野宿
12時更新達成!この調子で頑張ります。
「ですが、先ずは今晩の食料を集めないといけませんよ~」
カルド王国草原地帯。クレバの荒地に行こうとする真緒達だったが、エジタスが食料について物申した。
「え、食料なら買った物があるじゃありませんか?」
そう言って真緒は、袋の中にある食料を見せる。
「それはあくまで、万が一の時を備えての食料だ。その日の食料は現地調達が基本なんだ。そうだろ、エジタスさん?」
エジタスの代わりにフォルスが旅の基本を説明した。その答えが合っているかどうか、確認する。
「ええ、その通りです。流石ですね~フォルスさん」
「いや、俺も一人でいることが多かったから、自然に覚えただけさ」
はにかんだ笑顔をするフォルス。
「でも、食料と言ってもどんなのがいいんですか?」
食料という幅広い選択肢の中、悩んでしまう真緒。
「一番いいのは肉なのですが……あ、丁度良いところに、ボアフォースがいますね~」
エジタスの目線の先には、美味しそうにその辺の草花を食している、ボアフォースがいた。
「猪って草とか食べるんですね?」
「猪は雑食系だからな。特にボアフォースは食べられそうなものなら、なんでも食べてしまうんだ」
「へぇー……」
フォルスの意外な知識に感心する真緒達。
「それじゃあ早速、狩「エジタスさん」……はい?」
エジタスがボアフォースを狩ろうとすると、リーマが立ち塞がる。
「リーマさん、どうしましたか?」
「私に、殺らせて頂けないでしょうか?」
リーマの目には、真剣という文字が浮かび上がるほど真っ直ぐだった。
「……いいでしょう。あなたの好きなようにしてください」
「!……ありがとうございます!!」
エジタスの許しを貰い、食事中のボアフォースと向き合う。
「“アーメイデの魔導書”の新たなる力、見せてあげます!」
リーマは魔導書に追加された新しいページを開く。
「食らいなさい!“ウォーターキャノン”!!」
リーマの目の前に大きな水の塊が形成され、その塊はボアフォース目掛けて飛んでいった。
「プギィィィ!!?」
突然、水の塊が飛んできたことにより、水圧で骨が砕け、その骨が肺に刺さって呼吸不全になり死んでしまった。
「す、凄いよリーマ!」
「意図も簡単にボアフォースを倒じでじまうんだから、オラびっくりしだだよ……」
「それが、リーマの新しい力か……」
「凄いですね~」
「えへへ、まぁ凄いのは私ではなく、この魔導書なんですけどね……」
リーマは照れながら、真緒達に魔導書を見せる。
「そんなことないよ。その魔導書を扱える、リーマの方が凄いんだよ!」
「マオさん……」
お世辞ではない素直な気持ち。真緒の思いに、心が暖かくなったリーマ。
「そういえば、“ウォーターキャノン”と言っていたが、つまり……」
「はい、魔導書に加わった力は、水属性魔法です!」
「これで、魔法使いとしての素質が一つ上がったな」
「皆さんのおかげです!ありがとうございます」
リーマは頭を深々と下げる。
「この調子で、他のページも集まるといいね」
「はい!」
その時のリーマの笑顔はとても、無邪気なものだった。
***
その日の夜。真緒達は焚き火をして、野宿することにした。
「私、外で寝るなんて初めてです!」
真緒は野宿初体験で、興奮していた。
「腹減っだだなあ……」
「私も……」
「それにしても、エジタスさんが料理が出来て、本当によかったな」
エジタスは、リーマが狩ったボアフォースの肉を切り分け、肉を柔らかくする為に、リズムよく叩いていた。
「もうすぐ出来ますからね~」
ある程度叩き終わると、焚き火近くの熱くなった石の上に置いて、焼き始めた。
「うわぁ~」
「いい臭いだなぁ……」
「早く食べたいです……」
「おい、ハナコ。涎を垂らすな、料理に掛かるだろ」
徐々に焼き色が付き、肉汁が飛び跳ねる。
「さぁ、出来ましたよ~、ボアフォースのステーキです」
人数分の料理が出来上がると、各人の目の前に置いていく。無論、皿などは無いため、しっかりと熱で火炎滅菌した石の上にである。
「それじゃあ、食べましょうか」
「いだだぎまず!」
「頂きます!」
「頂きます」
「慌てなくても、おかわりは沢山ありますからね~」
エジタスの武器である食事用ナイフとフォークを真緒達が受けとると、目の前に出された料理にかぶり付くハナコとリーマ。それに続くように真緒とフォルスも食べる。しかし、ハナコだけは、フォークやナイフが使えないため手掴みであるが、熱さをもろともしなかった。
「美味しい!」
「美味じいなぁ!」
「本当ですね!」
「素晴らしい腕前だな」
「そんなに褒めないで下さいよ~」
褒められたエジタスは、少し照れくさそうに体を揺らす。
「おがわり!」
「もう、ですか!?ハナコさんは食べるのが早いですね~、すぐ用意しますね」
「ハナちゃんは食いしん坊だからね」
「ハナコさんのおかげで金欠になりかけたんですよね」
「そうそう!」
「なんだ、その話は聞いたことがないな」
「それはですね……」
「ぢょっど、ぞの話はじないで欲じいだよー!」
「何の話ですか~」
話を聞きつけ、エジタスが戻ってきた。
「いやー、実はですね……」
「もぉー!ぞの話はじないで欲じいだぁー!」
「「あはははははは」」
事情を知っている真緒とリーマが笑い、事情を知らないフォルス達は、キョトンとしていた。
***
食事を済ませた後、真緒達は男女に分かれて寝ることにした。もちろん見張り役として、フォルスとエジタスは交代しながらである。
「まずは、俺が見張りをしよう」
「ありがとうございます。それでは、皆さんお休みなさ~い」
「師匠、お休みなさい」
「お休みなざい」
「お休みなさい」
フォルスを除いた四人は眠りについた──筈だった。
「ねぇねぇ、二人って好きな人とかいないの?」
興奮して眠れない真緒が、二人に話し掛けてきた。それも、恋愛絡みの話をしてきた、真緒も年頃の乙女である。
「ぞんなの居らんよ、ごの間まで奴隷だっだんだから……」
「私も、おじさんとおばさんの下で働いていましたから、好きな人と言われても……」
「え~、誰かいるでしょ?」
「そういうマオぢゃんはどうなのさ?」
「え?」
「そうですよ、エジタスさんと随分仲が良いようですね」
質問していた筈の真緒が、逆に質問される立場になってしまった。
「そ、そ、そんな師匠とはあくまでも師弟関係で、疚しい気持ちなんてこれっぽっちも無いよ!」
「じゃあ、嫌いなんだが?」
「そんな訳無いじゃないですか!師匠の事は大好きですよ!」
「やっぱり好きなんですね」
「だからそうじゃなくて……あれ?大好きだけど好きじゃなくて、嫌いでもなくて……ああー!もう分からなくなっちゃった!もう寝る!お休み!!」
頭の中がごっちゃになり、訳が分からなくなってしまった真緒は、無理矢理会話を終わらせ寝てしまう。
「あれ~マオぢゃん?どうじだのがな~?」
「自分から聞いておいて、ズルいですよ~」
二人の弄りはしばらく続いた。その様子を見ていたフォルスは、少し笑った。
「愛されてるんだな、エジタスさん」
「…………」
寝てしまったのか、フォルスの言葉に反応を示さないエジタス。これが、真緒達の初めての野宿であった。
荒地のとある場所。二人の男が頭を抱えていた。
「はぁー、いったいどうすればいいんだ?まさか、こんなことになるなんて……」
「……何処かに俺達を救ってくれる救世主はいないだろうか?」
男達の助けを求める声は虚しくも、誰にも届かなかった。
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