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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
最終章 笑顔の絶えない世界
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漆黒のドラゴン(中編)

最近忙しく、毎日更新が出来なくなりました。

一段落着いたら、再び毎日更新させて頂きますのでご了承お願いします。

 『はぁ……はぁ……』


 ラクウンのスキル“漆黒龍の威圧”によって、床に叩き落とされたシーラ。


 「だ、大丈夫か……シーラ?」


 『ん?……あぁ……何の問題も無い……』


 シーラは、側にいたフォルスに対して、心配の声を掛けられるまで気付かなかった。


 「俺も一緒に戦うぞ」


 『……これは私達ドラゴン同士の戦いだ……手助けはいらねえよ……』


 「だ、だけど…………」


 『それに……ラクウンの鱗はバカみたいに硬い……あんたの弓矢じゃ、かすり傷も与えられないよ……』


 「!!!」


 『まぁ、ここは私に任せておけ!!』


 フォルスからの申し出を断ると、シーラは翼を広げて、空中にいるラクウンの元まで飛んで行った。


 「(…………くそっ!!……くそっ!!……俺は……無力だ……)」


 一人地上に取り残されたフォルスは、俯きながら自身の力不足を嘆くのであった。




***




 『だぁあああああ!!!』


 翼を広げ、空中にいるラクウンの元まで飛んで行ったシーラ。


 『“ブレス”!!』


 飛びながらシーラは、ラクウン目掛けて口から炎を吐いた。


 『“ブレス”』


 対してラクウンも、口から真っ黒な炎を吐いて対抗する。


 『(ブレス対決か!!受けて立つぜ!!)』


 シーラのオレンジ色の炎と、ラクウンの真っ黒な炎がぶつかり合う。


 『(押し切れぇええええ!!!)』


 肺の空気を全部出し切る様に、吐く炎に力を注ぎ入れる。すると次第に、オレンジ色の炎が真っ黒な炎を押し始める。


 『(凄まじいパワーだ。さすがは“あの女”の末裔だ。並大抵のドラゴンなら押し負けていただろう…………だが、相手が悪かったな。我の相手にお前では力不足だ)』


 しかし、ラクウンが少し吐く炎に力を注ぎ入れると、あっという間に真っ黒な炎がオレンジ色の炎を押し返した。


 『(そ、そんな……!!?)』


 シーラが全力で炎を吐くも、意図も簡単にラクウンの炎に押し負けてしまう。そのまま押し返す事も出来ず、シーラの体はラクウンの炎に包まれた。


 『がぁあああああ!!!』


 体全体が焼け焦げる。細胞の一つ一つが死滅していくのを感じる。このままでは、死ぬのは確実だった。


 『くっ……くそぉおおおお!!』


 シーラは咄嗟の判断で、自身の翼を羽ばたかせて、周りの炎を吹き飛ばした。


 『ほぉ、あの炎を吹き飛ばすとは……翼を動かす背筋は良い様だな』


 『はぁ……はぁ……』


 炎を吹き飛ばし、何とか命を繋いだシーラだったが既に体は満身創痍だった。


 『“白銀龍のイカヅチ”!!』


 その瞬間、シーラの周りに暗雲が立ち込める。そしてその暗雲から、ラクウン目掛けて鋭いイカヅチが無数に放たれた。


 『“漆黒龍の暴風”』


 するとラクウンは、翼を同時に大きく羽ばたかせた。その瞬間、ラクウンの両脇に竜巻が生成された。二つの竜巻が中心で重なり合い、一つの巨大な竜巻を生み出した。


 『全てを飲み込むがいい……我が竜巻よ……』


 ラクウンの放った巨大な竜巻が、シーラの周りの暗雲を飲み込み、イカヅチそのものを掻き消してしまった。


 『これも駄目か!?それなら……“火球弾”!!』


 シーラは口を大きく開くと、肺から空気を一気に押し出し、ラクウン目掛けて巨大な火の玉を弾丸の様に発射した。先程の“ブレス”より持続時間は劣るものの、威力と速さは桁違いである。


 『これなら、お前のブレスも押し切れる筈だ!!』


 『…………憐れだな、白銀のドラゴンの末裔よ。見た目が違えど、我とお前は同じ種族であるドラゴン…………お前に出来て、我に出来ない事は無い!!“黒炎弾”!!』


 それに対してラクウンは口を大きく開くと、肺から空気を一気に押し出し、巨大な真っ黒な炎の玉を弾丸の様に発射した。発射された真っ黒な炎の玉は、シーラの発射した火の玉よりも大きく速かった。そしてラクウンの発射した真っ黒な炎の玉は、火の玉を打ち切りシーラへと直撃した。


 『がぁあああああ!!!』


 先程のブレスとは違う、濃縮された炎がシーラを襲った。鱗は溶け、中の肉が焼け落ちる。


 『勝負は決した。諦めるんだな、お前に勝ち目は無い』


 『…………勝ち目が無いかは私が決める……私は最後の最後まで諦めない…………』


 シーラの体は、見るに耐えない程に酷い有り様だった。白銀の鱗は黒ずみ、鱗の一部は溶けて無くなり肉が焼け落ちていた。そんな状態になりながらも、シーラは諦めずに飛び続けていた。


 『そうか……ならば死ね』


 するとラクウンは、翼を大きく広げてシーラの元へと飛んで来た。


 『(は、速い!!?ここは一旦、ガードするしかない!!)』


 シーラは咄嗟の判断で、両腕を交わらせてラクウンの攻撃に備えた。


 『…………そう言う判断しか出来ないから、お前は弱いのだ』


 そう言いながらラクウンは、シーラの元に来ると同時に一回転をし、自身の尻尾でシーラの両腕を弾いてガードを解いた。


 『し、尻尾だと!?』


 『相手の手の内が分からない中でのガードはとても危険だ。こうした対処がされてしまうからな』


 ガードが解かれ、両腕が上の方へと弾かれてしまったその瞬間、ラクウンの右手がシーラの喉元を掴んだ。


 『がぁ!!?』


 『これ以上の戦いは無意味だ。これで終わりにしてくれる』


 シーラは必死に、喉元からラクウンの右手を振りほどこうと力任せに引っ張ったりするが、びくともしなかった。


 『残念だ……“あの女”の末裔と言っても所詮この程度、我の相手では無い…………』


 『(ま、不味い!!本気で不味い!!このままだと、本当に首を絞められて殺されてしまう!!何とか、振りほどかないと…………!!)』


 シーラは無我夢中になって、喉元を掴むラクウンの右手を殴り始めた。しかし、まるで壁を殴っているかの様にびくともしなかった。


 『(……そ……くそ……くそっ……くそっ!……くそっ!!……くそっ!!!)』


 目から涙が溢れる。これから死ぬ事に恐怖してではない。たった一本の腕すら振りほどけない無力な自分が、非常に情けなく感じたからだ。死にもの狂いで努力して、やっとの思いで手に入れる事の出来た魔王軍四天王。しかし、その努力も目の前の巨大な敵には何の意味も無かった。今までの努力が全否定されるかの様に、ラクウンの右手が徐々にシーラの喉元を締め上げる。


 『(…………ここ……までか……魔王様……申し訳ありません……)』


 苦しい。空気を肺に取り込めず、意識が遠退く。シーラは素直に諦め、身を委ねる様に死を覚悟した。


 「スキル“一点集中”……貫け!!」


 その瞬間、地上から閃光の如く何かがラクウンの右腕を貫いた。貫かれた右腕には綺麗な穴が出来上がっていた。


 『ぐわぁああああ!!?』


 『げほっ!!げほっ!!げほっ!!はぁ……はぁ……はぁ……!!』


 あまりに突然の出来事に、一瞬何が起こったのか分からなかった。ラクウンは、咄嗟にシーラの喉元から右手を外して、穴の空いてしまった自身の右腕を押さえる。一方、ラクウンの右手が外れた事により、シーラは何とか死なずに済んだ。取り込めなかった空気を目一杯吸い込む。


 「おいおい、そこのドラゴンさん達よ。俺を忘れて貰っちゃ困るぜ」


 ラクウンの右腕を貫いたのは、一本の矢だった。そんな、ラクウンの右腕を貫く程の矢を放った人物は一人しかいない。その者は、地上からシーラとラクウンを見上げていた。


 『フォルス……!!』


 『き、貴様か!?我の右腕を貫いたのは!!?』


 シーラは、驚きの表情を浮かべながら地上にいるフォルスを見つめる。一方、右腕を貫かれたラクウンは、地上にいるフォルスを睨み付ける。


 「“窮鼠猫を噛む”って知ってるか?今から見せてやるよ…………圧倒的強者であるお前に、弱者である俺が勝利を収めるその姿をな!!」

フォルスの矢がラクウンの鱗を貫いた!!

希望の光が差す中、果たしてフォルスとシーラはラクウンに勝つ事が出来るのだろうか!?

次回もお楽しみに!!

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