エジタスの実力
今回、エジタスの実力が少しだけ垣間見る事になるでしょう。
「四天王の好みだ、殺しはしない。だが、魔王様を傷付けた償いとして、しばらく動けない体になって貰うからな」
「エジタスさん……今の話が本当だとするなら俺は、あなたを決して許しません。シーラの意見と同じで、殺しはしません。だけど、少し痛い目に合って貰います」
そう言うとシーラはエジタスにゆっくりと近づき、フォルスはシーラの後ろから弓を構えて、援護の体制を取る。
「…………“殺す”とか“殺さない”とか、あなた達は強者にでもなったつもりですか?」
「「!!」」
その瞬間、エジタスはその場から姿を消した。そして、瞬く間にフォルスの背後へと転移して来た。
「は、早い!!」
突然背後に現れたエジタスに、フォルスは反応が遅れてしまい、腹部に重たい蹴りをまともに食らってしまった。
「がはぁ!!」
「フォルス!!」
「そもそも、この世に強者という概念は存在しません。生まれたての赤ん坊からすれば、全ての生物が強者になります。強者の基準とはつまり、他者から認められる事で始めて成立するものなのです」
エジタスが、自身の考える強者の概念について語っている中で、重たい蹴りをまともに食らってしまったフォルスは、シーラの側まで吹き飛ばされた。
「それなのにあなた達は、まるで自身が強者であるかの様に殺す、殺さないの選択をしようとしている…………そういうの“自己顕示欲の塊”って言うのですよ?」
「!!」
その瞬間、またしてもエジタスはその場から姿を消した。そして、瞬く間にシーラの目の前へと転移して来た。
「しまっ…………!!」
突然の転移に反応が遅れてしまったシーラは、顎に強烈なアッパーを食らってしまった。
「ぐふっ!!」
「その欲はいつしか、身を滅ぼす事になりますよ」
殴られた衝撃で顎の骨にひびが入り、口の中から出血した。
「シーラ!!大丈夫か!?」
「ゆ、指を鳴らしていないのに……どうして、転移出来ているんだ……?」
殴られた事を心配するフォルスを他所に、シーラは殴られた顎を押さえながら、エジタスが指を鳴らさずに転移している事を疑問に感じていた。
「何か勘違いしている様ですが、本来私は指を鳴らさなくても、転移する事が出来ますけど?」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
エジタスの口から告げられた衝撃の事実に二人は勿論、他の六人も驚きの表情を隠せなかった。
「じゃあ……何故わざわざ指を鳴らして……転移していたんだ?」
「あぁ、その方が見映えがよろしくなるというか、インスピレーションが働くのですよ」
「み、見映え……インスピレーション……そんな理由で…………」
つまりエジタスの転移には本来、指をパチンと鳴らすなどの前動作は必要無く、完全な奇襲を可能とする技であるという事だ。
「そんな……そんな、常識外れな技が存在してたまるか!!」
しかしシーラは、エジタスの話を信じる事が出来ず、再び槍を構えてエジタスに襲い掛かる。
「シーラ!!」
「うぉおおおおお!!!」
「全く……人の言う事も素直に信じられないとは……シーラさん、あなたという人はとても……嘆かわしいですね」
そう言うとエジタスは、一瞬でその場から姿を消した。
「後ろか!!?」
「残念、上です」
シーラは、エジタスが転移して来る所を後ろだと予測して、素早く振り返るもそこにはエジタスの姿は無く、実際は真上に転移してシーラの脳天目掛けて、かかとを振り下ろした。
「がぁあああ!!!」
「シーラ!!」
二度に渡って頭部に多大なダメージを負ってしまったシーラは、そのまま仰向けに倒れた。
「くそっ!!」
倒れてしまったシーラの仇を打つ為、フォルスは空中に舞い上がり、エジタス目掛けて弓を構える。
「“三連弓”!!」
放たれた三連続の矢は、エジタス目掛けて真っ直ぐに飛んで行く。
「転移は連続して使う事が出来ない……つまり、今のエジタスさんになら俺の攻撃も通る筈だ!!」
転移直後を狙ったフォルスの作戦、転移する事が出来ないエジタスならば、避けられる心配も反撃を食らう心配も無い。
「…………」
するとエジタスは、徐に服の袖から食事用のナイフを取り出して、飛んで来る三本の矢を器用に弾き返した。
「な、何!!?」
避けるのでも無く、反撃するのでも無い。フォルスが放った矢を弾き返すという、第三の選択に呆気に取られてフォルスは反応するのが数秒遅れてしまった。その結果、弾き返された三本の矢はフォルスの両方の翼に突き刺さった。
「ぐわぁあああ!!!」
突き刺さった矢の痛みから、フォルスはそのまま地上へと落下してしまった。
「うぐっ…………!!」
また、床に激突した衝撃から更に傷を負う事になってしまった。
「やれやれ……私はこの世界を“笑顔の絶えない世界”にしようとしているだけなのに、何故あなた達と戦わないといけないのですか?」
そう言いながらエジタスは、シーラとフォルスを横切り、玉座の前まで歩み寄った。
「シーラさんやフォルスさんの様に痛い目に合いたくなければ、これ以上私の計画を邪魔しないで下さい。そうすれば、結果的に皆さんは幸せになれるのですから…………」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
フォルスとシーラの二人を、あっさりと倒してしまったエジタスに、その場にいる全員は呆気に取られて、何も言う事が出来なかった。そんな様子にエジタスは、無言は肯定と同じ意味であると捉えて、光の王冠と闇の王冠を空中に浮かび上がらせた。
「お、王冠が……浮いてる……!?」
「何も不思議な事ではありませんよ。私の空間魔法で、それぞれ王冠周りの空間を持ち上げているだけに過ぎません」
二つの王冠が、ある程度の高さまで浮かび上がると動きが止まった。
「……遂に……遂に……この時がやって来ました……今こそ!!全ての王冠が揃う時です!!“マーキングコレクション”!!!」
するとエジタスは見映えを良くする為なのか、インスピレーションを働かせる為なのか、転移する時と同じ様に指をパチンと鳴らした。
圧倒的、フォルスとシーラをまるで赤子の手をひねるかの様にあっさりと倒してしまった。
そして次回、遂に六つの王冠が揃う事となります!!
次回もお楽しみに!!
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