表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第六章 冒険編 出来損ないの小鳥
65/300

族長

今回は族長の回です。

 「ほぅ……お主達が旅の者か……」


 族長の家へと案内されたリーマ達の目の前には、ペング程ではないが中々の巨体の鳥人が椅子に座って、リーマ達を出迎えた。


 「はい、リーマと申します」


 「オラはハナコっで言いまず」


 「ど~も初めまして“道楽の道化師”エジタスと申しま~す」


 族長は三人の名前を聞き終わると、少し微笑みながら口を開いた。


 「ほぅ、では今宿屋で休んでいるあの子が、“マオ”というお主達のリーダーなのだな?」


 「「「!!」」」


 あり得無い。リーマ達は、耳を疑った。この里に来て確かに自己紹介はしたが、真緒の名前は一切伝えていなかった。それなのに、族長は真緒の名前だけでなく、パーティーのリーダーである事も言い当てたのだ。この瞬間、リーマ達の警戒レベルが上がった。


 「ほほ、そう身構えるな。名前を知っていたのは、ある人からお主達の事を聞いていたからだ」


 「ある人…………?」


 「覚えておるかな?水の都で人魚の長を勤めている……」


 「もしかして、人魚の女王様の事ですか!?」


 人魚の長と言われて頭に思い浮かんだのは、水の都でお世話になったあの、女王様であった。


 「その通り、彼女とはこの“風の王冠”の繋がりで、古くからの友人でな……彼女の持つ“海の目”を通して、お主達の話を事前に聞いていたのだ」


 族長は自身の羽毛を掻き分けながら、“風の王冠”を取り出した。風の王冠は、王冠の形を保ちつつその模様は絶え間無く、風の様にそよ吹いていた。


 「それが風の王冠ですか?」


 「ああ、人魚の長が持っている水の王冠もそうだが……この風の王冠は、風を統べる力を持ち、大気を操るという噂だ」


 スケールが違う。水の王冠の時もそうだったが、王冠の持つ力はこの世界を、支配出来るのではないかと思わせる。


 「それは素晴らしい~!……あの~、宜しければ触らせて頂けませんか?私、古代の代物に目がないんですよ~」


 風の王冠に興味が湧いたエジタスは、手に取って見てみたいと懇願する。


 「ああ、別に構わんよ」


 そう言うと族長は、風の王冠をエジタスに手渡した。


 「あら~、随分とあっさり渡しますね~。私がこの風の王冠を使って悪用するかもしれないのに……」


 「ほほ、その心配は無いさ。何故ならワシも一度使おうと、試みたことがある。じゃが、結果は言わずもがな……反応すら示さなかった。それに、人魚の長がお主達を認めているんだ、そんな者達が悪用などする筈が無い」


 「成る程~、それは何とも寛大な心をお持ちですね~……もっと、疑うという事を多用するのをオススメしますよ」


 そう言うと、風の王冠を族長へと返した。しかしエジタスの言葉は、とても不気味に聞こえた。


 「ほほ、それを言われるとぐうの音も出ない」


          ぐぅ~


 族長が言った途端、部屋の中で大きなお腹の音が鳴り響いた。


 「あ、ぐうの音は出なかったけど、ハナコさんのぐぅの音は出ましたね」


 「もぅー、リーマぢゃん!恥ずがじいがら止めでおぐれよー」


 リーマの指摘に、顔を真っ赤にするハナコ。


 「ほほ、お腹が空いたのじゃな。さぁさぁ、ワシの事はもういいから早く宿屋に行って、食事を済ませると良い。お主達も出来るだけ長く、マオの側にいたいだろ?」


 「そうですね。では、お言葉に甘えて……皆さん、行きましょう」


 「宿屋まで案内してあげるよ」


 リーマ達はククの案内の下、族長の家を後にした。


 「………………あ、しまった!あの子達の前に、“四人”の人間が宿屋に向かった事を伝え忘れてしまった!……まぁ、いいか。どの道、宿屋で会う事になるだろう」




***


 


 「族長は……昔はあんなに、おおらかな人ではなかったんだ」


 「えっ……?」


 宿屋に向かう途中、ククが突然話始めた


 「掟や誇りに厳しい人だった。特に誇りに関しては、人一倍厳しかった……それこそ、誇りを傷付ける者には仲間であろうと、重い処罰を下す程……」


 「そんな風には見えませんでしたけど…………」


 だが確かに、リーマは不思議に思っていた。誇り高い鳥人が、余所者を……ましてや種族の違う者達を里に招き入れるなど、通常では考えられなかった。


 「しかしある時、この里に何らかの事件が起こった。あたしは丁度その時、ヘルマウンテンの偵察に行っていたから分からないが、それを境に族長はあのような性格になったんだ」


 「いったい……何があったのでしょうか?」


 「さぁな、でも聞いた話によると……族長が部屋で一人、『ワシは……族長失格だ』と言っていたのを聞いた奴がいたらしい。本当かどうかは知らないがな」


 「そうなんですか…………」


 モヤモヤする。関係無い筈なのに、何か引っ掛かる様な感じがして、気持ち悪くなってきた。


 「おっと、無駄話が過ぎちまったね。着いたよ、ここがこの里の目玉……温泉に入れる宿屋さ」


 宿屋は至って普通の外観であった。しかし、その隣には高い塀が三つ均等に建てられていた。


 「高い塀ですね……」


 「そりゃあそうさ、温泉は男女に分かれて入るからね。覗きが出来ないように、最善を尽くした結果がこれなのさ。さぁ、入ろう」


 リーマ達は、高い塀を見つめながら宿屋へと入っていった。


 「いらっしゃいませー。あら、ククちゃんじゃない!珍しいわね……ククちゃんが宿屋に来るなんて?」


 宿屋に入ると、あの巨体のペングとほぼ同等の、大きな鳥人が出迎えた。


 「おばさん、今日はあたしが案内役なの……ビントの奴が押し付けて来たんだ」


 「あらあら、またビント君と揉めたの?夫婦喧嘩は犬も食わないとは、良く言った物ねぇ……」


 「お、おばさん!?あ、あたしとビントはそんなんじゃないから!!」


 「あら、照れなくたって良いのよ!里の皆も思ってるわ、あの二人はお似合いの夫婦だなって!」


 おばさんの予想だにしない言葉に、ククの薄い青色の羽が薄いピンクに染まっていく。


 「あの~……」


 「あ、ごめんなさいねぇ~。ついつい話し込んじゃうのよね……。あなた達が宿屋に泊まりに来た人達かい?」


 「はい、そうです」


 「この人は、あのペングのお母さんなんだ」


 「えっ!そうだったんですか!?」


 「似てないだろう?ほとんど旦那に似ているから、本当に息子かどうか疑っちゃう時があるんだよねぇ……」


 「いや……えっと……」


 確実にあなたの息子です。寧ろ、あなたの息子以外あり得ません。そう……言ってやりたかったが、言うのは無粋であると判断した。


 「それじゃあ、おばさん。後はよろしくお願いします」


 「はいよ、任せておきな。あんたはビントくんの所に行ってやりな」


 「はぁ!?何であいつの名前が出てくるんだよ!!とにかく、頼んだからね!」


 そう言うと、ククは薄いピンクの羽のまま、宿屋を出ていった。


 「本当にお似合いの夫婦だねぇ……さて、部屋まで案内するよ。そこにあんた達の仲間もいるよ。ついさっき目を覚ました所だよ」


 「本当ですか!!?」


 宿屋のおばさんの言葉にリーマ達は、喜びに満ち溢れる。


 「ええ、ついておいで」


 ドスンドスンと、足音を鳴らしながら歩くおばさんの後を付いて行く。


 「ここだよ」


 すると、一つの部屋の前まで辿り着いた。リーマ達はゆっくりとその扉を開ける……。


 「あ、皆!ごめんね迷惑掛けちゃって……」


 「マオさん!!!」


 「マオぢゃん!!!」


 そこには、目を覚まし元気な真緒の姿があった。その姿を見たリーマとハナコは、真緒に抱き付いた。


 「ちょっと、二人供苦しいよ……」


 「どれだけ心配したと思っているんですか!!でも……目が覚めて本当に良かったです!」


 「皆……ありがとう」


 真緒は、抱き付く二人を強く抱き返す。


 「師匠……」


 扉の前に立っていたエジタスに、顔を向ける真緒。


 「マオさん、おはようごさいま~す!」


 「はい、おはようごさいます!!」


 そして真緒は元気良く朝の挨拶を言うのであった。

真緒が目を覚ましました。本当に良かったです!

次回は温泉に入ります。

評価・コメントお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ