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孤独船の正体

遂に孤独船の正体が明かされる!

 「よいしょ……と」


 ジェドの船からルーは、物資を外に運び出していた。


 「ふー、あともう少し……」


 「やっほー、大変そうだね」


 「ライアさん!どうしてここに?」


 ルーが物資を運んでいると、ライアが様子を伺いにやって来た。


 「マオさん達の案内が終わって暇になったから、遊びに来たんだよ。それより……前に言ったでしょ、さん付けしないで呼んでって!」


 「えっ……でも、ジェド船長の時はさん付けで呼ばれて……」


 「もう!そう言う事じゃないわよ…………バカ」


 「?」


 ライアの顔が赤く染まる中、察しの悪いルーは首を傾げていた。


 「それでルーはどうするつもりなの?」


 「何が?」


 「孤独船との戦いよ!勿論参加するわよね」


 「あ~、いや~、僕が行っても足手まといだろうし……残るよ」


 ルーは気まずそうに目を反らしながら、頭を掻いた。


 「何言ってるの!ルーはやれば出来るんだから、ガツンと行ってきなさいよ!海の男なんでしょ!?」


 「無理だよ~……僕はジェド船長みたいに力も無いし、ジェド船長みたいに魔法だって扱えないんだ。あと、ジェド船長みたいに頭も回らないし、ジェド船長みたいに……ライアさん?」


 ルーがライアに目を向けると、両手を拳にして俯きながらプルプルと揺れていた。


 「何よ!!ジェド船長、ジェド船長って、出来ない事を自分に力が無いという言い訳にしないでよ!本当は只臆病なだけでしょうが!!」


 涙を浮かべながら、大声で怒鳴るライア。


 「もう知らない!!」


 「あ、待ってよライアさん!」


 ライアは、ルーの呼び掛けを無視して、行ってしまう。


 「(何なのよ!ルーのバカ!アホ!意気地無し!……ルーが行かないんだったら、私が行くしかない!!)」


 ライアは涙を拭い去り、決意を固めた。




***




 「いいかヤローども!今回の“孤独船”との戦い、多人数で挑んでも確実に死者が出る!そこで、俺と真緒達の六人だけで乗り込もうと思う!」


 「そんなジェドさん、いくらなんでも無茶です!」


 ジェドの思いきった作戦に、船員達から反対する言葉が絶えない。


 「可愛い手下達をここで失う訳にはいかないんだよ」


 「ジェ、ジェドさん……分かりました。そこまで私達の事を思って下さっているのに、その思いに答えない訳にはいきません!ご武運をお祈りしています!」


 ジェドの船員達を思いやる心が、これ以上野暮な事を言うなと告げた。


 「ありがとうよ、それじゃあ行ってくるぜ!」


 「ちょっと、待ってー!!」


 ジェド達が出発しようとしたその時、遠くの方からライアが泳いで来た。


 「ライアさん!?どうしたのですか、そのお姿は?」


 ジェドの言う通り、ライアの格好は胸プレートの防具に三ツ又の槍を持っていた。


 「私も一緒にお供させてください!」


 「いやしかし、ライアさんにそのような危険な目に会わせるわけには……」


 「お願いします!!」


 「…………」


 真剣な眼差し、冗談半分で言っているのでは無い事が見て取れた。


 「分かりました。その代わり、私達の側を離れない事を約束してください」


 「はい!!」


 同行を許されて、喜びに浸るライア。


 「……あ、ライアさん……あの……」


 「フン!」


 その場にいたルーがライアに声を掛けようとするも、まともに聞いては貰えなかった。


 「それじゃあ改めて、行くぞ!!」


 「「「「「「おお!!」」」」」」


 ライアを加えたジェド達は、“孤独船”に向け出港した。




***




 「ここが女王様が言っていた“孤独船”のいる場所の筈だ」


 女王のスキル“海の目”の能力で海の現状を知り、“孤独船”の場所を割り出した。


 「いったい何処にいるんだろう?」


 「何だが不気味だなぁ……」


 「恐ろしく静かですよね」


 「油断するんじゃないぞ」


 「離れては駄目ですからね~」


 波すら立たず、無音の時間が続く。そう思った次の瞬間!


 「ぐっ、下からだと!?」


 突如、ジェド達の目の前の海中から“孤独船”が姿を現した。


 「現れやがったな……今日がお前の命日だ!撃てー!!」


 「えい!」


 ジェドの合図と共にライアは大砲の玉を発射する。バキバキと“孤独船”に横穴が空いていくが、それでも沈む気配を感じさせない。


 「何なんだよあれは……」


 「本当に……呪われた船なんでしょうか?」


 「危ない!!何か飛んでくるぞ!!」


 フォルスが突然叫んだかと思うと、“孤独船”から“黒い塊”が飛んできた。


 「バカな!?大砲の発射音がしなかったぞ!」


 「ジェドさん!避けて下さい!!」


 リーマが警告するが、突然の出来事に反応が遅れてしまった。


 「しまっ……!(終わった。親父の仇も果たせずここで死ぬのか……嫌だ!死にたくない!こんなところで死んでたまるか!!)」


 「スキル“ロストブレイク”」


 「マオ!」


 ジェドの前に真緒が背を向けて立っていた。


 「ジェドさん、離れていて下さい……はぁあああ!!」


 真緒のスキルが“黒い塊”とぶつかり合う。そして……。


 「うわっぶ!」


 “黒い塊”は弾けとんで、真緒の全身を黒く染め上げた。


 「大丈夫かマオ!!」


 「マオぢゃん!」


 「マオさん!!」


 「マオ!」


 「お怪我ありませんか~?」


 「大丈夫?」


 仲間全員が真緒の安否を心配し、駆け寄る。


 「ぺっ、ぺっ、……うん大丈夫」


 真緒を染め上げた黒い物質は非常にヌルヌルしていて、大量の水分を含んでいる事が見て取れた。


 「そうか、ならよかった……それにしても何だったんだ、あの黒い塊は?」


 「もしかして……」


 真緒はこの黒い物質に心当たりがあった。それは、この世界ではない元いた世界で見た事があった。


 「まさか、“孤独船”の正体は!!」


 真緒が“孤独船”の正体に気がついた瞬間、“孤独船”から長い触手が現れた。


 「よ、避けろ!!」


 触手がジェド達の船を叩きつけ、甲板にひびが入った。


 「皆、怪我は無い?」


 「ああ、何とかな……」


 「私、分かったよ“孤独船”の正体が」


 「何だと!?」


 「呪いなんかじゃなかった。“孤独船”の正体……それは……」

 

 その時、突如“孤独船”が縦に持ち上がり、船底にいたのは……。


 「ピギシャー!!」


 「こ、こいつは……“クラーケン”!?」


 海の怪物と呼ばれる“クラーケン”は、まるで巨大なタコやイカのような頭足類の姿をしており、未だ“孤独船”の残骸を背負っていた。


 「あの黒い塊は、墨だったんですよ」


 「そうだったのか……だが何で海の怪物の“クラーケン”が船なんて背負っていたんだ?」


 「おそらく……擬態ではないかと思います」


 「擬態?」


 初めて聞く言葉に、仲間全員が真緒を見つめる。


 「タコやイカには、外敵から身を守る為に、周囲の物に化けて溶け込む習性があるんだけど、あの“クラーケン”は想像以上に大きい自分の体を完全に隠す為に、船を擬態の対象に選んだんだと思う」


 「つまり……“孤独船”が船を襲っていた理由は、本体である“クラーケン”が身を守る擬態の船を集める為に、やっていたのか?」


 「そう……ですね……」


 真緒の説明が終わると、ジェドは静かに溜め息を吐いた。


 「そんな……そんなくだらない理由で、親父は殺されたのか?……はっ、許せねぇ……許せねぇよ!!テメェだけは絶対に許さねぇぞ!!!」


 「ピギシャー!!!」


 ジェドの剥き出しになった殺意に共鳴するかのように、鳴き声を発した。その時、“クラーケン”の頭部で何かが光った。


 「あ!あれってもしかして……」


 “クラーケン”の頭部に、水晶の様な輝きを放つ王冠が載せられていた。


 「そう、あれが水の王冠だよ!!」


 この中で唯一、水の王冠の形を知っているライアが“クラーケン”が被っている王冠を見て叫んだ。


 「やっぱり……よし!皆、取り戻すよ!!」


 「「「「「「おおー!!」」」」」」


 真緒達と“孤独船”こと、“クラーケン”との第二回戦が始まった。

次回 真緒達 VS クラーケン お楽しみに!


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