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笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~  作者: マーキ・ヘイト
第七章 冒険編 極寒の楽園
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ダイヤモンドレイク

生活リズムを取り戻す為、12時投稿にしました。

 「ここが“ダイヤモンドレイク”……」


 「本当に大きな湖ですね~」


 「まるで、海みたいですね」


 真緒達の目の前には、巨大な湖が存在していた。そのあまりの大きさに地平線が見えてしまう程である。


 「それにしても、本当にこんな所に炎の王冠を奪った“ケイ”っていう人がいるのでしょうか?」


 「うーん、そうは言っても……それだけしか情報が無いからな…………ん?」


 真緒達がダイヤモンドレイクを見回していると、端の方に一軒の古ぼけた小屋を見つけた。


 「もしかして、あそこじゃないか?」


 「そんなまさか、炎の王冠があれば一国の王にだってなれるんですよ」


 「とにかく、行ってみようよ」


 真緒達が見つけた小屋に近づいて見ると、その古さがより一層強く伝わって来た。所々板が剥がれており、何の対策もしていないのかカビが発生していた。


 「うわぁ……酷い小屋ですね」


 「うっ、何だが臭いだよぉ……」


 「恐らく、板を張り替えたりして無いのだろう。だから腐って、悪臭を放っているんだ」


 「汚いですね~、自己管理が出来ていません」


 そのまま玄関から入る真緒達。勿論、出入り口には扉などは無かった。


 「……まぁ、そうだよな。中は綺麗かもしれないと思ったが、そんな都合良くは行かないか」


 小屋の中は外よりも酷い有り様で、家具は一切置いておらず、細やかに小綺麗な布で(こしら)えた寝具だけが存在していた。そして真緒達は、その寝具に横たわる人影を目撃する。


 「誰か寝ています」


 「ケイって男性でしょうか?」


 真緒達が横たわる人物を確かめる為、恐る恐る顔を除き込むとそこには、小さな女の子がいた。


 「お、女の子!?」


 「可愛らじい寝顔だなぁ……」


 女の子は寝息を立てながら、静かに眠っていた。


 「いったい……誰なんだろうこの子?」


 「誰だ!!そこにいるのは!?」


 「「「「「!!!」」」」」


 突然後ろから、声が聞こえてきた。急いで振り返るとそこには木こりの斧を片手に、紐で束ねた薪を背負っている男性が立っていた。


 「お前ら、俺達の家に何の様だ!!?」

 

 「いや、その、私達は人を捜してて……!」


 真緒が事情を説明しようとしたその時、男性の視界に寝ている女の子が入った。


 「!!、まさかお前ら“イウ”を……妹に何かしたのか!?そうなんだな!!」


 「違います。あの、まずは話を聞いて……」


 「させねぇ……妹には指一本触れさせねぇ。俺が……この兄である“ケイ”がお前らを倒してやる!!」


 「「「「「ケイ!!?」」」」」


 ここでまさかの目的である人物に出くわすとは、夢にも思っていなかった。


 「妹は……俺が守る!!」


 ケイは、持っていた斧を振り上げながら襲い掛かって来た。


 「クソッ、ひとまず落ち着かせるのが先決だ」


 「そうだね、ハナちゃんお願い!」


 「任ぜで…………」


 そう言うとハナコは、真緒達の前に立ち襲い来るケイに対して、構えを取る。


 「死ねーーー!!」


 「スキル“熊の一撃”!」


 「ぐはぁ!!!」


 ハナコから放たれた一撃は、見事ケイの腹部へと命中し勢いのまま外に吹き飛ばされた。


 「……い、いもうとは……おれが…………」


 そしてそのまま気絶してしまった。


 「はぁ、取り敢えず起きるまで待つしかないね……」




***




 「…………ん、あれ……俺はいったい……」


 「目が覚めましたか?」


 「お前らは……そうか、俺は気絶してしまったのか」


 ケイが目を覚ますと、妹の横で寝かせられており側には真緒達がいた。


 「すみません、落ち着かせる為とは言えこの様な荒療治をしてしまって……」


 「いや、謝るのは俺の方だ。ついカッとなってしまった…………それで、お前達は何しにこんな所にやって来たのだ?」


 「…………私達は、あなたが雪女のスゥーさんから奪った“炎の王冠”を取り戻しに来ました!」


 「!!!」


 真緒の言葉に俯きながら、思い詰めた表情をするケイ。


 「そうか……あの町の……」


 「お願いです!!どうか炎の王冠を返して下さい!あれが無いと、町の人々やスゥーさんが取り返しのつかない事になってしまうんです!」


 するとケイは体を起こし、懐から“炎の王冠”を取り出して真緒達に放った。


 「えっ、えっ!?」


 「返すよ。もう俺が持っていても意味は無いからな……」


 「……どうして、そんなあっさりと手放すのですか?これがあれば一国の王も夢じゃないのに…………」


 「…………」


 ケイは隣に寝ている妹の目の前に座り込み、じっと見つめる。


 「元々……“炎の王冠”を盗んだのは、妹を……“イウ”の目を覚まさせる為だったんだ」


 「どういう事ですか?」


 「俺達兄妹は、早くに親を亡くして頼る人もいなかった為、二人でこの小屋を建てて、今までずっと支え合って生きて来たんだ。それがある日突然、こんな寝たきりの状態になってしまったんだ」


 そう言うとケイは、寝ている妹のイウの髪を優しく撫でた。


 「どうしてそんな事に?」


 「分からない……いつも通りの朝を迎えて、イウを起こそうと声を掛けたんだがその時にはもう……」


 「ケイさん……」


 「だから俺は必死になって、イウを起こす為になけなしの金を使って色々と試してみた。呪い除去、悪霊退散、深い眠りから覚ます為の激痛マッサージ、だがどれもこれといった成果は得られなかった。次第に金は底をつき、もう諦めるしか無いのかと思ったその矢先、ある情報を耳にしたんだ」


 「ある情報?」


 すると今度は、真緒が持っている“炎の王冠”をじっと見つめるケイ。


 「ある一人の女性の心を暖めて、性格を変えてしまった奇跡の王冠が“アンダータウン”と呼ばれる町にあると……」


 「その女性って…………」


 「「「「「スゥーさんだ!」」」」」


 真緒達は、ある一人の女性の名前が一致した。


 「俺はその奇跡にすがる思いで、アンダータウンへと向かった。そして何とかその“炎の王冠”を手に入れる事が出来たが、それも無駄だった」


 「えっ、どうして…………」


 「…………使い方が分からないんだ」


 「「「「「!!!」」」」」


 先代の町長が“炎の王冠”を自在に操っていたが、その使い方を教える事無く、亡くなってしまった。


 「笑っちまうだろ?使い方もろくに知らず、無様に奇跡に追いすがるなんて…………情けねぇ」


 「笑えませんよ…………」


 「マオさん?」


 真緒は持っている炎の王冠を強く握り締め、ケイを睨み付ける。その目には怒りが感じられた。


 「あなたが王冠を奪った軽率な行動で今町では、スゥーさんの力が暴走して住人が氷付けになってしまっているんですよ!!」


 「な、何だと!?ど、どうしてそんな事に…………俺は只、妹の為に……」


 「そんな誰かが傷付いて目覚める事が出来たとしても、妹さんが喜ぶと思っているんですか!!」


 「!!!」


 ケイの全身に、雷に打たれた様な強い衝撃が走り、膝から崩れ落ちる。


 「…………」


 「今からでも間に合います。この王冠を返して一緒に謝りましょう!」


 「…………悪いが、その王冠はお前達が返して来てくれないか?」


 「!!、ケイさ「俺には!!!」」


 真緒が説得しようとすると、ケイが大声をあげる。


 「俺には……謝る資格すら無い」


 「…………」


 「妹の事ばかり気にかけて、人として最も大切な事を忘れてしまっていた。“人に迷惑を掛けてはいけない”という事を…………そりゃあ目覚める筈も無いよな、こんな他人の気持ちを踏みにじる兄なんかと一緒にいたくないもんな……」


 「ケイさん!わ、私、そんなつもりで…………!!」


 真緒が弁解しようと口にするも、ケイは右手を突き出して言葉を遮る。


 「本当にお前達には悪いと思っている…………だけどすまない、もう帰ってくれないか?」


 「「「「「!!!」」」」」


 「これ以上、俺達兄妹に関わらないで欲しい……」


 「で、でもケイさ「頼む!!」」


 「頼む……二人っきりにしてくれ…………」


 ケイの目から涙が零れ落ちる。落ちた涙が床の板に染み込んだ。


 「…………皆、行こう」


 「いいのかマオ……」


 「マオさん……」


 「マオぢゃん……」


 そして真緒達は無言のまま、小屋を出て行くのであった。




***




 「クソッ、何かやりきれない気分だ」


 真緒達は、小屋から数キロ離れた場所にある林にいた。


 「ケイさんがどうしようも無いクズ男だったら、簡単だったんですけどね……」


 「妹思いの良い人だっだだねぇ……」


 「…………皆はどうすべきだと思う?」


 モヤモヤとした気持ちの中で、真緒が仲間達に問い掛ける。


 「どうすべき、というのは?」


 「あの二人を助けるかどうか……」


 「マオ、それはいくら何でも……」


 「マオさん……」


 「マオぢゃん……」


 「見捨てれば良いのですよマオさ~ん」


 「「「「!!!」」」」


 二人を助けるか助けないかの問いに、エジタスが平然と答えた。


 「師匠……何を言っているんですか?」


 「いいですかマオさ~ん、この世には助けられる人と助けられない人の二種類が存在します。二者択一、二兎追う者は一兎をも得ず、欲張って両方助けようとすると結果的に両方失ってしまう。悲しいですけど、それが人生なのです!」


 エジタスは大きく手や足を動かし、分かりやすく表現した。そしてその時の仮面はいつもより不気味に見えた。


 「…………師匠」


 エジタスの言葉にショックを受けてしまったのか、俯いてしまう真緒。


 「…………確かに、そうかもしれません。でも、私は兄妹二人も一緒に助けたいんです!!」


 顔を上げるとその目は、決意に満ち溢れていた。


 「お人好しですね~、そんなんではいつか大事な決断の時に、大切な物を失ってしまいますよ~」


 「それでも私は、私自身の正直な気持ちを優先します!!」


 「はぁ~、これ以上言っても無駄ですね。助けたいのなら、私抜きで勝手にやってください。どんな結果になっても知りませんよ~?」


 「…………分かりました。行こう、皆」


 そう言うと真緒は、小屋の方へと歩いて行ってしまう。


 「お、おい!待てよマオ!!」


 「マオさん!」


 「マオぢゃん!!」


 その後をエジタスを除いた三人が、追い掛けるのであった。






















 「…………」


 林に一人残されたエジタスは、行ってしまった真緒達を地平線で姿が見えなくなるまで眺めていた。


 「…………くそがぁぁああ!!!」


 エジタスは横にあった木を、その向きのまま手の甲で殴り飛ばす。ドゴォン!!と凄まじい音が響き渡り、木は殴った箇所からポッキリ折れてしまった。


 「はぁ、はぁ、はぁ…………何なんですかこの気持ちは……」


 息を切らしながら、動悸(どうき)を落ち着かせる為に心臓を強く抑える。


 「計画通りじゃないですか…………マオさんは、どの種族にも分け隔てなく優しく接している。両方を助けるというお人好しの素晴らしい子に成長している…………なのに何故、こんなにも“がっかり”しているんだ……」

 

 エジタスの、拳を握る力がどんどん強くなっていく。


 「まさか……マオさんが他者を見捨てる事を望んでいるのか?…………ふ、ふふふ、ふふふふ、あーはははは!!!」


 何を思ったのか、突然高笑いをし始めるエジタス。


 「あははは…………ふざけるな!!!」


 気が触れたのか、勢い良く拳を地面に叩きつける。するとエジタスを中心に大きなクレーターが出来上がった。


 「ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!!」


 何度も、何度も、何度も拳を地面に叩きつける。


 「…………」


 そして、ある程度叩き終わると地面に頭を擦り付ける。


 「…………長い歴史を積み重ねても、元の性格というのは完全に消し去る事は出来ない様ですね……」




 “いいかいエジタス、良い事をすれば必ず自分にも良い事が起こるからね”




 「…………」


 エジタスの脳裏を一瞬、何かがフラッシュバックした。


 「分かってるよ……この世の中を“笑顔の絶えない世界”にするんだ…………必ず」


 擦り付けていた頭を持ち上げ、ゆっくりと立ち上がると、右手を空に向けて高く上げ天を仰いだ。

そろそろ本格的に、エジタスを関わらせて行きたいと思います。

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