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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
最終章 笑顔の絶えない世界
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エジタスと愉快な仲間達

今回からエジタスが本格的に動き出します!!

ラクウン、ジョッカー、エピロの考えにも注目して見て下さい!!

 「エピロさん…………」


 “実験体M-001”が倒された事に苛立ちを覚える中、エジタスは“雷魔法”で洗脳を続けているエピロに声を掛けた。


 「は、はい、何でしょうか……?」


 エジタスから感じられるとてつもない殺意に対して、エピロは息を呑んだ。


 「クロウトさんへの洗脳は……後どの位で済みますか?」


 「えっ、そ、そう……ですね……大体…………」


 エピロは、言葉を慎重に選ぼうとしていた。今のエジタスに下手な事を言って機嫌を損ねられたら、それこそ跡形も無く消滅させられてしまう。


 「さ、最低でも、一時間程になるかと思われます…………」


 「…………そうですか……」


 「(や、やってしまったか!?)」


 「(……助け船を出した方が良いのだろうか?)」


 各々の思考が交差する中、静寂が場を支配し、玉座の間全体に緊張が走った。


 「も、もっと早くとお望みであるならば、三十分短縮させて見せます!!」


 「…………」


 エピロの熱意に、エジタスは全く反応しない。選択を誤ってしまったのか、エピロの脳裏に不安が過る。


 「分かりました。ここは私が、エピロさんの代わりに洗脳の続きを執り行いましょう」


 「…………えっ?」


 しかし返って来た言葉は、予想外のものであった。エジタスはなんと、クロウトへの洗脳をエピロに代わって行うと言い出したのだ。


 「私が洗脳を行っている間、あなた達三人はこちらに向かって来る八人を食い止めて下さい」


 「し、しかし、エジタス様……それはいくら何でも…………」


 洗脳はエピロにとっての専売特許、そう簡単に出来る技術では無く、いくらエジタスの命令とは言え、そう簡単に渡す訳にも行かなかった。


 「エピロさん、あなたが言いたい事は分かりますよ。“雷魔法”が扱えないから、私では脳を刺激して洗脳する事が出来ないだろうと…………」


 「い、いえ決してそんな事は………!!!」


 「遠慮しなくても良いんですよ……確かに私は“雷魔法”を扱う事は出来ません…………それでどうやって洗脳するつもりなのか、疑問に思うのは当然の事かと思います……」


 エジタスは、エピロが感じている一抹の不安に対して肯定の意を示した。


 「……ですが、それは逆にこうも考えられる……脳に刺激さえ与える事が出来れば別に“雷魔法”で無くても、洗脳するのは可能なのではないか?」


 「エジタス様…………」


 確かに理論上は可能かもしれない。しかし、これはあくまでも可能性の問題であって、必ずしも成功するとは限らない。


 「し、しかし我が神よ……憶測で物事を進めるのは、非常に危険です……」


 ジョッカーは、失敗した時のリスクを考慮して、エジタスを止めに入った。


 「…………時間が無いんですよ……このままでは数十分もしない内に、必ずマオさん達は合流を果たし、この玉座の間に現れるでしょう。そうなってしまっては、私の計画はかなり危ぶまれてしまいます。そうならない為にも、あなた達三人が時間を稼いで下さい」


 「し、しかし…………」


 「それとも……他に良い方法があるとでも…………?」


 「!!…………いえ、ありません……」


 エジタスの威圧と他にアイデアが思い浮かばない事によって、ジョッカーは完全に黙り込んでしまった。


 「それじゃあ、早速取り掛かって見ましょうか。エピロさん、代わって下さい」


 「は、はい…………」


 エピロは、言われるがままにエジタスと代わった。


 「私は“雷魔法”は扱えませんが、“空間魔法”なら扱えます」


 そう言うとエジタスは、両手をクロウトの頭に乗せた。


 「“空間把握”」


 「あがぁ………!!……がぁ……!!!」


 エジタスが魔法を唱えた瞬間、クロウトの口から小さな悲鳴が漏れた。


 「エジタス様……これは……?」


 「脳内の空間を把握して、この先何処を刺激すれば、より洗脳を効率良く進められるのか調べているのですよ。そして、何処を刺激すれば良いのか調べ終わった後、その部分だけの空間を圧縮して脳に刺激を与える事で、擬似的に洗脳出来るという訳です。これが、“雷魔法”ではない“空間魔法”を使った洗脳方法なのです」


 「す……凄い……」


 洗脳を専売特許にしていたエピロは、エジタスの新たな洗脳方法を目の当たりにして驚きを隠せなかった。


 「さすがは我が王です」


 「…………」


 ラクウンは、まるでこうなる事を予想していたかの様に、平然とエジタスを褒め称えた。一方ジョッカーは、あまりの出来事に声すら出せなかった。


 「脳内の空間を把握するのに五分、洗脳に十五分、合わせて約二十分程で洗脳が完了するでしょう。その間の時間稼ぎは頼みましたよ」


 「かしこまりました。ジョッカーさん、エピロさん、行きますよ」


 「えっ、あっ、ちょっとラクウン待てよ!?」


 「エジタス様、行って来ます」


 「はい、行ってらっしゃい」


 エジタスの命令に従い、ラクウンはジョッカーとエピロの二人を引き連れ、玉座の間を後にした。




***




 「いやー、凄かったわね。まさか私の得意な洗脳を意図も簡単に再現してしまうとは……さすがはエジタス様だわ!!」


 ラクウン、ジョッカー、エピロの三人が歩いている中、エピロはエジタスの凄さを褒めちぎっていた。


 「本当だなぁ……不可能を可能とするまさに神の如し尊きお方だ。やはり、我が神を崇める組織を立ち上げようか…………」


 「ジョッカーさん、とても魅力的なお話ですが、そろそろ気を引き締めて下さい。もうすぐ“分かれ道”に差し掛かりますよ」


 ジョッカーが、エジタスを崇める組織を立ち上げようか真剣に悩んでいると、ラクウンが声を掛けた。


 「ラクウン、お前は感じなかったのか?あの我が神の凄さを!!?」


 「そうよ?エジタス様の素晴らしさを、あなたも感じた筈でしょ?」


 「えぇ、勿論感じましたよ。只、そこまで大袈裟に騒ぐ事でしょうか?」


 「何だと……ラクウン、それはどう言う意味だ」


 「エジタス様の素晴らしさを、大袈裟に表現して何がいけないの」


 一触即発の雰囲気。エジタスを尊敬するからこそ、ラクウンの言葉が引っ掛かったジョッカーとエピロ。


 「どう言う意味も何も、この位の芸当は我が王にとって、当たり前の事じゃないかと言っているのです」


 「「!!!」」


 「それもまるで、奇跡みたいに騒ぎ立てて…………我が王は、奇跡などというそんな曖昧なものには頼らないのです。よく覚えておきなさい」


 「「…………」」


 何も言い返せなかった。エジタスの事を尊敬しておきながら、エジタスの実力を勝手に決めつけていた。そんな身勝手な自分を、恥ずかしく思うジョッカーとエピロ。


 「それと……勘違いされていますが……我が王が凄いのは力ではありませんよ……」


 「「えっ!?」」


 「確かに、我が王は私達とは比べ物にならない程の強さを持っています。しかし、我が王の最も凄い所はどんなアクシデントが起きようとも、即座に対応できるという事です。予想もつかない事態が起こったとしても、それを予期していたかの様に対処される……我が王は適応能力が尋常ではないのです」


 「「…………」」


 ジョッカーとエピロは驚きのあまり、瞬きするのを忘れてしまっていた。


 「(……我が神に最も長く仕えているラクウン……凄まじい洞察力……くそっ!!もう少し長く我が神に仕えていれば…………俺だって!!)」


 「(全く……末恐ろしいわね……私でさえ千年近くエジタス様に仕えているけど、未だにエジタス様の性格を完全に理解しきれていない……それなのに、ラクウンはそれをさも当然の如く理解している……いったい何者なの?)」


 二人はラクウンを、エジタスに対する嫉妬の目で睨み付ける。


 「さぁ、着きましたよ」


 「「!!!」」


 そうこうしている内に、三人の目の前に三つに分かれた扉が見えて来た。


 「この三つの扉は、我が王が私達の為に用意して下さったものです。この三つの扉を通る事で、我が王の計画を邪魔する者達が通る部屋へと、行く事が出来ます。但し、誰が誰と戦う事になるかは不明です。お二人供、準備はよろしいですか?」


 「何も問題は無い。俺には我が神のご加護が付いている。負けるなどあり得ない」


 「まぁ、私は誰でもいいけど強いて言うなら、リーマちゃんかなー。魔法使い同士、興味があるんだよねー」


 そう言いながらラクウンは左の扉、ジョッカーは右の扉、エピロは真ん中の扉へと足を運んだ。


 「ではお二人供、ご武運を……」


 「奴等に思い知らせてやるのだ。我が神に逆らったら、どうなるのかを!!」


 「さぁーて、私の相手は誰になるのかなー」


 そうして三人はエジタスの命令の元、真緒達を食い止めに向かったのであった。

遂に動き出した三人。果たして、誰が誰と戦う事になるのだろうか!?

次回もお楽しみに!!

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