リーマ&ゴルガ VS エピロ(中編)
追い詰められていくリーマとゴルガ、果たして二人はエピロに勝つ事が出来るのだろうか!?
「“少雷弾”」
「「!!!」」
エピロは十本の指先から、電気を帯びた無数の弾を放った。魔法を主に扱うリーマと巨大なゴーレムであるゴルガ、二人供走って避ける事など出来る訳も無かった。
「あああああ!!!」
「グッ……グガァアアアアア!!!」
リーマとゴルガを襲う無数の弾、痺れを通り越した痛みと肌を焼く程の高熱によって、徐々に苦しめられていく。
「はぁ……はぁ……私達だって……やられてばかりではいられません!!“炎の槍”」
すると、リーマの右手に赤々と燃え上がる炎の槍が生成された。
「やぁああああ!!!」
リーマは両手で炎の槍を握り締め、エピロへと攻撃を仕掛ける。
「“クラウドツリー”にいた時に見たけど、形の無い炎を精巧な槍に変えるだなんて、まるでアーメイデみたいだね」
「この!!この!!この!!」
右、左、右、左、左、右、左。間髪入れずに突きを叩き込むリーマ。しかしエピロは余裕の笑みを浮かべ、後ろへと下がりながら意図も簡単に避けてしまう。
「無駄だよ、私は雷魔法を扱える。それは即ち、私自身の速度も雷並みにする事が出来るという事なのよ。あなたの槍は止まって見えるわ」
「うぅ……この!!この!!」
エピロに煽られながらも、リーマは必死になってエピロ目掛けて、炎の槍を突き出していく。しかし、その度にエピロは余裕の笑みを浮かべ、後ろへと下がりながら意図も簡単に避けてしまう。
「あらあら、必死になっちゃって可愛いわね。私を倒したいのなら、もっと頭を使わないとね?」
「……えぇ、だから私なりに頭を使って見ました」
「!!?」
気が付くと、いつの間にかエピロの後ろにはゴルガが立っていた。
「ヨクキタナ、カンゲイスルゾ」
「これは……成る程、何の考えも無しに突いていた訳じゃ無いみたいだね…………」
リーマの突きを余裕で避けていた為、そこまで周りに意識が回っていなかったエピロ。リーマは槍を突きながら、エピロの避ける方向をゴルガのいる方向へと誘導していたのだ。
「エピロさんが雷魔法を扱うと知った時点で、その速度も雷の様に速く出来る筈だと思っていました。だからこそ、逃げられない様に退路を塞がせて貰いました。もう、逃げ場はありませんよ」
「…………少しはやる様ね……」
「これで……終わりです!!」
追い詰めた。リーマは炎の槍を握り締め直して、エピロ目掛けて突き刺そうとする。
「“少雷弾”」
しかし突き刺すよりも速く、エピロはリーマ目掛けて雷魔法を放った。エピロの十本の指先から、電気を帯びた無数の弾が放たれた。
「うっ……」
「残念だったわね。私に雷魔法がある限り、あなた達は……「うぉおおおおおお!!」…………!!?」
電気を帯びた無数の弾を浴びてしまったリーマだったが、痛みに耐えながらもエピロ目掛けて槍を突き出した。
「まさか……痛みに耐えながら攻撃するだなんて……だけど、痺れの影響で動きが遅くなっているわよ」
「しまった!!?」
何とか、エピロが放った“少雷弾”の痛みに耐えながら、攻撃を仕掛けたリーマ。しかし、電気を浴びた影響により動きが若干鈍ってしまった。そこに漬け込み、エピロはリーマを踏み台にして空中から脱出を図った。
「惜しかったわね。あなたの槍が雷より速かったら、私を倒せたかもしれないけど、それは無理な話ってもんよね」
「オイ、オレノコトヲ、ワスレテイルンジャナイノカ……」
空中へと脱出したエピロだったが、元々エピロの退路を塞いでいたのはゴルガである。ゴルガは、空中にいるエピロ目掛けて巨大な拳を放った。
「フンサイシテクレル!!」
「大丈夫よ。勿論、あなたの事も忘れていないわ……“雷弾”」
するとエピロは両手では無く、片手をゴルガに向けて構えた。そして雷魔法を唱えると、先程とは違い掌から無数では無いものの、“少雷弾”よりも数十倍大きい弾が放たれた。
「ナ、ナンダト!!?」
放たれた弾は、ゴルガの拳とぶつかり合い、激しい閃光を発した。そして次の瞬間、ゴルガの拳が脆く崩れ落ちた。
「グァアアアア!!オレノ、ウデガ…………!!」
「ゴルガさん!!」
「あはは!!残念だったね。今のは“雷弾”と言って、一発ずつしか放つ事は出来ないけど、“少雷弾”の十倍近い威力を放てるのよ」
片腕を失ったゴルガを心配して、リーマが駆け寄る中、エピロは余裕の笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
「くっ……“ウォーターキャノン”!!」
リーマは負けじと魔導書を開き、目の前に大きな水の塊を形成した。その塊をエピロ目掛けて放った。
「はぁー、“雷弾”」
対して、エピロは溜め息をつきながら、迫り来る水の塊に向けて片手を突き出し雷魔法を放った。すると水の塊は、雷魔法を受けて失速して床へと落下した。そして、落ちた水を伝って、雷魔法がリーマに直接届いた。
「そんな!!?きゃああああ!!!」
「お馬鹿ねぇ、水は電気を通しやすいって知らないの?」
「うっ……うぅ……」
軽率な行動を取ってしまったリーマ、傷ついた体に更なる追い討ちが加わる。
「あなた達では、私に勝つのは不可能なのよ」
「ま、まだ……終わっていません……諦めない限り……希望は潰えない!!“土の鎧”」
するとその瞬間、リーマの体を大量の土が覆い尽くす。土は次第に固くなり、まるで頑丈な鉄の様に変化した。
「“風の足”!!」
更に今度は、リーマの両足に蠢く風の塊が形成された。
「へぇー、そんな傷だらけの体で魔法を唱えるなんて……その根性だけは認めてあげるわ」
「余裕なのもここまでです!!土は電気を通しにくい!!これで、エピロさんの雷魔法も効果はありませんよ!!」
「それはそれは……そんなに言うのなら、掛かって来なさい」
「うぉおおおお!!」
“炎の槍”“土の鎧”“風の足”万全の準備を整え、リーマはエピロ目掛けて走り出した。
「“雷弾”」
「きゃああああ!!!」
しかし、通らないと思っていた電気がリーマの全身に流れ、襲い掛かった。
「そんな……どう……して……」
「本当にお馬鹿ね。確かに、土は電気を通しにくいと言われているわ。でもそれは、土に水が含まれていない時の場合のみなのよ」
「水…………はっ!!!」
リーマは気が付いた。エピロに攻撃を仕掛けようと走っている途中で、先程自身が放った“ウォーターキャノン”の水を踏んでしまっていた事を……その結果、土の鎧は微量だが水分を含んでしまったのだ。
「あはは、まさか自分の魔法に足を引っ張られるだなんて、最高にマヌケね!!」
「うぅ……くそ……くそ……」
悔しい。リーマは、自身の魔法が全く通用する処か、あまつさえ自身の魔法で自滅してしまった。悔しくて堪らない。
「もう諦めたらどう?あなた程度の魔法使いが、他の仲間達と合流しても足手まといになるだけよ?」
「(……確かに、エピロさんの言う通りかもしれない……こんな自分の魔法で自滅してしまう魔法使いなんて……必要無いよね……)」
「ソンナコトハナイ!!!」
「「!!?」」
エピロが諦めを促し、それを受け入れようとしていたリーマ。そんな中で、片腕を失ったゴルガが大声で否定する。
「リーマハ、オレガシッテイルナカデモ、サイコウノマホウツカイダ!!タサイナマホウヲアツカイ、ピンチヲクグリヌケテキタノダ!!」
「ゴルガさん…………」
「リーマ、モットジシンヲモテ!!オマエハ、コノオレヲタオシタノダゾ!!」
「…………はい!!」
ゴルガの言葉によって、自信を取り戻したリーマ。その目には闘志が宿る。
「はぁー、諦めが悪いわねー。どんなに自信があったとしても、この絶望的状況を覆すのは不可能よ?」
「(……エピロさんの言う事は最もだ……“土の鎧”も水を含んでしまっては、意味が無い……どうにかして電気に対抗する手段を考えないと……何か……何かないの……何か……)」
その時、リーマの脳内ではアーメイデとの修行がフラッシュバックしていた。
“いい?魔法に最も大切なのは、想像力よ。魔法には無限の可能性がある……固定概念に捕らわれず、想像力を豊かにしなさい”
「(固定概念に捕らわれず……そうか……そう言う事ですね!!)」
何かに気が付いたリーマは、魔導書を開いた。
「想像力……“ピュア・ウォーターキャノン”!!」
リーマの目の前に大きな水の塊が形成され、その塊はエピロ目掛けて飛んでいった。
「また水の塊?懲りないわね……言ったでしょ、水は電気を通しやすいのよ。“雷弾”」
迫り来る水の塊に、エピロは片手を突き出して雷魔法を唱えた。そして、掌から電気を帯びた大きな弾を、迫り来る水の塊目掛けて放った。
「うげっ!!?」
すると、雷魔法を受けた水の塊は失速する事無く、その勢いのままエピロへと直撃し、エピロは吹っ飛ばされた。
「ア、アタッタ…………!!?」
「な、何が起こったの……確かに雷魔法を当てた筈なのに…………!!?」
「やっと……希望が見えて来ました……」
これによって、エピロから余裕の笑みは消え、代わりに今度はリーマが希望の笑みを見せる事となった。
遂に見えた希望の光。次回、この戦いに決着がつきます!!
勝つのはどちらなのか!?
次回もお楽しみに!!
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