人類絶滅そして
エルフの宝はない。
私の願いは叶わない。パウエルはチチョリーヌのもの。
うーん。最悪。
どうしよう。
「おい、フレイア。こうなったら、チチョリーヌ殺せ」
この王子だめだわ。発想が殺戮しかない。
「あのね、チチョリーヌ殺したら、私が捕まって牢屋送りよ。それともなに? 王子さんが殺してくれるの?」
王子の目が輝いた。
「それもいいな」
だめだこいつ。
「よくないでしょ。それでパウエルがホイホイ私になびくとは思えない」
「いや、あいつクズでゲスだから、意外にくるんじゃないか?」
「いや、さすがにそこまでクズではないでしょ」
「そうか」
そこまでクズである可能性はありそうだけどね。
「ここで整理しよう。お前の願いを叶えれば俺は帰れる。お前の願いは、パウエルを取り戻すこと。そうだな?」
「ええ」
「パウエルは、お前と婚約していたが、その前にチチョリーヌの胸を揉んだせいで、その責任を取って、お前と婚約破棄、チチョリーヌと婚約した」
「そうよ」
「つまり、お前は胸を揉まれてない」
「そうね」
「それは貧乳だから」
「だからなんなの?」
「つまり、お前が巨乳になれば良い」
この王子、バカ?
「あのね、今さら巨乳になってどうするの? チチョリーヌの胸を触りまくった事実は消えないのよ?」
「……それはそうか」
なにが整理しようよ、何も整理できていないじゃない。
「ていうか、お前、そんなパウエルにどうしてそこまで固執する?」
「……だって、ファーストキスの相手だし、もともと好きだし」
「単に家が隣だっただけ、田舎の小さな村だったから、他にいい男がいなかった、そういうことじゃないのか?」
痛いとこつくわね。
「そうかもしれないけど? だからなに?」
「他に男を作ればいいんじゃないか?」
私はため息をついた。
「王子さん、うちの村の男知らないからよ。私と釣り合う年齢の男ってまともなのいないのよ」
私は村の独身ダメ男について教えたあげた。
1 貧乏詩人ドンスコイ
もやしみたいに細くてガリガリ。仕事しないで詩ばかり書いている。王都で毎年開かれる「詩人になろうコンテスト」の常連だけど、一次選考すら通ったことない。「働いたら負け」と公言し、結婚したら妻に養ってもらう気まんまん。
2 鍛冶屋のジョン
親父とともに鍛冶屋で壁補修用の金具などを作成している職人。女好きで酒好き。稼ぎは悪くないのに、そのほとんどを娼婦と酒に浪費。最近娼婦から変な病気を感染され、薬代で借金できた。
3 農夫のフッド
いいやつすぎて、鍛冶屋のジョンから全財産騙し取られて貧乏。
「なるほど、クズばかりだ」
「でしょ?」
「巨乳好きでスケベで嘘つきで手が早いが、経済力があるパウエルはまだましか」
「……」
そうねー。まだ「まし」レベルよね。
「なあ、フレイア。俺と結婚しないか?」
「え?」
ちょ、ちょっと何よ、いきなり!
「だから、俺と結婚するんだ。お前の願いは幸せな結婚だろう。本当は」
「……そうね、たぶん」
「実は俺は独身だ。王妃がいるとか巨乳の側室フルーラがいるとか、あれは嘘だ」
「え?」
「王妃はいない。フルーラは俺の世界で人気のある歌姫の名前だ。あと、俺は貧乳が好みだ。わりとお前はドンピシャだ」
いきなり、そんなこと言われても……。
その時、エルフの谷の池から、巨大なドラゴンが出てきた。
「あ、すごい大きなドラゴン!」
「こ、これは!」
王子もびっくりなドラゴン、普通のドラゴンの十倍は巨大。
「人間族めえええ。よくもエルフを滅ぼしてくれたなああああ。人間ども滅亡の時じゃああああ」
「これ、聞いたことあるわ。エルフ滅びる時、人間もまた滅びるって。だから、人間はエルフに手を出してはいけないの。エルフの守り神、エルフドラゴンが、人間を滅ぼすのよ」
「滅びてから出てきても意味ないのに、バカなドラゴンだな」
「違うの、人間を滅ぼすって言っても、あのドラゴンが人間の魂を吸い取って、エルフ復活のエネルギーするの」
「ややこしいな」
「そういう言い伝えなの」
王子と私がドラゴンに見つかった。
「お前たちかあああ!」
ドラゴンが火を吹いた。
王子がなんかの魔法で火を避ける。
「うあわ、これはシャレにならん!」
王子の魔法が効かない。あわてて逃げる王子。
「おい、フレイア、逃げるぞ。瞬間移動で」
私が返事する間も無く、私たちは、エルフの谷から滅んだオークの村に瞬間移動した。
「いやーあいつつえー。ワンマンアーミーの俺でも無理だ。ということで、俺たちはあのドラゴンに殺されるぞ。フレイア。お前の願いは、おれと結婚すれば叶う。な。いいだろ。結婚しよ。な。結婚。やさしくするから」
「……うん」
ということで、私は王子と結婚することにしたの。
すると、世界が変わって、私は異世界のライバック帝国へ転移した。
元の世界がどうなったのか気になるけど、知る方法はないのよね。
ま、こっちの世界、悪くないわ。毎晩王子が私の胸を触りまくるのだけ、ちょっとうざいけどね。
ご愛読ありがとうございました。
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