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精神年齢六十五歳のボク♂が悪女さんに転生したようです。  作者: Rin
第一章 突発的スタートダッシュ
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出会い

「視線が痛い」


思わず声をこぼしてしまった。手を握っていた寧々さんの憎しみのオーラが一段と大きくなる。

めっちゃ睨んでくるんですけど学園の人たち。通学路を行く彼らの視線はボクをちくちくどころかザクザク針で刺すようだ。ここで日本に法律なんてものがなければ殴りかかってくるくらいには、彼らはキレていた。氷雨朔が何をしたっていうんですか。

「殺ス……朔君の悪口言ってるやつ後で殺ス…」

隣でギラギラと殺気を放つ寧々さん(男バージョン)のすそをくいくい引っ張って、制止の命令を目で出す。ボクと生徒たちを何度か交互に見た後、盛大に顔を歪ませながらも彼は少し殺気を抑えた。

ボクらの少し先を歩くお嬢様と巻き込まれた和樹君は、生徒会一行に絡まれている。

…どうしてこうなった。


今朝家を出たお嬢様は、『車で送る』と言う執事長の申し出を、「私ばかり楽できないわ」とやんわりと断り、二十分かけて自宅(豪邸)から学園(豪邸)まで移動した。勿論、従者のボクと和樹君もそれにならって後ろについていく。

玄関で待機していた寧々さんと合流。「やっと会えた」と泣き叫ぶ彼を宥めて、お嬢様にくっつかれる和樹君の後に二人でついていった。

通学路には同じ制服姿の男女がまばらに居て、お嬢様を指差してはうっとりと頬を染めて、今にもとろけそうだ。それと正反対に、その後ろをとろとろついて行くボクを見た彼らの影口はこう。


『あいつまだ学園来てるぜ』

『平然と愛美様の後ろを歩けるだなんて…』

『愛美様と和樹様、寧々様だって穢れるわ!』

『寧々様、今日は顔色が悪くってよ。お体の調子が優れないのかしら…』

『最低淫乱がここに来るな!』


以下略。

お、お前らなぁ!影口は本人の目の前で言ったら悪口なんだぞ?!いじめは犯罪だぞ?!人は皆平等、youも人間meも人間!そこ分かってる?!

ボクのメンタルポイントがガリガリ磨り減られていく。ついでに隣の寧々さんのヤンデレポイントも上昇中。これはまずい。いつか爆発する。

そんな針の筵の中、途中で合流した生徒会一行(多分)の反応。

「まな、に……近づくの、め!」

見上げると首が痛くなるくらい長身のイケメンは、ボソボソと聞き取りにくい小さな声でボクを牽制する。ボサボサの少し長い髪が隠していて分かりづらいが、かなりイケメンだ。もさいイケメンってやつか。何がめ!だ生意気言うなやこちとら六十五歳の爺だぞあぁん?年上に向かってその態度はなんだ、というかめってお前は幼児か。イケメン爆発しろ。

「まだいたのかよ、人形。よくのうのうと暮らせるなァ。さっさと失せろや」

 見ているこっちの目が痛くなるくらいに鮮やかな赤い髪をした強面のイケメンは、ボクの姿を視認して盛大に舌打ちをした。ピアスや指輪がジャラジャラと装備されていて、お前本当にお坊ちゃんか?と聞きたくなる。ワルってやつか。イケメン滅びろ。

「こっちにこないでくれないかな?」

 金髪に翡翠色の瞳という、まるで御伽噺の中から飛び出してきたような麗人が笑顔でボクを拒絶する。黄金比率で整った顔とすらりとした躰は息を呑むけれど、ここは中世の古城でもなければ勇者を待つファンタジーの世界でもない。つまり:痛い人。いや、美しいんだけれど。美しいんだけれども、のどかすぎる日本の背景では非常に浮いていた。イケメン毛根死滅しろ。

「…おはようございます」

アンダーリムのメガネをした黒髪のこれまた大層綺麗な男の子が、小さな会釈付きでまともに挨拶をしてくれる。良い子だ!ネクタイはボクや寧々さん、お嬢様とは違うコバルトブルー。先輩か後輩だろうけれど、口ぶりから察するに後輩だ。ついでに言うと王子さまはワインレッドのネクタイをしていた。

「どうも。……ふっ」

 にこやかに笑いながらも、口の端がひくひくと動いているイケメンがボクを見下ろす。おい、悪人面が垣間見えてるぞ。笑顔剥がれかけてるぞ。ボクに突き刺さる悪意を見て、今にも「他人の不幸は蜜の味」と高笑いしそうだ。かっこいいけれど、コイツはヤバイ。寧々さんと違ったヤバさを感じる。イケメンマンホールに落ちろ。

「み、皆?私は大丈夫だよ、氷雨さんにひどいことしないで…?」

いやあなたに罵倒されたんだが!?一番ヒットポイントを削ってくるのは貴女なんだが?!

うるうる、と瞳を潤ませ、赤紙のヤンキー風(これから赤キー君と呼ぶ)の背中に隠れるお嬢様に、思わずツッコミを入れたくなった。


「………生爪……ペンチ………はがして……金属バット……」

寧々さんが親指の爪をガリガリと噛みながら、イっちゃった目でぶつぶつと何か呟いている。

「寧々さん、流血沙汰はよしましょうね」

「うん、わかった!打撲中心にするね!」

全然わかっていない彼女もとい彼にため息をついたところで、ボクらが通う(らしい)学園の大きな門が見えた。



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