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エジタスと真緒

今回はエジタスと真緒の絡みを強くしました。

 ど~も皆さん。道楽の道化師エジタスです。今私はカルド王国に来ています。

 

 それにしても賑やかな場所ですね~行き交う人々が皆笑顔ですよ。そんなことを思いながら早速、勇者について情報を探ろうとすると、私の後を女の子がつけて来るではありませんか。


 まさか、私が四天王であることがバレた!?……と、思っていましたが話を聞くとどうやら、私が落としたナイフを拾って届けようとしたと言うではありませんか。私は感謝の言葉を述べ、彼女に名前を聞いたので、私も自分の名前を教えたのです。


***


 「…………エジタスさん?」


 「は~い、この度は私の落とし物を拾って届けて頂きありがとうございます」


 「……いえ、大した……ことは……していません」


 先程よりはハッキリ喋るようになったが、まだ慣れてはいない。


 「それでは……これで……失礼します」


 「…………」


 真緒は軽く会釈を済まし離れようとする。


 「ちょっと待ってください」


 咄嗟に真緒を呼び止めるエジタス。


 「え?」


 「拾ってくれた恩人が、そんな辛そうな顔をしているのにほっとくわけにはいきませ~ん」


 「いえ、私なら……大丈夫ですから」


 嘘だ。本当は、辛くて辛くて心が押し潰されそうだ。突然異世界に連れてこられ、挙げ句の果てに、使えないと判断され捨てられた。そんな状況で辛い顔をしない方が難しい。


 「拾っていただいたお礼……とは言いませんが、私に話してみませんか?マオさんの力になりましょう」


 「エジタスさん………………ここでは何ですから……向こうで……」


 そう言うと、マオとエジタスは人気のない場所に移った。近くにあった瓦礫の上に座り、しばらく黙っていたが、ゆっくりと口を開き話始めた。


 「…………実は私、こことは別の異世界からやって来たんです」


 「何と!では、あなたが異世界からやって来た勇者さんなのですね」


 「!……信じてくれるんですか!?」


 「勿論ですよ何を疑うというんですか?」


 「…………」


 嬉しかった。自分の言葉を信じてくれる人がいると分かって、堪らなく嬉しくなった。


 「ここの世界に来る前、私虐められていたんです」


 真緒は語る。小さい頃父が他の女を作って出ていったこと。その後母が亡くなってしまったこと。それで暗く内気な性格になったこと。泥棒と誤解され虐められたこと。異世界に連れてこられ、ステータスの低さから見捨てられたこと。

 

 話している間エジタスは口出しなどはせず、黙って聴いていた。


 「……全部……私が悪いんです……私さえいなかったら…………」


 考え方まで暗くなり始めた。こんな辛い状況でも涙すら流れない。話終えると真緒は俯いてしまった。


 「マオさんマオさん」


 エジタスの声が聞こえる。母と同じくらい優しい声で呼び掛けられる。真緒が声のする方へと顔を向けると……。


 「ほい」


 手首を捻ったかと思うと、一瞬にして赤いボールを出現させる。空間魔法の本来の使い方である。


 「ほい、ほいほい、ほ~い」


 次々とボールを出現させてそれを手で回し始める。最後に巨大なバランスボールを出現させた。


 「とう!」


 ボールを回しながらバランスボールに乗るエジタス。


 「どうですか~?」


 「……え、あ、すごいです」


 感想を求められ、素直に答えた。


 だが、無茶しすぎたのか次第にバランスが取れなくなる。


 「おとと、おととと、おととととととと…………」


 完全にバランスを崩し、どんどん後ろへと下がっていき、瓦礫の山にぶつかり落ちてしまう。


 「だ、大丈夫ですか?」


 「は~、何とか…………イテッ!」


 落ちるときに上に放り投げられたボールが、エジタスの頭に直撃した。


 「っっ……あはははははは」


 笑った。久しぶりに笑った。母が亡くなってから一度も笑ってなかった。しかし、こうしてまた笑うことが出来た。


 「やっと笑ってくれましたね」


 「えっ、あ、ご……ごめんなさい」


 「なに言ってるんですか。笑うのに許可なんか必要ありません!笑いたい時に笑えばいいのです。…………マオさん、あなたの人生は確かに不幸の連続かもしれません。でもそんな時だからこそ、笑ってください。落ち込んで見るよりも笑って見る方がその景色はきっと、良いものになっているはずですよ」


 「エジタスさん…………」


 嬉しい。こんなにも親身になって話を聞いてくれる人は初めてだ。その日ついに、枯れて流すことが出来なかった涙が流れた。


 「すみません……笑ってと言われたのに…………涙が止まらないんです」


 「いいですよ、好きなだけ泣いてください。その代わり、泣いて、泣いて、泣きまくったら、次はとびっきりの笑顔をお願いしますね」


 「はい!」


 「…………あ、そうだマオさん」


 「はい?」


 「修行しましょう!」


 「へぇ?」



 

***



 

 「あの……エジタスさん。これはいったい……」


 真緒とエジタスは、カルド王国から少し離れた草原地帯に来ている。


 「いいですか、マオさんは王国から見捨てられたと言っていましたが、逆に考えれば自由を与えられたということです」


 「どういうことですか?」


 「普通、異世界から来た人が勝手な行動をしないように、目が届く範囲に置きたがるものです。そのためにほぼ軟禁状態の生活が続くでしょう。強いステータスともなれば尚更です。だから、早く自由になれたマオさんは運がいいですよ」


 「でも私、運なんて3しかないんですよ」


 「ステータスなんて鍛えればいくらでも変化しますよ」


 ステータス低さに不安を抱いていたが、エジタスの言葉で少し安心する。


 「まぁ、運なんかは変化しないですけどね」


 安心出来なかった。


 「さて、これからマオさんには、戦闘において大切なことをいくつか教えたいと思います」


 「で、でもなんで修行なんか?」


 「マオさんはこの世界のことをなにも知りません。今後を生き抜くことを考えても、戦えるようにする方がいいと判断しました」


 「どうしてそこまで……」


 「ナイフを拾っていただいたお礼ですよ。」


 「それだけで何で……」


 「では、お聞きします。マオさんあなたは、自分がいた世界に戻りたいと思っていますか?」


 「!」


 戻りたいか。そう聞かれた真緒は、すぐに頷くことが出来なかった。元より、自分がいた世界に帰る場所はない。


 「更に理由を付け加えるならそれが理由です。元の世界に帰る気がないのなら、この世界で生きていく為に修行しましょう」


 「…………はい!」


 覚悟を決めた目。元の世界との繋がりを断ち切り、この世界で生きていくことを決めた。


 「よろしい!これからは私のことを“師匠”と呼ぶように!」


 「はい!よろしくお願いします師匠!」


 「ほぉ~いい響きですね~。ではこれより修行を開始する。まず、この世界のことは城の方で聞きましたね」


 「はい、この世界には大きく分けて人間と魔族がいるってことですね」


 「その通り。基本的な知識は大丈夫そうですね。それではまず、戦闘において最も大切なことは何だと思いますか?」


 「…………死なないことですか?」


 真緒が答えると、人差し指を縦に立てて“チッチッチ”と動かす。


 「それは当たり前のことです。正解は、相手を見た目で判断しないことです」


 「どういう意味ですか?」


 「あれを見てください」


 そう言ったエジタスが指差す方向には可愛らしい兎がいた。


 「可愛いですね。あの兎がどうかしたんですか?」


 「あれは兎ではありません。“キラーフット”と呼ばれる魔物です」


 「魔物?」


 「魔物は魔族とは違い、どちらかと言うと動物に近い生き物なのです。そして彼方の方も見てください」


 エジタスはキラーフットに指差したまま、もう一つの手で反対側にいた猪を指差した。しかし、その猪は普通の猪とは違い、四本の牙が口から突き出ていた。


 「“ボアフォース”強力な突進と四本の牙が武器の魔物です。そして…………スキル“一触即発”」


 「クゥ!?」「フゴォ!?」


 突如、キラーフットとボアフォースが小さな悲鳴をあげたかと思うと、二匹は互いに睨み合い威嚇し始めた。


 「し、師匠、いったい何をしたんですか!?」


 「スキルを発動させたのですよ。私のスキル“一触即発”は対象となる生物を二名選び、強制的に緊迫した状態にして戦闘を引き起こさせる能力です」


 「スキルって確か就いた職業に応じて使える技ですよね?師匠の職業って…………」


 「私ですか?私の職業は“道化師”です。それより見てください。間もなく始まりますよ」


 二匹は威嚇しあいながら動かないが、今にも爆発して殺しあいが始まろうとしていた。


 「どちらが勝つと思いますか?」


 「え、それは……やっぱり猪の方じゃないですか?」

 

 「そうですか……では結果を見届けましょう」


 「フゴオオオオ!!」


 ついに爆発した。ボアフォースがキラーフットに向かって突進を繰り出す。しかし、それをヒラリと避けるとボアフォースの横腹に強烈な回し蹴りが叩き込まれる。


 「プギィィィ!!!」


 骨は折れ、しばらく悲鳴が響き渡るが次第に動かなくなった。


 「どうですか?」


 「師匠は、始めからこうなると分かっていたのですか?」


 「はい、もちろんです。ボアフォースの突進は強力ですが、直線しか動くことが出来ません。一方キラーフットは、俊敏に動ける体に強烈な足技を持っているので、勝利はほぼ確実だったでしょう」


 「す、凄い…………」


 「それで分かりましたかマオさん。見た目だけで判断すると油断が生まれ、下手をすれば殺されてしまいます」


 「はい、肝に命じます!」


 「よし、次はお待ちかねの武器について説明しましょう」


 真緒の修行はまだまだ続く。

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