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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第三章 冒険編 オオラカ村の笑わない少女
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真緒パーティー VS ハイゴブリン(後編)

遂にハイゴブリンとの決着!

 「行くゼ、覚悟しナ!」


 ハイゴブリンは真緒へと突っ込んできた。


 「はぁ、はぁ、スキル“ロストブレイク”!」


 真緒は、突っ込んでくるハイゴブリンに合わせて、スキルを発動する。しかし、当たる直前に後ろへ飛んで、緊急回避するハイゴブリン。


 「オオっと、危ネぇ、危ネぇ……。そのスキル、確かに威力はあるが、射程距離は1、2メートル弱。あんなに連発すれば分カルッつーの」


 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 真緒の息づかいが、先程よりも荒くなった。


 「しかも見たところ、それは使う度に身のHPを削る言わば、諸刃の剣。もう、オメーは虫の息ってやつさ!」


 「くっ……」


 「バカな奴だナ~、自分のステータスも満足に把握出来ねーノカよ、ギシャシャシャ」


 「言わぜでおげば……「いいよ!」何で!」


 「あいつの言ってることは正しいから……」


 真緒は自身のステータスを鑑定した。すると……。



 HP 60/800



 「(打てるとしたらあと残り一回、回復手段だったポーションは、既に奪われてるし、確実に当てられる時にしないとさっきみたいに避けられちゃう……)」


 頭の中で冷静に考えていると、再びハイゴブリンが突っ込んできた。


 「ギシャシャシャ、スキルもまトモに扱エないド素人に、負けル訳ネェーな!」


 ハイゴブリンは持っているナイフを、真緒目掛けて投げつけた。


 「っつ!」


 しかし、そこは真緒の高い反射神経で避ける。だがそれでもなお、向かってくるのを止めないハイゴブリン。


 「(どういうこと?武器も無い丸腰状態なのに……)」


 「スキルの正しイ使い方を教えてヤルよ!スキル“シャドウスティール”!!」


 ハイゴブリンの影が伸びていく。


 「シャドウスティール!また何かを盗むつもり!?」


 真緒は盗まれないように持ち物を保護するが、影は真緒を通りすぎた。


 「え!?」


 「バ~カ、シャドウスティールの用途は、何も盗むだけじゃない」


 ハイゴブリンの影は、投げつけて今もなお、空中を飛んでいるナイフの影と重なる。すると、ナイフは空中で動きを止め、物凄いスピードで手元に引き寄せられた。


 「こんナ風に引き寄せラレルンだよ!!」


 「そんな!きゃあ!!」


 引き寄せられたナイフが振り下ろされる。持ち物を盗まれると、思い込んでいた真緒は、反応が遅れて腕を切りつけられる。


 「うう、痛いよ……」


 異世界に来て、初めて受ける傷。スキルを使ったHP減少ではなく、外部からの攻撃による減少……。腕から血が流れる。急いで止血しようと、涙目になりながら必死に押さえる。


 「ギシャシャシャ、ジャーな」


 ハイゴブリンが真緒に止めを刺す為に、ナイフを振り下ろそうとすると……。


       シュン!!

 ハイゴブリンの足下に、一本の矢が突き刺さる。


 「ナ、ナンだ!?」


 「マオに手を出すんじゃねえ!」


 目線の先には、フォルスが矢を放った姿があった。


 「フォ、フォルス……さん」


 「悪かったなマオ、もっと早くに助けてあげられれば……」


 「いいんです。それでも私は嬉しいです」


 「そうか……。おい、お前!今度は俺が相手になってやる。掛かってこい!」


 フォルスは鋭い眼光で、ハイゴブリンを睨み付け挑発する。


 「いいゼ、お望み通りテメーから殺してヤルよ!」


 挑発を受けて、フォルスに突っ込んでくるハイゴブリン。そして同じように、ナイフをフォルス目掛けて投げつけた。


 「…………」


 勿論、難なく避けたフォルス。そして同じように、スキルを発動する。


 「スキル“シャドウスティール”」


 ハイゴブリンの影が伸びていく。そして同じように影は、フォルスを通りすぎた。しかし、フォルスはそのまま弓を構える。


 「油断さえしなければ、同じ手に引っ掛かりはしない!」


 「バ~カ、同じ手を使う奴なんかいるわけないだろ!俺様が引き寄せるのは…………死体だよ!!」


 そう言って、ハイゴブリンが引き寄せたのは、真緒達に殺されたゴブリンの死体だった。その引き寄せる通り道にいた、フォルスの頭に死体が激突した。


 「ぐぁぁ!!」


 「フォルスさん!」


 突然、頭に衝撃を受けたフォルスは、耐えられず膝をついてしまう。その間にハイゴブリンは投げたナイフをスキルで引き寄せる。


 「ギシャシャシャ、ダカら最初に言ったろ?こいツラは、扱いヤスい“道具”ナンだよ」


 「ぐ……」


 「ジャーな、生意気な小鳥チャン」


 「ちょっと待ってください!」


 「今度は誰だヨ!」


 フォルスに止めを刺そうとした時、今度はリーマが止めた。


 「その人を殺すならまず、私を殺しなさい!そのぐらい余裕でしょ、このクソゴブリン!」


 「ナンダその見え見えの挑発は……。まぁいいダロウ、相手してヤルよ!」


 挑発を受けて、リーマに突っ込んでくるハイゴブリン。そして同じように、ナイフをリーマ目掛けて投げつけた。


 「サぁ!今度はドッチかな!死体かな?ソレともナイフかな?」


 「…………」


 リーマは只黙ってナイフを避けて、立っていた。


 「スキル“シャドウスティール”(ギシャシャシャ、恐怖で声すら上げラレナイ、威勢が良いノハ最初だけか……。さテ、今回選ぶのは……死体。但し、只の死体ではなく、大量の死体だ)」


 ハイゴブリンの影が伸びていく。そして、リーマを通りすぎてゴブリンの大量の死体の影と重なった。


 「(首の骨を折ってヤルよ!!)」


 大量の死体が引き寄せられていく。


 「リーマ!」


 真緒が叫ぶと同時に、リーマは大きく息を吸い込む。そして……。

 

 「…………きゃあああああ!!!」


 「ナ、ナンダ、この音は!?ぐぁぁ!」


 音魔法により、大量の死体とハイゴブリンは吹っ飛んでいった。


 「す、凄いよリーマ!」


 「へへん!」


 真緒に褒められて、胸を張るリーマ。


 「……クソっ!ふざけヤガって!!」


 ハイゴブリンはスキルでナイフを引き寄せてから、リーマに突っ込んでくる。今度はナイフを投げない、そのまま刺し殺すつもりだ。


 「死ねー!!」


 「駄目ですよ~感情的になってはいけませんね~」


 いつの間にか近くにエジタスが立っていた。


 「お、お前イツからソコにいた!?」


 「そんなのどうでもいいじゃないですか、それよりもスキル“滑稽な踊り”」


 「しまっ……!」


 エジタスのスキルによって、目が離せなくなってしまったハイゴブリン。


 「他の人ばかり見ては駄目ですよ~、私のことも見てくださ~い」


 「この……だっタラ、お前を先に殺すまデヨ!!!」


 ハイゴブリンは素早く標的を変え、エジタスに向かって、突っ込んできた。


 「成る程~、確かにいい判断ですね~ですがその攻撃が通じるのは……」


 エジタスは“パチン”と指を鳴らすと姿が一瞬で消えた。そして、少し離れた場所に現れた。


 「私以外の人の場合ですがね」


 「き、消エタ!?」


 突然目の前から消えたことに初めて、戸惑いを見せるハイゴブリン。


 「さぁ、マオさん。そろそろ痛みは、我慢できるようになったみたいですね。では、止めを刺してあげてください」


 エジタスがそう言うと、ハイゴブリンの背後に真緒が片手を怪我しつつ、両手で剣を握りしめて立っていた。


 「な、おま……!」


 ハイゴブリンが背後にいる真緒に気づくも、時既に遅し、真緒はスキルを発動させる。残り一回、ずっと打てるチャンスを伺っていた。


 「この俺様が人間ごトキに……!!」


 「これで終わりです!!!」

 

 「チ、チ、チクショー!!!!!」


 「スキル“ロストブレイク”!」


 眩い光と共にハイゴブリンの肉体はこの世から消滅した。


 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 荒く乱れた呼吸をしながら、真緒はステータスを確認する。


 

 HP 5/800



 「危なかった~……」


 ギリギリの戦い、油断してしまったせいもあるが、何とか倒すことが出来て、心の底から喜びが溢れだす。


 「私達の勝ちだーーー!!!」


 真緒はガッツポーズを空に突き上げ、勝利の喜びを表した。

次回 オオラカ村と笑わない少女 完結。


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