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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第十章 冒険編 魔王と勇者
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笑顔にする方法

今回、第十章完結です!!


 「「「「「「うわぁああああああああああああ!!!」」」」」」」


 ジョッカーのスキル“セーフティーリング”の能力によって、身動きが取れなくなってしまった九人は、そのまま玉座の間の窓から勢い良く、外に放り出されてしまった。そして、魔王城から数キロ離れた所で徐々に勢いが弱まり、地面に落下しようとしていた。


 「ま、不味い!!このままだと、地面に激突してしまう!!」


 「そうはさせるかよ!!スキル“竜の雄叫び”!!」


 地面に激突する寸前、シーラは鼻から大きく息を吸い込み、腹の底から雄叫びをあげた。その瞬間、落下する勢いと相殺されて無事に地面へと着地する事が出来た。


 「あ、危ながっだだぁ…………」


 「シーラ、ありがとう……」


 「へへ、礼には及ばねぇよ……」


 すると地面に着地して数秒後、一分経ったのかセーフティーリングが解除され、身動きが取れる様になった。


 「や、やっと動ける様になりました…………」


 「マサカココマデノ、コウソクリョクガアルトハナ…………」


 「くそっ!エジタスの奴…………」


 「あのエジタスさんが、俺達を騙していただなんて……未だに信じられない…………」


 「ちょっと!!感傷に浸るのは構わないけど、今は二人の回復が優先でしょ!!」


 「マオぢゃん!!大丈夫だがぁ!?」


 「「「「!!!」」」」


 エジタスによる突然の裏切りに、未だ頭の整理が出来ていなかった四人だが、それよりも重要な真緒とサタニアの回復によって、我に返る事が出来た。


 「誰か回復魔法を扱える人はいないの!?」


 「「「「「…………」」」」」


 「そう……やっぱりそうよね……」


 アルシアは残された希望に賭けたが、結果は惨敗。誰一人として、回復魔法を扱える者はいなかった。しかし、その時だった。


 「“オールライフ”」


 突如、八人の周りをピンクのドーム状が包み込んだ。そして瞬く間に、八人が負っていた傷が塞がり回復した。それはリーマの骨折や、ハナコの骨に入ったひびを治してしまう程の回復だった。


 「「う……うぅん…………」」


 「「「マオ!!」」」


 「「「魔王様!!」」」


 傷が癒え、痺れも取れた真緒とサタニアは、ゆっくりと体を起こした。そんな二人の側に六人が近寄る。


 「ご、ごめんね皆……迷惑を掛けちゃって……」


 「何を言っているんですか!?マオさんは何も悪くありませんよ!!」


 「その通りだ!お前は俺達の誰よりも頑張っていたじゃないか!!」


 「マオぢゃんが無事で本当に良がっだだぁ!オラ、ずっど生ぎだ心地がじながっだよぉ!!」


 真緒の無事に安堵する三人だが、その真緒本人は何処か落ち込んだ雰囲気であった。


 「皆……僕の我が儘に付き合ってくれてありがとう…………こんな結果になってごめんね……」


 「オレタチハ、オレタチノイシデ、タタカッタダケデス!!」


 「そうです!魔王様が謝る必要は全くありません!!」


 「魔王ちゃんが無事で、本当に良かったわ!!」


 サタニアの無事に安堵する三人だが、真緒と同じ様にサタニア本人は、何処か落ち込んだ雰囲気であった。


 「師匠……いったい……どうして……」


 「エジタス……どうして……何で……」


 「「「「「「…………」」」」」」


 真緒とサタニアは、エジタスの事で落ち込んでいた。無理もない、心から愛する大切な人に裏切られたのだ。その心に付いてしまった傷の深さは、想像もつかない。そんな二人に対して六人は、掛ける言葉が見つからなかった。


 「しかし……いったい誰が治療してくれたんだ?」


 「…………まさか!!?」


 その瞬間、治療した人物の存在に全員が気が付き、ゆっくり振り返った。するとそこにいたのは…………。


 「…………これが罪滅ぼしになるとは思っていないけど……今の私には、これ位しか出来ないから……その……」


 「アーメイデ……てめぇ……!!」


 真緒達とサタニア達の傷を回復させたアーメイデに、シーラが恐ろしい剣幕で歩み寄る。


 「ちょっと、どうするつもり?」


 しかしその歩みを、アルシアがシーラの肩を掴む事で食い止める。


 「決まっている!!このクソヤローをぶっ殺すんだよ!!こいつのせいで、魔王様は死にかけたんだぞ!!いつまた殺しに来るとも分からない……それならここで息の根を止めた方が安心だろ!!」


 「でもだからって、殺すのは…………」


 「俺もシーラの意見に賛成だ」


 「フォルスさん!!?」


 シーラが、真緒とサタニアを危険な目に遭わせたアーメイデを殺すべきだと提案すると、フォルスもそれに賛成した。


 「考えても見ろ。このまま生かしておいたら、また必ずマオと魔王を殺しに来る。エジタスさんの目的とやらを阻止する為にな…………」


 「でも……だからってそんな……」


 シーラとフォルス、二人の過激的な発言に他の者達は動揺を隠せなかった。


 「フォルスさん、アーメイデさんを殺さないで下さい……」


 「シーラも、そんな簡単に殺すなんて言葉を使っちゃ駄目だよ……」


 そんな中、アーメイデに殺され掛けた真緒とサタニアの二人は、フォルスとシーラを説得する。


 「マオ、正気か!?こいつはお前を殺そうとしていたんだぞ!!」


 「そうですよ魔王様!!魔王様の命を狙った奴を許すだなんて、私には出来ません!!」


 「別に許すだなんて、一言も言っていないよ」


 「只、事情も何も聞かずに殺すのは、あまりにも理不尽過ぎると言っているんです」


 「「…………」」


 一理あった。頭に血が上り、冷静な判断が出来なくなっていたフォルスとシーラだったが、真緒とサタニアの説得により、少しずつ落ち着きを取り戻した。


 「マオさんの言う通りです!!私達に修行を付けてくれたアーメイデさんが、理由も無しにマオさんを殺す訳がありません!!」


 「そうねぇ、恐らくそれ相応の理由があるのは確かだと思うけど…………でも、二人の意見も完全に否定する事は出来ない……そこであなたには悪いけどしばらくの間、拘束させて貰ってもいいかしら?」


 「えぇ、こちらからもお願いするわ。自分でも今何をしでかすか、分からないの…………」


 アーメイデからの要望もあり、アルシアは徐に腰に添えた両刀を抜いて、アーメイデに向けて構えた。


 「…………スキル“黒縄地獄”」


 その瞬間、アーメイデの影が突如として動き始め、瞬く間にアーメイデの体を拘束した。


 「“黒縄地獄”……対象の影を操り、拘束する事が出来る。これでしばらくの間は動けない筈よ……」


 「悪いわね……ここまでして貰って…………」


 「アーメイデさん、教えて下さい。何故、私達を殺そうとしたのですか?」


 「それともう一つ、あなたとエジタスの会話を聞いていましたが、以前より面識があった様に感じました。その事についても詳しく教えて下さい」


 自身の影に拘束され、身動きが取れないアーメイデに、真緒とサタニアが問い掛けて来た。


 「…………そうだね、こうなっては仕方ないか…………分かった、全てを話すよ…………まず、エジタスが何故あんた達を裏切ったのか。そこから話す事にしようか……」


 「「「「!!!」」」」


 それは真緒達とサタニア達にとって、最も知りたい事であった。何故エジタスが勇者と魔王、両者を裏切ったのか。


 「あいつは……自身の目的を遂行する為に、ずっと利用していたのさ……」


 「!!…………その、目的と言うのは…………?」


 「この世界を“笑顔の絶えない世界”に作り変える事だよ」


 「…………度々口にしていたけど、エジタスはどうやって“笑顔の絶えない世界”に作り変えるつもりなの?」


 世界を作り変える。そんな神にしか出来ない様な行為を、エジタスはどうやって行うのか、全員が気になっていた。


 「…………“人類統一化計画”」


 「「「「…………えっ?」」」」


 「エジタスはワールドクラウンを使って人類を……統一させようとしていた……」


 「ちょ、ちょっと待って下さい!!人類を統一と言っても、具体的にどうするつもりなんですか!?」


 世界から人類に置き換わり、そのスケールの大きさから真緒達とサタニア達は、理解を追い付かせるのでやっとだった。


 「…………そうだね、具体的にする為にもその前に、私の身の上話を聞いて貰おうか…………私とエジタスと初代勇者“サイトウ コウスケ”が同じパーティーで旅をしていた頃の話を…………」


 「「「「!!?」」」


 「し、師匠とアーメイデさんが……同じパーティーだった……?」


 「しかも、初代勇者と同じ…………?」


 次々と明かされていく衝撃の事実に、真緒達とサタニア達の脳内は情報が処理しきれず、破裂寸前だった。


 「それじゃあ……まずは私とエジタスとコウスケが、初めて会った時の事から話そうか…………そう、あれは丁度二千年前、酷く嵐が吹き荒れる真夜中の事だった…………」

次回から二千年前のアーメイデ、エジタス、初代勇者。三人の過去編に突入します!!

次回もお楽しみに!!

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