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奴隷

今回から仲間集めがスタートです。

 カルド王国城下町。人々が行き交い、活気に満ち溢れているこの場所で、真緒は腕組みをして考えながら歩いていた。


 「(仲間、仲間、仲間と言ってもどの基準から仲間になるのか、いまいちよく分かりません……。一緒に食事をしたら仲間なのでしょうか、それとも一つの物事に共感できることでしょうか……。うーん、仲間って考えれば考えるほど分からなくなってきます)」


 しばらく、その辺をウロウロしながら仲間の定義について必死に考える。しかし、答えが出ることはなく只時間だけが過ぎていった。


 「はぁー、どうしましょう。いくら期限が無いと分かっていてもこのままじゃ仲間集めだけで、おばあちゃんになってしまいます。そもそも、三人なんて数そう都合よくいる訳ないじゃないですか…………ん、三人?」


 三人。その単語にどこか引っ掛かる真緒。


 「三人…………何か忘れているような……まぁ、忘れてるってことは大したことではないのかな。それより仲間集め、仲間集め」




***




 「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。真緒の奴絶対に殺してやる!」


 「私達に恥をかかせたんだ。それ以上の屈辱を与えてやる!」


 カルド城の城内では荒れに荒れていた。愛子と舞子の二人が真緒に恨みを晴らそうと燃えていた。


 「まぁまぁ二人とも落ち着いて、真緒さんにも悪気があった訳じゃないんだから……」


 「いえ、今回ばかりは聖一さんの言葉でも受け入れられません」


 「それほど頭にきているんです」


 「君達の気持ちは分かる。だけど女の子なんだから、そんな簡単に殺すなんて言っちゃ駄目だ。」


 女だから駄目というのは完全な偏見であるが、この一言で納得させてしまうのが聖一の恐ろしい一面でもある。


 「聖一さん…………分かりました」


 「聖一さんが言うなら…………」


 「分かってくれて嬉しいよ。さぁ、訓練を「セイイチ様」……」


 訓練を再開しようとするとシーリャが聖一に声を掛けた。


 「シーリャ、どうしたんだいこんなところで……確か今日は各著名人とのパーティーのはずじゃ…………」


 「セイイチ様に会いたくて抜け出してきてしまいました。よろしければその辺を、一緒に散歩してくださいませんか?」

 

 「いいよ。僕で良ければ喜んで。それじゃあ二人とも、訓練は帰ってきてからでもいいかな?」


 「どうぞどうぞ、ごゆっくり」


 「私達はここで待っていますから」


 「ありがとう、行こうシーリャ」


 「はい」


 そう言うと聖一とシーリャは部屋を出ていった。


 「…………あの女、いい加減にしろよ!!」


 「毎度毎度、聖一さんを連れ出しやがって……王女だからって調子乗んじゃねーよ!!」


 こうして、聖一は着実に地位を向上させ、愛子と舞子は再び怒りの炎に身を包むのであった。




***




 「やっぱり見つからないなー」


 あれから数日が経ち、未だ真緒の仲間集めは難航していた。


 「うーん、どうしたらいいんだろう…………」


 真緒は悩みながら、どんどん城下町の奥の人気がない場所に入って行った。


 「こんなところがあったんですね」


 真緒は今まで来たことがない場所に、少し探検気分で進んで行く。


 「…………ん、ここって?」


 しばらく歩いていると、目立たないようにひっそりと立つ店を見つけた。その店の名前が『Human Shop』と書かれており、直訳すると“人間店”になる。いったいどんな物が売られているのか気になった真緒は、その店に入ってみることにした。




***




 店に入るとそこは薄暗く、埃っぽかった。奥には檻のような鉄格子がいくつもあり、その手前にターバンを巻いた小太りの男が座っていた。男は気づくと歯をむき出しにするぐらいの笑顔でこちらに近寄ってきた。


 「奴隷取り扱い専門店へようこそ」


 「奴隷、ですか…………」


 真緒は顔を歪ませて不快な気持ちになった。


 「ご安心ください。奴隷といっても当店で扱っているのは、皆健全な理由の子達ばかりです」


 元の世界でも奴隷という存在はあったが、異世界に来てもこういうのは無くならないのだなと思う真緒だった。


 「……例えばどんな子ですか?」


 「そうですね、例えば……」


 すると店主は近くの檻に入っていた男の子の前に立つ。


 「この子は小さい頃両親に先立たれて、いく場所が無かったためウチで扱うことになりました」


 次にその隣の檻に入っている三十代後半の女性の前に立つ。


 「彼女は結婚していた夫に裏切られて、自殺しようとしたところを止められ、巡り巡ってウチで扱うことになりました。どうでしょう?こんな感じでウチはクリーンな仕事を心掛けています」


 奴隷を売っている時点でクリーンではないのでは……と思う真緒だが、売られている奴隷を見てみると絶望しているような人は居らず、反対に皆希望に満ち溢れたかのような顔をしていた。


 「それで、どの子をお求めでしょうか?」


 「え、いや、そのー」


 興味本意で入ってしまったため、何も考えていなかった真緒。


 「ご心配なく、ごゆっくりお考えください。決まり次第お呼び頂ければ問題ございません」


 「そうですか、分かりました。少し見て回ります」


 そう言うと更に奥の方の檻を見に行った。


 「へぇー、こんなに居るんですか…………」


 そこには多くの種類の人間がそれぞれ入っていた。中年の男性、小さな女の子、はたまた高年齢のおじいちゃんまで……本当に沢山の奴隷が売られていた。


 「ん、あれって…………」


 その中で一際目立つ大きな檻があった。他の檻と比べても三倍近くあるその檻には、鎖で繋がれた奴隷がいた。前髪が長くて目は隠れており、タンクトップに短パンの同い年ぐらいの子がいた。しかし彼女は人間ではなかった。身長は二メートル近くあり、何よりも頭の上に丸い耳のようなものが付いていた。そして繋がれた両腕は熊の手、そのものだった。


 「店主さん、あれって…………」


 「ああ、あの子は特別でね。ウチは基本的に人間しか扱わないんだけど、ある雨の日の夜に、店の前で座り込む彼女を見つけてね、話を聞くとどうも母親が殺されてしまって、自分は何とか助かったけど行くあてがないもんだから、困っていると言うんだ。どうしてもほっとけなくてウチで預かることにしたんだよ」


 「じゃあどうして鎖なんかで拘束しているんですか?」


 「それはね…………」


 店主が喋ろうとすると突然、その女の子が暴れ始める。


 「ウオオオオ!!」


 手足を振り回しながら暴れるが、鎖で繋がれているため身動きが取れない。だが、次第に収まって静かになったと思った矢先に、突然その子の口が大きく開く。そして…………。


 「ふああぁぁ、よく寝た」


 「へぇ?」


 「彼女は究極的に寝相が悪くて、こうして鎖で繋いでおかないと、いつも寝返りで檻が破壊されてしまうんだ。既に三つは犠牲になった」


 「ん?……あ、店主さん。おはようごぜいまず。そぢらの方は?」


 「お客さんですよ」


 「おおー、そうでじだが。うんだら、自己紹介をさせでぐだぜえ。オラは熊人のハナコっでいいまず。よろじぐお願いじまずだー」


 「あ、はい。真緒といいます。よろしくお願いします……熊人?」


 「もしかして、お客さん獣人を見るのは初めてですか?」


 「獣人?」


 初めて聞く単語に首を傾げる。


 「獣人は人間にも魔族にも属さない“亜人”と呼ばれる種族で、その中でも屈指の実力を誇るのが熊人なんですよ」


 「ぞんなー、あんまり誉められるど照れでじまうだよ」


 「亜人ですか…………」


 またしても王女の説明にはなかった話に真緒は、王女が無能であると薄々思い始めていた。


 そしてこのハナコに何か感じるものがあった。


 「あの、少し二人で話してもいいですか?」


 「ええ、別に構いませんが……」


 店主は後ろへと下がった。


 「それで聞きたいんだけど、あなたはこれからどうしたい?」


 「どうっで、そうだなー……。オラ、おっ母が死んじまっでからは何にもやる気が起ぎなぐで、したいごとなんでないがな」


 「それなら私と旅をしてみない?」


 「旅だか?」


 「うん、いろんな場所を巡ってそこの文化に触れたり、体験したりしてこの世界の事をもっと知るの」


 「ごの世界の事…………面白ぞうだな!やるごどもねぇじ、オラもその旅に連れでっでぐれ」


 「ええ、もちろん。…………あ、でも私お金少ししか持ってない」


 小遣い程度のお金しか渡さなかった王女を心の底から憎んだ。


 「お代はいりませんよ」


 「店主さん」


 後ろにさがっていた店主が話を聞いていたのか、丁度いいタイミングで現れた。


 「でも、いいんですか?」


 「いいんです。元々この店はボランティアで始めたものでして、行き場の無い人に少しでもいい場所をと思ってやっているんです。ハナコをどうかよろしくお願いします」


 「はい、分かりました」


 「ハナコ、くれぐれも迷惑を掛けないようにするんだよ」


 「もぢろんだよ。店主さん、今までありがどうごぜいまじだ」


 その言葉を聞いた店主の頬を涙が伝っていた。

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