防具屋
12時更新出来た矢先にこれだよ……。
それでも、毎日更新は止めません。
カルド王国城下町。学生服の代わりになる服を新調しに、防具屋へと足を運ぶ真緒達。
「ここです」
「ここが…………」
そこは、前の武器屋と比較すると綺麗で、徹底的に整備された備品の数々は磨かれて輝いていた。武器屋との差は歴然であった。
「さぁ、入りましょうか」
エジタス達が入ると、七三分けの店主が出迎えた。
「いらっしゃいませ。本日は当店にお越しくださり、誠にありがとうございます」
七三分けの男は丁寧な口調で対応してくる。
「少し、店内を見させてもらっても、よろしいですか?」
「勿論ですとも、ご用の際は何なりとお申し付けください」
七三分けの男は、店の主人というより、何処かに仕える執事のような立ち振舞いで奥の方へと引っ込んだ。
「では、マオさんに合った服を探しましょう」
「「「「おおー!」」」」
エジタスと真緒達四人は、それぞれが似合うと思う服を選んでいく。
「マオぢゃん、ごれなんでいいんじゃねぇが?」
ハナコが選んだのは、ガッチガチに守られた全身鎧だった。
「うーん、それだと動きにくいし、何より脱ぐ時が大変そう……」
「ぞっがー、なら他のを探じで来るだ」
「うん、ありがとう」
ハナコが他の服を探すため離れると、今度はリーマがやって来る。
「マオさん、これなんてどう?」
「ん、どれどれ?」
リーマが選んだのは鎖帷子の鎧だった。
「動きやすくていいけど、ちょっと防御面が心配だね……」
「そうですか……分かりました。他にも何か無いか探して来ます」
「うん、ありがとう」
リーマが他の服を探すため離れると、今度はフォルスがやって来る。
「マオ、これなんてどうだ?」
「ん?」
フォルスが選んだのは布一枚の褌だった。
「これって褌じゃないですか!?着られる訳ないじゃないですか!」
「そうなのか?服なんてどれも同じだろ」
「それはフォルスさんだから、言えるんですよ!」
鳥人は基本、羽毛で全身覆われているので服は着ない。着るとしたら雄なら股の部分。雌なら胸も一緒に布で隠すだけである。
「そうか……なら他の物を探してくる」
「そうしてください!」
フォルスが他の服を探すため離れると、真緒は色々な意味で疲れてしまいため息が出る。
「はぁ~……」
「マ~オさん」
「あ、師匠」
気がつくとエジタスが横に立っていた。
「良いのは見つかりましたか?」
「いえ、それが全然……」
「そうでしたか~それなら、これなんてどうでしょう?」
そう言うとエジタスが取り出したのは、オーバーオールに腕と足の部分に綿を詰めたような膨らみのある服、と見たことあるデザインだった。それもそのはずこれは……
「師匠…… これって」
「はい、私の服と同じやつです」
「何処に売ってたんですか?」
「いえ、これは非売品です。なぜなら、私の私物ですから!」
「そうなんですか……」
「どうですか?気に入りましたか?」
しばらく見つめる真緒は、中々いいかもしれないと思う。しかし……。
「(ん、ちょっと待って……私物ってことは、これは師匠が着用していた服!?お、落ち着くのよ私!そんな汚いとかそういうのじゃなくて、だからこそ良いとかでもなく、ええっと…………)」
考えている内に、どんどん顔は赤く染まっていき、思考能力が低下した。
「あ、あのやっぱりいいです。私には早すぎるかと……」
「そうですか~残念です。では私は他の服を探してきますね」
「は、はい……ありがとうございます」
真緒は赤く染まった顔を、必死に隠そうと俯いたまま、エジタスを見送った。それから、数分後…………
ガチャ
店のドアが開く音が聞こえた。
「あーもう最悪、何で制服が認められないのよ!!」
「ほんとよねー」
「この世界には制服という概念が、存在しないんだから、仕方がないよ」
聞き覚えのある声。忘れようにも忘れられない、忌まわしい過去が甦る。
「いらっしゃいませ、本日は当店にお越しくださり、誠にありがとうございます」
店の主人が奥から出てきて対応する。
「嘘!?まじで?やっば!七三分けじゃん!今時そんなダサい髪型にするやついるんだ~」
「笑える」
「二人とも失礼だろう……すみません、不快な思いをさせてしまって」
「おきになさらず、自由に店内をご覧ください。ご用の際は何なりとお申し付けください」
そう言うと店の主人は奥へと入っていた。
「聖一さん、どんな服が似合うか一緒に選んでください!」
「あ、私も!」
「分かったから二人とも、もう少し静かにしようね」
「「はーい!」」
返事だけでもうるさい、愛子と舞子。あの二人だけには、今ここにいることはバレたくない。何とかやり過ごそうと身を潜める。
「マオぢゃーん、ごんなのはどうだぁ?」
「マオさん、こっちなんかもいいよ」
しかし、悲しいことに仲間達は、そんなことお構いなしに、話しかけてきてしまった。
「真緒だって…………?」
案の定、愛子と舞子はこちらに気づいた。
「真緒ーー!!!」
その中でも愛子は真緒を見るなり、杖を取り出して、魔法を唱えようとする。
「…………くっ!」
「いきなり魔法を放とうとするなんて、どういう了見だ?」
「フォルスさん!」
その直前で異変に気づいたフォルスが、愛子の杖を持つ手首を、掴んでいた。
「愛子!」
「離しなさいよ、この鳥ヤロー!」
「へぇ、俺を見ても驚かないんだな」
「ああ、僕達は事前にシーリャ…………王女様から、この世界に住む種族について、教えてもらっていたからね」
緊迫した状況の中、聖一は冷静に対処しようとする。
「愛子さん、舞子さん、一旦落ち着いて、ここは店の中だよ。こんなところで暴れたら迷惑だろ」
「…………ふん!」
愛子はフォルスの拘束を振りほどいた。
「今回は聖一さんに免じて許してあげる。でも、今度会ったときは只じゃおかないから……行くよ舞子!他の店で服を探すよ!」
「あ、待ってよ愛子。聖一さん行きましょう」
「先に行っててくれ、僕は少し話をしてから行くから……」
出ていった愛子を追いかける舞子。そして、その場に残った聖一。
「真緒さん、さっきは二人が悪いことをしたね。僕の方から謝らせてほしい、本当にすまなかった。」
聖一は頭を下げて真緒に謝った。
「聖一さんが悪い訳じゃありませんから、別に大丈夫ですよ」
「いや、この前の出来事の後、二人を問い詰めたら、あの財布を盗んだのは誤解だということが分かった。勘違いしてしまった僕にも責任がある。本当にすまなかった」
再び、頭を下げる聖一。
「分かりましたから、頭を上げてください」
「ありがとう、それで話は換わるんだけど……この前の出来事から薄々感じていたが、真緒さん。君は強くなっているね?」
「どうして分かったんですか!?」
「何となくかな?それで本題なんだけど、僕達の仲間にならないか?」
「!!!」
いきなりの勧誘。真緒自身、理解が追い付かない。
「元の世界の人同士、一緒に行動してた方がいいと思うけど、君さえ良ければどうだろう?」
「…………お断りします」
きっぱりと否定する真緒。
「理由を聞いてもいいかい?」
「私にはもう、誰よりも信頼できる、仲間がいるからです。」
聖一は辺りにいる真緒の仲間達を見回す。
「……そっか、いい仲間を持ったんだね。なら仕方ない、素直に諦めるとするよ。それじゃあ真緒さん、またどこかでお会いしましょう」
聖一は出ていった。その瞬間、真緒は体に残っていた緊張やストレスで膝をついてしまった。
「マオぢゃん!」
「マオさん!」
「マオ!」
「大丈夫ですか~?」
駆け寄る仲間達。
「大丈夫、少し疲れただけだから……少し休めば治る筈だよ。それよりみんな早く、服を選んでほしいかなっ」
「…………分かった」
四人はマオの体調を気にしつつ、服選びに専念した。
***
「本当にそれでいいんですか?」
「はい、これがいいです。皆が選んでくれた、この服を大切にします」
四人は真緒が体調を崩してから、一緒に話し合うようになり、全員で一つの服を選ぶことにした。三人が選んだのは魔物の素材で造られ、全身が鱗で形成された代物。軽くて丈夫、そんな鎧だった。
「ぞう言っでもらえると、嬉しいだぁ」
「選んだかいがあったな」
「とても似合っていますよ」
「皆……ありがとう」
各々が真緒の新しい服を褒めていると、パン!、とエジタスが両手を合わせる。
「それでは、マオさんの服も決まりましたので、早速出掛けたいところですが、今日はもう遅いです。出発は明日、時刻は早朝、場所はあの草原にしましょう。それまで各自で旅の準備を整えてください。じゃあ、解散!」
エジタスの言葉である者はポーションの店へと向かい、ある者は自宅へと向かい、ある者達は宿屋に向かった。そして、一人残されたエジタスは…………。
「では、そろそろ私も戻るとしましょうかね」
パチン、と指を鳴らし、魔王城へと向かった。
次回、第二章 勇者編 完結。
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