ、あそこの看板を見ただけなんですけどね」
リーマが指差す方向に、看板が岩に突き刺さっており、この温泉についての詳細が記されていた。
「何だ、そうだったのか」
「ふふふ、少し物知りになった気分でした」
他愛ない会話。温泉のお陰で先程まで、暗い雰囲気だった真緒達は、変わり始めていた。そして、ここで真緒はどうしても気になる事があった。それは…………。
「いつも思っていたんだけど……やっぱり、ハナちゃんの胸……大きいねぇー」
「あ、あんまり見ないでぐれよ……オラだっで恥ずがじいだぁ」
真緒はハナコの、溢れんばかりの大きな胸を凝視していた。ハナコの胸は、大きすぎて湯船に浮いてしまう程であった。
「えぇー、いいでしょ?別に減るもんでも無いんだから!」
「それでも駄目だぁ!リーマぢゃんがらも何どが言っでぐれよぉ…………リーマぢゃん?」
ハナコがリーマに助けを求めるが、リーマは暗い表情をしながら下を向き、自分の胸をペタペタと触っていた。
「いいなぁ……羨ましいなぁ……」
まるで呪詛の様に呟くリーマ。顔こそずっと下を向いていたが、誰に向けられた言葉かは明白だった。
「ぞ、ぞんな良い物じゃないよ!重ぐで肩は凝るじ、ごんな風に浮いでじまっで邪魔でじょうがないだよぉ!」
「ハナコさんには、小さい胸の人の気持ちなんか、分からないんですよ!私だって大きい胸で肩凝ってみたいです!湯船に浸かったら、浮いて邪魔になって欲しいです!でも……でも……」
「リーマ!もういいよ!それ以上自分を傷付けるのは止めて!」
真緒は、どんどん惨めになっていくリーマを見るのが耐えきれず、慰めるように抱き締める。
「リーマの気持ち、良く分かるよ……」
ポヨン、とリーマの顔に柔らかい感触が伝わってきた。
「言っときますけど、マオさんも同罪ですからね……」
「えっ!?」
真緒は思わず、抱き締めていた手を離してしまった。
「マオさん、まるで自分も胸が小さいみたいに言ってますけど……そこそこありますからね?」
「え、ええ!そんな事無いよ!肩だって凝らないし、湯船に浸かっても浮かないよ!」
「それは!マオさんが程よい胸の大きさの人だからですよ!!」
真緒の胸は、ハナコとリーマの丁度中間に位置する位の大きさである。
「抱き締められた時、その感触が確かにありました!」
「だ、だからそんな事無いよ!私は、リーマと同じ位の大きさだよ!」
「それじゃあ、確かめてください!」
そう言うとリーマは、自分の胸を真緒に無理矢理押し付ける。
「痛い痛い!!」
「ほらやっぱり!痛いのは、私に胸が無いからなんですよ!」
「違うよ!今のはリーマが無理矢理押し付けるから……」
「もう聞きません!胸がある人の言う事なんて!!」
「リーマ!」
そっぽを向いて会話を遮断するリーマに、声を掛ける真緒。すると……。
「ちょっとさー!!マジうるさいんですけどー!!!」
この一連の出来事をきっかけに、怒鳴り声が響く。
「あ、ごめんなさい!」
まさか他にも人がいた。湯気のせいでよく見えなかったのが原因である。
「ほんとさー!!最低限のマナーを守ってくれない!?」
「本当にごめんなさい…………あ!」
うるさくしてしまった事をきちんと謝る為近づくと、真緒は思わず声をあげてしまった。
「あ、真緒!!」
「真緒だって!?」
そこにいたのは、愛子、舞子、そしてシーリャの三人だった。
「あら!マオさん、お久しぶりですね」
「……あなたは確か……」
その中で、シーリャが真緒に話し掛けてきた。
「カルド王国第一王女。シーリャ・アストラス・カルドです。マオさん……とても心配していたんですよ」
「えっ?」
「マオさんが城から出ていってしまったと聞いて、無事かどうかずっと心配していたんですよ」
「…………そうですか」
見え見えの嘘。王女としてのイメージを下げないように、心配していた姿を演じている。
「でも、無事で何よりでした」
「…………そうですか」
シーリャとの会話は無意味だと判断して、早々に終わらせる。そして、問題の愛子に顔を向けた。
「ひ、久しぶりだね……」
「……本当はあんたの事を今すぐにでも、殺してやりたいけど……生憎、武器は脱衣場の方にあるからね。今回は見逃してやるよ、寛大な私に感謝するんだね!」
再会をして最初の言葉が殺してやりたい…………相当な怒りが愛子から、見て取れる。
「にしても……あんた、本当に変わったねぇ、まともに会話を成立させられず、他人に迷惑を掛けてたあんたが、今ではうるさくして他人に迷惑を掛けるんだから!」
「マオさんは、悪くありません!悪いのは、騒いでしまった私なんです!」
小バカにする愛子にリーマは、真緒を庇うように前に出た。
「真緒……あんたまだこんな連中とつるんでいたの?」
「…………何が言いたいの?」
真緒の言葉に重みが増していく。
「信じられないよねー!こんな、一癖も二癖もありそうな連中と一緒にいるだなんて、特に亜人と一緒だなんて……私だったら堪えられないよ!」
愛子はハナコを見ながら、貶すような言葉を発した。
「ハナちゃんをバカにするな!」
真緒はその場で立ち上がり、愛子の言葉に怒りを露にする。
「ハナちゃんはいつも明るくて、落ち込んでいる私を励ましてくれる。その明るさに私は何度も助けられた!私は、ハナちゃんを仲間として誇りに思っている!!」
「マオぢゃん…………」
真緒のハナコに対する想いが、温泉全体に深く伝わってきた。
「…………あ~あ~、折角温泉に入ってるのに何か冷めてきちゃった。舞子、シーリャ、私先に上がるね」
「えっ!?ちょ、ちょっとまってよ愛子!」
愛子が温泉から上がるのを見ると、舞子も一緒に上がって行った。
「それでは皆さん、ごきげんよう」
それに続くようにシーリャも上がって行った。
「…………」
「…………」
「…………」
温泉には、真緒達だけになった。気まずい空気が流れ、さっきまでの楽しい雰囲気は何処にも無かった。
「上がろっか……」
「うん…………」
「はい…………」
三人は、気まずい空気のまま温泉から上がるのであった。
***
「はぁー、何かどっと疲れちゃったね」
真緒達は、温泉から上がると自分達の部屋へと戻った。
「ごめん、オラが温泉に入ろうなんで余計な事言っだばっがりに……」
「ハナちゃんが悪い訳じゃないよ!」
「そうですよ!ハナコさんは、元気付けようとしただけなんですから、何も悪くありません!」
「マオぢゃん……リーマぢゃん……ありがどう」
二人の言葉に、ハナコの罪悪感が消える。その時、真緒がふと思い出す。
「そう言えば、師匠は?」
部屋を見回すも、エジタスの姿は何処にも無かった。
「まだ、温泉に入っでいるんでねぇが?」
「あ、そっか……」
「…………それですよ!!」
「ど、どうしたのリーマ?」
突然大きな声を上げるリーマに、マオとハナコは驚いてしまった。
「二人供、今がチャンスだと思いません?」
「何が?」
「エジタスさんの素顔を覗くチャンスですよ!!」
「ええーー!!」
エジタスの素顔を覗くというリーマの言葉に、さらに驚いてしまう。
「何故なら、エジタスさんが今温泉に入っているという事は、あの肌を見せない服や仮面は外している筈です!」
「で、でもそれは師匠のプライバシーに関わる事だし……」
「バレなければ良いんですよ」
「オラは賛成だぁ!」
「ハナちゃん!?」
ここでまさか、ハナコが乗り気になってしまった。
「さぁ、後はマオさんだけですよ」
「でも……私は……」
どうしても悩んでしまう。今まで世話になった恩を仇で返すみたいで、気が引けてしまう。
「マオさん……エジタスさんの素顔を……気になりませんか?」
「…………気になる」
「じゃあ、やる事は一つですね……」
「…………うん」
ついに、罪悪感よりも好奇心の方が勝ってしまった。真緒は静かに頷いた。
「それでは行きましょうか、男湯を覗きに!!」
こうして、女子三人の覗き作戦は開始したのである。
次回は 温泉 男性編です。
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