笑わない少女
これで三章は完結です。
ハイゴブリンとの戦闘を終えた真緒達は、現在七色に輝く玉とポーションを探している。
「見つからないなー」
「オラ、腰が痛ぐなっできだよ……」
「私もです……」
「しかし、よくこんなに集めたな」
「まさに、お宝の山ですね~」
真緒達は宝物庫と思われる、大量の盗品が積み重なった場所を捜索していた。
「んー……あっ、あった!」
「本当か!?」
真緒が一番上の部分を探していると、七色に輝く玉を見つけた。手に取ると玉はオレンジ色に変化した。
「本当だ……感情によって色が変化するんだ」
「マオぢゃんは今、どんな気持ぢなの?」
「……大変だったけど、取り返せて嬉しいって気持ちかな?」
「何だか暖かみのある色だな」
真緒の色に素直な感想を述べるフォルスの横で、リーマが必死に探していると……。
「あ、こっちも見つけました!」
お宝の山に埋もれるように、いくつものポーションが隠されていた。
「本当!?」
「よかったですね~」
「一、二、三……うん、ちゃんと全部あります!」
一つ一つ確認をして、全てあることが分かると、次々と袋の中へ入れていく。
「これで、取り戻す物はあと一つだけですね」
あと一つ、それが何なのか分からない者はいない。真緒の言葉に仲間全員が頷く。
「さぁ、行きましょう。アメリアちゃんの笑顔を取り戻しに!」
真緒パーティー ゴブリンの洞穴 攻略!!
***
オオラカ村──村長の家。
村長は真緒達の帰りを待っていた。ソワソワと辺りを歩き回って、忙しない。
「どうするか……あの子達に任せたはいいが、こうやって只じっと待っているのも、父親としてどうなんだ……」
色々と千思万考していると、玄関のドアが勢いよく開く。
「ただいま戻りました!」
「おお!戻ってきましたか!」
村長の心配を他所に、意気揚々と戻ってきた真緒達。
「それで、どうでしたか?」
「この通り、取り戻しました」
真緒は袋から七色に輝く玉を、取り出して見せた。
「おお!これです、この玉に間違いありません!本当に、ありがとうございます!!」
村長は玉を受けとると、何度も頭を下げた。その時、玉は黄色に輝いていた。
「いえいえ、いいんですよ。私達も盗まれた物を取り戻せましたので………それよりも、早く娘さんに持っていってあげてください」
「ああ、そうですよね!皆さん、この度は本当に、本当に、ありがとうございました」
村長は再び、真緒達にお礼を述べると足早に、アメリアの居る部屋へと向かった。
「村長さん、娘さんの事になると必死ですね」
「ほ~ら、突っ立ってないで私達も、アメリアさんの笑顔を見に行きましょうよ~」
「そうですね」
真緒達は、アメリアの部屋へと向かった村長を追いかける。
村長の後を追いかける真緒達は、少しドアが開いて、光が漏れでる部屋を見つけた。
「……あそこでしょうか?」
「確かめて見ましょう」
リーマの言葉に頷くと、真緒はドアノブに手を掛けようとする……。
「何で!何でなんだ!」
中から村長の声が聞こえる。その声には、行き場のない怒りが込められていた。
「どうしたんですか!?」
真緒達は村長の叫びを聞き、急いでドアを開ける。するとそこには、泣き崩れる村長と、椅子に座り玉を両手に持ったアメリアがいたのだが、玉の色は薄汚れていて、とても綺麗とはほど遠かった。そして、肝心のアメリアは……。
「…………」
笑顔ではなかった。玉を取り戻した筈なのに、その顔からは喜びは一切見られなかった。
「アメリアちゃん……」
真緒はアメリアに近寄る。
「マオ?」
アメリアの前まできた真緒は、しゃがみこんで目を合わせる。
「………もしかして、笑うのが恐いの?」
「!!」
この時初めて、アメリアの顔に驚きの表情が浮かび上がった。
「マオさん、それはどういう……「すみません、少し静かにしていただけませんか?」……あ、はい。分かりました」
村長が意味を聞こうとするも、真緒は、アメリアと目線を外そうとしない。
「アメリアちゃん……あなたは笑うのを恐れている。笑ってしまったら、この玉が誰かにまた盗まれてしまうかも知れないから……でもね、お母さんが本当に守りたかった物って何だか分かる?」
「?」
アメリアは答えが見つからず、首を横に振った。
「……それはね、アメリアちゃんの笑顔その物だよ」
「え?」
この時初めて、アメリアの口から声が漏れた。
「この七色に輝く玉は、持っている人の感情によって、色が変化する。つまり、アメリアちゃんの笑顔には、盗まれるほどの価値があるってことだよ」
「…………」
「……お母さんが、この玉をアメリアちゃんにあげた理由は、この玉がアメリアちゃんの身代わりになってくれるようにって、想いがあったからなんだよ」
「…………」
「……お母さんが本当に綺麗だと思ったのは、アメリアちゃんの笑顔だったんだよ」
「……ほんと?」
遂に、アメリアの口から言葉が発せられた。
「うん、本当だよ。だって、アメリアちゃんのお母さんが言ってたでしょ?“笑顔の素敵な女性になってね”って、これって玉の輝きを失わない位の、素敵な笑顔をずっと見ていたいっていう、お母さんの願いなんだと思う」
「……おかーさん」
アメリアの記憶に甦るのは、母親が七色に輝く玉を渡した時の事。玉が光輝いてる中で母親がずっと見ていたのは、娘──アメリアの顔だった。
「……おねーちゃん、おかーさんはぬすまれたこと、うらんでないかな?」
「恨んでるわけないよ!だって、一番大切なアメリアちゃんの事を玉が守ってくれて、その玉も取り返すことが出来たんだから!」
「そっか、そうだよね……」
薄汚れていた玉が、徐々に輝き始める。
「おねーちゃん、わたしのえがおをとりもどしてくれて、ありがとう!」
玉は、これまで見たことがない位の輝きを放った。
「!……綺麗だね」
「綺麗だなぁ……」
「美しいです……」
「俺、こんな気持ち初めてだ……」
「おお、アメリア!!」
「おやおや、これは確かに盗まれるほど、素敵な笑顔ですね~」
アメリアの笑顔は、玉の輝きよりも素敵な笑顔だった。
***
「こっちこっちー!!」
「こら待て、逃がすか」
「フォルスさん、こっちですよ」
「フォルスさん、こっちですよこっち」
「クソ、皆逃げるのが上手いな」
現在、村長の家。ぜひ、お礼をさせて頂きたいと言う村長の言葉から、今晩泊めてもらうことになった真緒達。村長の手料理が出来るまでの間、アメリアと一緒に遊ぶ真緒と、リーマと、フォルスの三人。
「すみませんね、娘の相手だけでなく、料理の手伝いまでさせてしまって……」
「いいんですよ~、これくらいは当然ですよ」
村長とエジタスは供に料理をしていた。
「それにしても、師匠って料理が出来たんですね」
「ふふふ、元々私は一人旅をしていましたからね~料理位、簡単に出来ますよ」
「そうだったんですか……」
「マオおねーちゃん、はやくつづきはじめようよ」
「ああゴメンゴメン、今行くよ」
真緒は再び、アメリア達と遊び始めた。すると、真緒はハナコがいないことに気づく。
「あれ、ハナちゃんは?」
「そういえば、いないな……」
「ちょっと、私探してくるよ」
「夕御飯までには戻ってこいよ」
「はーい!」
真緒はハナコを探すため、村長の家を出た。……しばらく、村を捜索していると、大会があった場所で座り込んでいるハナコを発見した。
「あ、いたいた。探したよー」
「マオぢゃんが……」
「いったいどうしたの?もうすぐ、夕御飯出来るよ」
「うん、分がっだ」
しかし、ハナコはその場を離れようとせず、ボーっと夜空を眺めていた。
「ハナちゃん?」
「マオぢゃん……オラ、全然役に立でながっだ……」
「え?」
「笑わせ大会でも、ハイゴブリンとの戦闘でも、全然役に立つごどが出来ながっだ……」
「ハナちゃん……」
「オラって駄目な奴だと思っでだげど、ごごまで駄目な奴だなんでな……」
「そんなことない!ハナちゃんは役に立ってくれたよ!」
「気休めは止めでぐれ!……誰もオラの事なんが必要とじで無いんだ……」
「…………」
気まずい沈黙が流れる。この沈黙を破ったのは……。
「ああー、いたー!!」
遠くの方から、アメリアが走ってきた。それに遅れてくるように、他の皆もやって来た。
「マオおねーちゃん、もうごはんができてるよ!はやくいこー」
「う、うん……」
真緒の腕を引っ張っていると、アメリアはハナコがいることに気がつく。
「ん?ああ!くまのおねーちゃんだ!ねぇねぇ、わたしにあのくすぐりを、おしえてよー」
「え?」
アメリアはハナコの腕を引っ張る。
「ほら、ハナちゃんを必要としてくれる人は必ずいるんだよ。勿論、私もハナちゃんが必要だよ。だって、ハナちゃんは私の初めての友達だもん!」
「マオぢゃん……」
真緒とハナコはお互いを、必要とし合っていることが分かった。
「ねぇねぇ、おねがーい。わたしにもくすぐりをおしえて」
「よーじ、詳じぐ教えでやるだぁよ!」
「ほんと!?」
「ああ、まずば爪の先を利用じで……」
「おーい、話は夕御飯を食べてからにしてくれないかー?」
「そうだねぇ、じゃあ行ごっが……」
「うん!」
ハナコとアメリアは手を繋ぎ、戻っていった。
「ほら、マオも行くぞ!」
「待ってくださいよー」
それに続くように真緒も駆け足で、家へ戻る。その光景をエジタスが一人眺めていた。そして、“ボソリ”と呟く。
「笑顔は素晴らしいですね~。やはり、笑顔こそがこの世界を平和に導く鍵。私の考えは間違ってはいない……」
エジタスの呟きを聞いた者は誰も居らず、夜空へと溶け込んだ。
「師匠ー!何やってるんですかー!早く夕御飯食べましょうよー!」
遠くの方から真緒の声が聞こえてくる。
「は~い!今行きま~す!」
エジタスは駆け足で戻っていく。
次回より第四章が始まります。お楽しみに!
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