王子の考察ターン
次回から殺戮紀行です。今回も三人称です。
グラハム・ターナーは、フレイアの婚約破棄に至る話を聞いて、思った。
――村長の息子、クズだな。
ただのスケベ野郎じゃないか。なんでフレイアはそんなやつがいいんだ?
だいたい、まとめれば、パウエルとかいうクズ野郎が巨乳をモミモミしたせいで、俺はこの世界に召喚されたらしい。
殺したい。マジ、殺したい。脳みそえぐりだして、ぐちょぐちょにしたい。
だが、そんなことをしても帰れない。彼女の願いは「婚約者を取り返すこと」だ。
協力するしかあるまい。
あんなクズ野郎、取り返してもまたすぐ巨乳と浮気するぞ。
ま、俺には関係ないがな。
グラハムはフレイアの胸を観察した。なるほど、貧乳だ。だが、貧乳が好きか巨乳が好きかは好みの問題だ。ちなみにグラハムは貧乳派である。フレイアに巨乳好きと言ったのは嘘だ。めちゃフレイアが好みなのである。彼女にも勝機はあるはずだとグラハムは思った。
問題は、その、どこにあるかわからないエルフの宝だ。そんな不確かなものを使わずとも、自分の魔法でなんとか出来ないか、グラハムは考えた。
ていうか、あいつ、最初にブルーウォーターに「婚約者を取り返して」って願えよ。
まあ、ブルーウォーターの力を知らなかったのだろうし、あれを身につけたのは「壁」の外に出かける直前だったと言うことだから、仕方のないことだろうが。
とりあえず、あの女が婚約者を取り戻す方法を考えないといけない。グラハムは自分が使える魔法を整理した。
まず攻撃魔法。これでチチョリーヌを殺すという手がある。上手くいけばフレイアとパウエルのよりが戻るのではないか。
しかし、何で俺が庶民を自己の利益のために殺さねばならぬ、とグラハムは思った。王位を継ぐものとして恥ずべき行為だ。たとえ異世界といえど、そんなことをするのは俺のプライドが揺るさん。グラハムはチチョリーヌを殺すのはやめにした。
次に治癒魔法について考えた。だが、クズを治す魔法などない。これもダメだ。召喚魔法に至っては全く使い道がなさそうだ。
マインドコントロール系の魔法は使えるかもしれないな、と考える。だが、効果が永続的ではない。途中で魔法が切れたら終わりだ。
やはり、「エルフの宝」を探すしかない。グラハムはそう結論した。
魔法「賢者の眼」を使おうか。いろんなものを見通すことが出来る魔法だ。これで地図を見れば何かわかるかもしれない。
グラハムは「賢者の眼」で地図を見た。
何も見えなかった。「賢者の眼」で何も見えないとは珍しい。グラハムは逆に興味を持った。
が、すぐに「それじゃ困るんだよ」とキレた。
とりあえず、ドラゴンに乗せて、一気に山に連れて行くのがいい、と彼は結論した。




