真緒 VS フォルス
今回のお話は、かなり衝撃な展開になります。
真緒達がジェド達と別れてから、三日目の朝を迎えた。
「さて、今日も張り切ってヘルマウンテンに向かいましょう!」
「「「おおーー!!」」」
「…………」
真緒達が元気よく歩き出す中、フォルスだけは何故か浮かない顔をしていた。
「ジェドさんの言う通りなら、遅くとも明日にはヘルマウンテンに辿り着くね」
「オラ、なんだがドギドギじで来だだぁ……」
「世界屈指の危険を誇るヘルマウンテン……怖いですけど、見るのが楽しみですね」
「…………」
女性三人が楽しく会話を弾ませる中、ずっと浮かない表情をするフォルス。
「そう言えば、ヘルマウンテンってどんな場所何でしょうか?」
「オラは聞いだ事も無がっだ」
「私も名前だけで、詳しい事は知りません」
「そっか……フォルスさんはどうですか?」
「…………」
真緒に問い掛けられるも、無言のフォルス。
「フォルスさん?…………フォルスさん!」
「……ん、ああ、悪い聞いてなかった……」
「もうしっかりしてくださいよ!ヘルマウンテンって、どんな場所だと思いますか?」
「…………そりゃあ、山って言う位なんだから……大きいんじゃないか?」
気の抜けた返事に気の抜けた回答。相変わらず浮かない顔をするフォルス。そんなフォルスを流石に心配した真緒は、声を掛ける。
「いったい……どうしたと言うんですか?」
「…………何でも無い」
「何でも無い訳無いですよ!そんな思い詰めた表情をして……心配するのは当然ですよ!」
「マオ……」
「話して下さいフォルスさん。私達は仲間なんですから……」
フォルスは一度目を閉じると暫く考え込み、再び目を開けるとゆっくりと話し出した。
「ヘルマウンテンに行くのは止めないか?」
「えっ?」
「別に、必ずしもヘルマウンテンを通らないと、クラウドツリーに行けない訳じゃない。少し遠回りだが、確実に安全な道があるんだ」
「フォルスさん……何を言っているんですか?」
フォルスは、真緒の言葉に口を噤んだ。
「悪いが俺は……ヘルマウンテンには行けない」
「どうしてですか!?」
「フォルスざん!何でなんだぁ!?」
「フォルスさん!訳を話して下さい!」
「すまない……それだけはどうしても無理なんだ……」
「どうして!!」
「すまない……」
真緒の怒りの叫びが響き渡るが、フォルスは依然として浮かない表情をしている。
「…………もしも、お前達がどうしてもヘルマウンテンに行きたいって言うんだったら……俺は、このパーティーを抜けさせて貰う!!」
「「「!!!」」」
フォルスの脱退宣言に、驚きを隠せない真緒達。
「…………本気で言っているんですか……?」
「ああ、本気だ」
真緒の握り拳の力が強くなっていく。強すぎて爪が掌に食い込み、血が滲んできた。
「私達、今まで一緒に頑張って来たじゃないですか!!笑い合って、時にはケンカして、でも最後には仲直りする……固い絆で結ばれた仲間じゃないですか!!」
「…………悪いが何を言われようと、俺の気持ちは変わらない」
真緒の必死の説得にも全く動じないフォルス。
「…………なら、無理矢理にでも連れて行きます!!」
真緒がフォルスに向けて、武器を構える。
「マオぢゃん!」
「マオさん!」
「マオさん、危ないですよ~」
「……本気か、マオ」
「……本気です」
真緒の覚悟が変わらないのを知ると、フォルスは弓矢を手に持った。
「そうか…………じゃあ、後悔するなよ!!!」
「!!」
突如、フォルスが真緒の目の前まで跳んできた。そして、足の鉤爪で蹴りつけた。
「ぐっ……」
真緒は、蹴りつけられた衝撃で後ろに下がる。
「どうした、俺が遠距離専門だといつ言った?俺は飛べない分、接近でも戦える様に修行したんだよ!!」
フォルスは、再び真緒を蹴り始めた。何度も、何度も、何度も、休みなく蹴り続ける。
「二人どもぉ、止めでぐれぇ!」
「仲間同士でこんなの……可笑しいですよ!!」
ハナコとリーマが必死に二人を止めるが、二人はハナコとリーマの事が目に入らない。
「ぐっ……こ、この!!」
フォルスの猛攻に真緒は、剣で振り払う。しかし後ろへと跳躍し、それを避ける。
「残念だが、お前の行動は手に取る様に分かる。これでもずっとお前の側にいたからな」
そう言うとフォルスは、弓を構えた。
「少々気は引けるが、許せよ。スキル“ロックオン”……急所は外してやるから、終わったらすぐにポーションで回復しろよ!」
真緒の体にターゲットマーカーが表示される。フォルスは少し躊躇う素振りを見せるが、結局そのまま放った。
「はぁぁ!!」
しかし真緒は、飛んでくる矢を両断して防いだ。
「フォルスさんこそ、舐めないで下さい。私だって、フォルスさんの癖を知り尽くしています」
「ふ……ふふ、ふははは、そうだな……仲間だからな、お互い知り尽くしていて当たり前か。じゃあ、小細工は通用しないな」
「ええ……だから短期決着で行かせて貰いますよ!!」
すると真緒は先程のフォルスと同じ様に、目の前まで跳んできた。
「俺と同じ手で勝てると思っているなら、考えが浅いぞ!」
フォルスは、後ろへ跳ぶと同時に弓を引いた。
「分かっていますよ。こんな事じゃ、フォルスさんは倒せません……だから、“ライト”!!!」
「な、何!!?」
真緒の手から突如、目を開けられない程の光の玉が作り出された。あまりに突然の出来事にフォルスは怯んでしまった。
「…………ど、何処だ!?」
次第に目が慣れてくると、真緒の姿は見当たら無くなっていた。
「右、左、いや、後ろか!!」
フォルスは勢いよく振り返るが、そこには誰もいなかった。
「何だと……じゃあ、いったいどこ……まさか!!」
フォルスが咄嗟に見上げると、真緒は空中に浮かんでいた。
「虚空の力を使っていたのか!!」
「これで終わりです!!はぁぁぁ!!!」
「しまっ……!!」
真緒の不意を突いた空中からの一撃は、見事フォルスの頭を捉えた。
「ぐっ……」
フォルスは、頭の衝撃に耐え兼ね片膝をついた。
「私の勝ちですね、フォルスさん」
そう言うと、真緒は地面へと降りた。
「マオぢゃん!」
「マオさん!」
「マオさん、お見事でしたよ~」
「皆、私勝ったよ!」
真緒が振り返ると、ハナコ、リーマ、エジタスの三人が走ってくるその時だった。
「隙あり!」
「がはっ!!」
背を向けた真緒にフォルスが矢を放ったのだ。矢は見事、右肩の部分に突き刺さった。
「ぞんな……マオぢゃん!!」
「マオさん!嘘でしょ!!」
「おやおや、これはこれは……意外な結末ですね~」
三人は倒れた真緒に駆け寄ると、体を少し起こして、生死を確かめる。
「大丈夫ですかマオさん!」
「うっ……うう……」
真緒は苦しそうに、突き刺さった部分を抑えていた。
「いつも言っているだろう。余所見はするな……と」
「こんなの……こんなの卑怯ですよ!」
リーマがフォルスを睨み付ける。
「卑怯で結構!俺にはどうしても行けない理由がある。その為なら卑怯な手も使うさ!」
「……フォルスさんに、どんな理由があるのかは知りません…………でも!仲間を傷付けていい理由なんて、存在しません!!」
「!!!」
「……フォルスさん、あなたは最低です……」
フォルスは呆然と立ち尽くしていた。傷付いた真緒と、自分の持っている弓矢をそれぞれ見つめる。そして、ゆっくりと目を閉じて真緒達に背を向ける。大きく深呼吸すると、目を開け口を開いた。
「何とでも呼べ…………兎も角、俺はパーティーを抜ける。今まで世話になったな…………あばよ」
そう言うとフォルスは、真緒達から離れる様に走り去ってしまった。
「フォルスさん……待ってくだ……ぐぁ!」
「マオぢゃん、動いぢゃ駄目だよ!」
「待っててください、今すぐポーションで回復を…………えっ、何これ?」
真緒の傷を回復させようと、ポーションを取り出そうするリーマの腕に、植物のツルが絡み付いていた。
「きゃああああ!!!」
「リーマぢゃん!」
突然、リーマが植物のツルに引っ張られていく。ツルの根元は……花弁は可愛らしいが、茎の部分がまるで生き物の牙であるかの様に鋭く尖っていた。
「お~、あれはヘルプラントですね。ヘルマウンテンに多く生息するという特有の植物ですよ。おそらく、マオさんとフォルスさんの戦いに感化されて、近くまで来たのでしょうね~」
「呑気に解説じで無いで、早ぐ助げるだよ!!」
リーマが持ち上げられ、食べられそうになったその時!
「スキル“ロックオン”スキル“急所感知”」
声が聞こえたかと思うと、何処からか矢が飛んできて、ヘルプラントの花に直撃した。
「こ、これって……」
ヘルプラントは、そのまま力虚しく倒れた。助け出されたリーマはスキル名に聞き覚えがあった。それもその筈、つい先程別れたばかりの男が持っているスキルなのだから……。
「どういうつもりですか……今さら謝りに来たって遅いです……よ……」
リーマが振り返るとそこにいたのは、フォルスではなかった。だが、見た目はとてもよく似ていた。羽に鉤爪にクチバシがある……そうつまり、フォルスと同じ鳥人の一族だ。そんな鳥人が二人、リーマの目の前で弓を構えていた。
「貴様、何者だ!我らの里の近くで何をしていた!!」
「事と次第によっては容赦はしないぞ!!」
まさかのフォルスがパーティー脱退!
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