ハナコ&アルシア VS ジョッカー
今回から、ジョッカーとの戦いが始まります。
「あなたは確か……あたし達をこの魔王城から投げ飛ばした奴ね!!」
「あの時の借りを返ざぜで貰うだよぉ!!」
広大な白い部屋に足を踏み入れたハナコとアルシアは、目線の先で剣先を向けているジョッカーに対して、素早く攻撃の体制を取った。
「“奴”では無い!!私には“ジョッカー”という名前がある!!全く……これだから“異端者”は……礼儀がなっていない……」
「あなたこそ……あたし達の事を“異端者”“異端者”言っているけど、あたしには“アルシア”って言う大切な名前があるのよ!!」
「オラだっで、“ハナコ”っで言う名前があるだぁ!!“異端者”なんで呼ばれる筋合いは無いだぁ!!」
正式な名前を互いに呼ばない事から、両者は苛立ちを感じ始めた。
「ふん、我が神を崇めない貴様らの様な者達など、“異端者”という表現だけで充分だ!!」
「我が神……その我が神と言うのは…………」
「勿論、崇高なるお方“エジタス”様だ!!」
「やっぱり…………」
アルシアの素朴な問い掛けに、ジョッカーは予想通りの答えを返した。
「エジタス様こそ、この世界を治めるのに相応しいお方……それこそ、神に等しいのだ!!エジタス様に出会った私は、それまで信仰していた教を捨ててエジタスという新たな神を崇める事にしたのだ!!そんな素晴らしいエジタス様の計画を邪魔をする貴様らは、“異端者”としてこの場で私が葬り去ってくれる!!」
「“異端者”“異端者”っでざっぎがら…………アルシアざん?」
一人でベラベラと喋り倒すジョッカーに対して、更なる苛立ちを感じるハナコ。すると、アルシアがハナコよりも一歩前へと足を踏み出した。
「そう……あなたが“異端者”として呼びたいのなら、勝手に呼ぶといいわ。あたし達も、あなた如き相手に名前で呼ばれたく無いわ!!」
「アルシアざん……ぞうだぁ!!お前なんがに、オラ達の名前を呼ぶ資格は無いだぁ!!」
「っ!!!…………殺す」
するとジョッカーは剣を片手に、ハナコとアルシアの元へと駆け出して来た。
「来るわよ……ハナコちゃん?」
ジョッカーが迫り来る中、ハナコはアルシアの前へと飛び出した。
「アルシアざん、ごごはオラに任ぜで欲じいだぁ」
「駄目よ。油断していたとは言え、相手は一度私達を魔王城から放り投げた男……二人で戦うべきよ」
「アルシアざんは、魔食どの戦いで体力を消耗じでいる…………だがら、ごごはオラに任ぜで欲じいんだぁ。オラだっで、アルシアざんの役に立ぢだいだぁ」
「ハナコちゃん…………分かったわ。でも、油断だけは絶対にしないでね?」
「分がっだだぁ!!」
ハナコの気持ちを汲み取り、アルシアはハナコに任せる事にした。
「スキル“鋼鉄化”!!」
前に出たハナコは、スキル“鋼鉄化”を使い全身を鋼鉄に変化させた。ハナコの体が銀色に変色した。
「ごれで、どんな攻撃が来ようども無意味だぁ!!」
「ほぅ……全身を鋼鉄に変えたか……それなら、スキル“真・裁きの剣”!!」
全身を鋼鉄に変化させたハナコに対して、ジョッカーは走りながらジャンプした。そして跳びながら、片手に持っていた剣を両手に持ち変えると、胸の中心で縦に構えスキルを唱えた。その瞬間、ジョッカーの持っていた剣が眩い光に包まれた。
「はぁあああああ!!!」
そしてそのまま、眩い光に包まれた剣を鋼鉄に変化したハナコ目掛けて振り下ろした。すると、鋼鉄に変化した筈のハナコは意図も容易く斬られた。斬られた体から血は吹き出さなかったが、代わりに斬られた肉が焼け焦げていた。
「ぐわぁああああああ!!!」
「ハナコちゃん!!」
「ふはははは!!油断したな?」
「い、いっだい……どうじで……?」
鋼鉄に変化した筈なのに、斬られた事を疑問に感じたハナコは、ジョッカーを睨み付ける様に問い掛けた。
「鋼鉄になれば剣は通らないと思った様だが、残念だったな!!私のスキル“真・裁きの剣”は、斬るのでは無く滅するのだ!!…………以前は“裁きの剣”だけで、多くの吸血鬼達を滅していた……しかしある時、とある吸血鬼に不覚を取ってしまい、瀕死の状態に陥った。そんな私を、我が神エジタス様が助けて下さった!!そして、敗北を味わった私は“裁きの剣”を“真・裁きの剣”に進化させた!!“真・裁きの剣”は対象を滅するだけで無く、ありとあらゆる防御スキル、防御魔法を無視する事が出来るのだ!!私は、最強の矛を手にいれたのだ!!」
「“真・裁きの剣”…………厄介なスキルね…………ハナコちゃん、大丈夫?」
「な、何どが……」
「…………やっぱり、あたしも戦うわ」
「だ、大丈夫だ!!オラ一人でも倒せるだぁ!!ざっぎは油断じだだげ……あんなスキル……当だらなげればいいだげだぁ!!」
「ちょっと、ハナコちゃん!!」
アルシアの言葉を聞き入れず、ハナコは一人でジョッカーの元へと駆け寄り、攻撃を仕掛ける。
「うぉおおおおお!!スキル“インパクト・ベア”!!」
間合いを詰めたハナコは両腕を引くと、ジョッカー目掛けて渾身の一撃を叩き込んだ。
「スキル“罪の盾”」
「「!!?」」
しかし、そんなハナコの渾身の一撃はジョッカーに届かなかった。ハナコのスキルが当たる直前、ジョッカーが唱えたスキルによって、目の前に半透明な盾が出現した。ハナコのスキルは、ジョッカーが出現させたスキルによって、防がれてしまった。
「スキル“真・裁きの剣”」
「じ、じまっ……!!」
「ハナコちゃん!!」
防がれた事に対して、呆気に取られているとジョッカーは眩い光に包まれた剣で、隙だらけになったハナコを斬りつけた。
「ハナコちゃん、大丈夫!!?」
「うっ、うぅ…………だ、いじょう……ぶだぁ…………」
アルシアは、斬られて後ろへと吹き飛ばされたハナコを支えながら、安否を確かめる。出血こそはしていないが、満身創痍な状態だった。
「中々の攻撃スキルを持っているようだが、私のスキル“罪の盾”を破る事は出来ない。私は一度、完膚なきまでに敗北を喫した。そこから私は攻撃だけでは無く、防御も徹底しようと考えたのだ。この“罪の盾”は、罪を抱えている者達の攻撃を決して通さない。人はとても罪深き生き物だ…………つまり、この盾は誰にも破る事は出来ないのだ!!」
「…………ハナコちゃん、あなたはここで休んでいて……こいつは……あたしが片付ける……」
そう言うとアルシアは、ハナコを横にしてジョッカーの元へと歩み寄る。
「アルシアざん……ごごはオラが…………!!!」
手出しは無用。アルシアの背中から伝わる殺意に、ハナコは何も言えなくなってしまった。
「あたしは今、非常に怒っている…………大切な仲間が傷つけられて、非常に怒っている…………悪いけど、手加減は出来そうに無いから……そのつもりで……」
「仲間の敵討ちという訳か……いいだろう、貴様の全力を見せて…………!?」
その瞬間、ジョッカーの目の前からアルシアの姿が消えた。
「なっ!?き、消えただと……!?」
「…………後ろよ」
「!!!」
アルシアの姿を見失い、辺りを見回すジョッカー。すると、いつの間にか背後に回られていた。
「しまっ……防御が間に合わ……!!」
「スキル“衆合地獄”」
アルシアの黒刀が、ジョッカーの体に突き刺さる。
「“爆散”」
「!!!」
そう言うと、ジョッカーの体が爆発を起こした。爆発により煙が上がる。
「…………終わりよ」
アルシアは黒刀を仕舞うと、ハナコの側へと歩み寄る。
「……アルシアざん……結局オラ……何も出来ながっだ……アルシアざんに迷惑を掛げでじまっだだぁ……」
「ハナコちゃん…………」
落ち込むハナコの頭に、アルシアは手を乗せる。
「そんな気にしなくても大丈夫よ。あたしはハナコちゃんの事を、迷惑だなんて思っていないわ」
「アルシアざん…………」
アルシアに優しい言葉を掛けられるが、ハナコ自身は納得出来ていない様子だった。
「それじゃあ、先に進みましょうか。他の皆とも速く合流しない……「げほっ!!げほっ!!がはぁ!!」…………あら、まだ生きていたの?」
振り返ると、煙の中からジョッカーが姿を見せる。しかしその体は満身創痍で、左腕を失っていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……あ、危ない所だった……刺された瞬間、危険を察知して後ろへと跳んだ事で、死なずに済んだ…………」
「でも、爆発に巻き込まれて左腕を失った」
「黙れ!!油断さえしなければ、貴様の攻撃など当たらない!!」
「無理よ。あなたのスキルは優秀だけど、あなた自身の能力が低過ぎる。あたしの動きが見えなかったのも、そう言う理由……ハナコちゃん、あたしの動きが見えた?」
「えっ?……普通に見えだけども……アルシアざんが走るど、目の前でジャンプじで背後に回っでいだだぁ」
「ほらね、ハナコちゃんでも見えているのに、あなたは“消えた”と言った。明らかな実力不足よ」
「!!!」
突き付けられる現実。天と地の差、ジョッカーのスキルは優秀だが、ジョッカー自身の実力が伴っていなかった。
「あのまま、ハナコちゃんと戦ったとしても、あなたは確実に負けていた。もう諦めなさい」
「…………ふっ、ふふふ……ふはははははははは!!!」
「「!!?」」
突然のジョッカーの高笑いに、ハナコとアルシアは驚きの表情を浮かべる。
「そうだ……そうでなくては面白くない!!」
「何を言っているの……あなたの実力では……あたし達には……」
「さすが我が神だ……こうなる事を予見して、私に授けて下さったのですね!!」
そう言うとジョッカーは、持っていた剣を手放し、腰に携えてあったもう一本の剣を引き抜いた。
「我が神から授かった、この伝説の聖剣“フォアリーフ”!!これで貴様らを片付けて…………ひぎぃ!?」
「「!!?」」
ジョッカーが“フォアリーフ”を引き抜いて、高らかに宣言していると、突如奇声を発した。
「ぎっぎゃあ!?くごっ!?おげっ!?おぎょ!?が、ご、ぐ、げ、あ、ぐ、りゃ、ぐ………………」
「「…………」」
しばらくの間、奇声を発していたジョッカーだったが、次第に静かになり始め、“フォアリーフ”を握り締めながら俯いた。
「い、いったい……何がどうしたの……?」
「ざぁ……?」
「「!!!」」
すると、俯いていたジョッカーはゆっくりと顔を上げて目を開いた。しかしその両目は先程とは違い、四つ葉の模様が浮き出ていた。
「うーん、最初の体としては……中々の物ね……スキルや魔法が強くて、自身の実力は弱い……さすがはエジタス様、私にピッタリな人材ね」
「「…………」」
姿はジョッカーその物だが、声は透き通る様な美しい女性の声をしていた。
「でも……左腕を失ってしまったのは痛いわね……全く、実力不足にも程があるわ……」
「ちょ、ちょっとあなた!!?」
「ん?あぁ、ごめんなさい。初めての体だから興奮してて、あなた達の事を忘れていたわ」
独り言を喋るジョッカー?は、アルシアに声を掛けられると、初めて気が付いた様子を見せる。
「あ、あなた……誰なの……?」
「……私は“フォアリーフ”……エジタス様に仕える隠し刀よ……」
ジョッカーに勝利……と思いきや、ここでまさかの聖剣“フォアリーフ”が登場!?
次回、波乱の展開に乞うご期待!!
次回もお楽しみに!!
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