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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第六章 冒険編 出来損ないの小鳥
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ゴーレム

更新が遅れて申し訳ありません。

投稿は必ずしたいと思います。

 「暑い…………」


 真緒達はヘルマウンテンに向けて歩いていたが、近づくにつれ気温が高くなっていくのをリーマは感じていた。


 「そう?こんなものだと思うけど……」


 「リーマぢゃんは、運動不足なんだよぉ」


 「そうだな、心頭滅却すれば火もまた涼しと言うからな」


 「熱中対策は必須ですよ~」


 しかし、リーマ以外の仲間達は涼しい顔で平然と歩いていた。何故なら真緒は、異常なステータスで、ハナコとフォルスは、亜人特有の体温調節で、エジタスは、常備していた水の入ったボトルで、暑さを感じる事は無かったのだ。


 「うー、そうかもしれませんけど……」


 真緒達とリーマの歩くスピードが違うせいで、どんどん距離が離れていく。


 「そんなに暑いんだったら、そのマントと帽子を脱げばいいのに……」


 「それは出来ません!!」


 真緒にマントと帽子を指摘されると、リーマは帽子を深く被り直し、マントの前を閉じる。


 「この二つは、師匠が魔法使いになった記念として、私にプレゼントしてくれた大事な物なんです!!」


 「そっか……それじゃあ仕方無いね。でも、本当にどうしようか……このままだとリーマが熱中症になっちゃう」


 「それなら大丈夫です!私に良い考えが浮かびました」


 そう言うとリーマは、おもむろに魔導書を取り出した。


 「先程、エジタスさんの水の入ったボトルを見て思い出しました。私には水属性魔法がある事を、“ウォーター”」


 リーマは、水の塊を作り上げると自分の頭の上で落とした。


 「ああ~、涼しい!」


 「ま、まぁ、リーマがそれで良いなら良いけど……」


 びしょびしょに濡れて喜んでいるリーマに、少し引いてしまう真緒達。


 「さぁ!早く先に進みましょう!」


 「う、うん…………」


 びしょびしょに濡れているリーマを先頭に、再び歩き始める。リーマの体から水が滴り落ちて、地面へと染み込んだ。すると突如、地面が大きく揺れ始めた!!


 「きゃあ!な、何、地震!?」


 「す、凄い揺れでるだぁ…………」


 「うっ……」


 「立ってられない……」


 「うわぁぁっととと!!!」


 突然の揺れに堪えられず、その場にしゃがみこんでしまう。


 「ゴオオオオ!!!」


 おぞましい叫び声と共に地面から、巨大な手が突き出てきた。


 「何なんですかあの手は!?」


 真緒が驚いていると、手がもう一本突き出てきた。そして突き出た二本の手を駆使して、地面から這い出てきた。その体は全身が灰色の石で出来ていた。


 「……ゴーレム!」


 「ゴーレムって……あの?」


 リーマの呟きを聞き逃さなかった真緒達は、ゴーレムについて質問した。


 「はい……その昔、魔法使い達が自衛用に、考案して作り上げたと言われています。ですが、本物を見たのは初めてです」


 リーマがゴーレムについて語っている中で、エジタスは別の事を考えていた。


 「(はあ~、ゴルガさんと比べると随分、小さいですね~)」


 エジタスは、魔王城の四天王であるゴーレムのゴルガの事を思い出していた。確かに比べると、明らかに小さく迫力に欠けていた。


 「だげど、どうじで目覚めでじまっだんだぁ?」


 当然の疑問を投げ掛けるハナコ。


 「もしかしたら?地面の下で眠っていたのを、水が染み込んだ衝撃で目覚めてしまったのかも知れないな………」


 仲間達の視線がリーマに注がれる。


 「えっ、あ、は、ははははは……」


 リーマは苦笑いを浮かべる。


 「ゴオオオオ!!」


 「どうやら、無駄話している暇は無さそうだ!!」


 ゴーレムは、真緒達の存在に気付くと襲い掛かって来た。その巨大な右腕が真緒目掛け、振り下ろされる。


 「よっと!」


 巨大な左腕が真緒目掛け、振り下ろされる。


 「ほっ!」


 しかし、そんな攻撃をヒラリと回避する。


 「皆、いけるよ!図体が大きいだけで、動きは遅いよ!」


 真緒が自信満々に言うと、フォルスが叫んだ。


 「マオ、余所見するな!!」


 「えっ……?」


 突如、真緒の体に衝撃が伝わり、数十メートル吹き飛ばされる。


 「マオぢゃん!」


 「マオさん!」


 「大丈夫かマオ!!」


 何故吹っ飛ばされたのか、それはゴーレムの姿を見れば一目瞭然だった。自分の体の一部をもぎ取り、投げつけたのだ。その為、肩の部分が無くなっていた。


 「う、うん。な、何とか……」


 無駄に高いステータスのお陰で、ふらふらになりながらも立ち上がる真緒。


 「よかった…………しかし、どうする?動きが遅いと安心していた矢先に、あんなに早い攻撃方法があると分かった以上、倒すのは厄介だぞ……」


 「あの、私に任せて頂けないでしょうか?」


 真緒達がゴーレムの倒し方に悩んでいると、リーマが任せてほしいと懇願してきた。


 「リーマ、何か策はあるのか?」


 「はい、でも……私も聞いた話なので、確証が無いので少し試してもいいですか?ゴーレムを目覚めさせてしまった償いをしたいのです」


 リーマの目線はゴーレムだけに集中しており、声だけで会話をする形になっていた。そして、そんなリーマの目には固い決意の眼差しが感じられた。


 「…………分かった。お前の好きなようにやれ。援護の方は俺達に任せろ」


 「リーマ、頑張ってね」


 「リーマぢゃん、信じでいるだよぉ」


 「あなたなら出来ますよ~」


 「皆さん……ありがとうございます!!」


 仲間達の熱い信頼を胸に、リーマはゴーレムに向かって走り出した。


 「ゴオオオオ!」


 ゴーレムが雄叫びを上げると、今度は自分の胸部分の岩をもぎ取り、投げつけてきた。


 「邪魔はさせない!スキル“ロストブレイク”」


 真緒の一撃が飛んできた岩を破壊した。


 「ゴオオオオ!!」


 ゴーレムは、さらに近づいてきたリーマに対して拳で殴り掛かる。


 「リーマぢゃんはオラが守る!スキル“熊の一撃”」


 ハナコのスキルが拳の横から当たったお陰で、殴る位置がズレた。


 「もう少し…………!」


 リーマはゴーレムを登り始めた。


 「ゴオオオオ!!!」


 ゴーレムは激しい雄叫びを上げると、登ってくるリーマを握り潰そうと、手を伸ばす。


 「余所見は禁物だぜ、スキル“ロックオン”」


 ゴーレムの目の部分にターゲットマーカーが表示される。


 「いくら岩の塊だと言えど、目を狙われたら嫌だろう!食らえ!!」


 フォルスから放たれた矢は見事ゴーレムの目に当たるが、予想通り弾かれてしまう。しかし、突然矢が迫ってくるのに怯んでしまったその一瞬が、ゴーレムの運命を分けた。


 「確か……この辺に……あった!」


 リーマはゴーレムの首の後ろ辺りを調べると、“emeth”と刻まれていた。


 「これの一文字を消せば……!!」


 リーマは、“emeth”の最初の文字である e の部分を削り取り、“meth”に変える。すると……。


 「ゴ……オ……オ……オ……オ」


 次第にゴーレムは、動かなくなり只の岩の塊に成り果てた。


 「倒したのか……?」


 「凄いよ、リーマ!!」


 「リーマぢゃん、やっだだなぁ!!」


 「ありがとうございます!!」


 「いったい、どうやったんですか~?」


 ゴーレムを意図も簡単に倒してしまったリーマに、その方法を聞くエジタス。


 「ええっとですね……昔の魔法使い達は、ゴーレムを作る際に祈りの意味を込めて、真理“emeth”と刻み込みます。そして、何時でも壊せる様に“emeth”の一文字を消して、“meth”死んだに変えれば簡単に壊せると、師匠から聞いた事があったんです」


 「成る程、そんな倒し方があったのですか~」


 この時エジタスは、四天王であるゴルガにもその文字があるのか、本人に聞いてみようと思っていた。


 「今回は、リーマの知識のお陰で助かったね」


 「えへへ、それほどでも……」


 「……だが、ゴーレムを目覚めさせたのもリーマのせいだがな」


 褒められるのと、叱られるのを同時に受けるという不思議な体験をするリーマ。


 「さ、さぁ!過去の事は気にせず、先に進みましょう!!」


 「そうだね……それじゃあ皆、行こうか」


 リーマが誤魔化すように、先頭をきって歩いていく。その後をついていく真緒達。しばらく歩くと、リーマが呟く。


 「……やっぱり、暑いな……」

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