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精神年齢六十五歳のボク♂が悪女さんに転生したようです。  作者: Rin
第一章 突発的スタートダッシュ
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親睦会


あのあと、二人と別れ自分の教室へと戻った。

とにかく先ほどの『あ~んはぁと(棒)イベント』以降、周りの視線が痛い。ざくざく刺さる。視線が針だったら今頃リアル志向のハリネズミが此処に爆誕していただろう。特に女子の視線は憎悪に満ちた殺意の波動を秘めている。泣きたい。

ボクは女の子と仲良くしたい……。そう、前世では到底出来なかった、女の子との関わりあいというものがしたいんだ!

「可愛い女の子と話したい!」

ガツン!!

自席に座ったまま、教科書が広がる机へと頭をたたきつけた。木の板にたたきつけられたおでこは熱を持っている。痛い。

そもそも授業もちんぷんかんぷん!そりゃそうだろこちとら認知症の兆しが現れる六十五歳!わしゃあ勉強なんて四十年以上やっとらんわい!英語なんてな、大抵現地行ったらなんも喋れなくなるんだよてんぱって!大体センキューとイエスとノーで生きてけるわ!そもそもボクの一生で一度だって英語を使ったことはないよ!意味無いよ!

いきなりの奇行に、周りでこそこそ悪口を言っていたクラスメイトに戦慄が走る。シーンと静まり返る教室がかえってむなしい。

ああ、ごめんね前朔ちゃん……キミが築いた氷雨朔像はどんどん崩壊していくよ…。

本鈴がなって、英語の授業がスタートした。泣きたい。




「はいはい、席につけー」

五時間目も無事に終わり(半分…いや三分の二寝てた)、すぐに担任の玖奈芽さんが入ってきて六時間目が始まった。

どうやら行事への準備時間らしい。この時期にやる大きな行事ってなんだろう。職場体験とか?

「……ッチ」

驚くことに隣の席だった赤キー君は、配られるプリントに舌打ちをし、またそのまま机に寝そべった。赤キー君の逆側の隣の席はお嬢様で、「もう、志信君!寝ちゃ駄目だよぉ」と可愛らしくその背中をツンツンしている。かわいい。まごうことなき天使だ。

羨ましいな、やっぱり世の中顔なのかな。そう思いつつギリギリと歯軋りをしていると、前の席の女子からプリントが回された。

「早く受け取ってよ。腕が疲れる」

色素の薄いくせっ毛のベリーショート、色っぽい厚い唇と泣き黒子にノーフレームのめがね。こちらに振り向いた彼女の…あの……とある一部分が…具体的に言えばお胸が……ボクの何倍あるんでしょうねってくらい存在を誇張していた。女性バージョンの寧々さんにも匹敵する重量感だ。

「美人だ!」

「は?いいから早く」

眉根を寄せて不快感を露わにしながらプリントを揺らす少女。口調は冷たく、瞳も若干蔑みも入っているけれど。その言葉の中に、悪意はなかった。

つまり味方…いや、ボクに興味ない系の人ですね!分かります!

「す、すみません。ありがとうございます」

「へえ、お礼なんて言えたんだ」

彼女はそう呟くと、興味なさげに前を向いた。

クールだ……!できれば前世で出会いたかったタイプである。

「んじゃ、まあプリントみてやぁ」

A4サイズのコピー用紙には、大きく【親睦会についてのお知らせ】と印刷されている。親睦会、か…。

「自分らも去年やったから覚えてるやろけど、今年もやるでー親睦会」

あちらこちらから、やったぁとかいえーいとか、兎に角歓喜の声が飛び上がる。なんだ、親睦会ってのは確か…あれだ、しっぽ取りゲームとかをせっまい体育館でやって、体育系の人たちだけがやがや盛り上がり、文科系の人は寂しくはじで見守るしかない悲しい行事ではないか。親睦会とは名ばかりで、その実一軍二軍三軍と階級を振り分けるための悪魔の行事。

「実施日は六月十日。朝は八時十五分に体育館集合、親睦会終了は三時四十五分。遅刻したヤツは一日学校に入れないからなー」

……?えっ……親睦か…えっ…?校舎締め切りとか本気出しすぎじゃない…?え??

 ボクが想像したのはせいぜい体育館全体を使ったドッヂボールやしっぽとりゲーム。いや、確かに金持ちにしっぽとりゲームやらせるのもどうかと思うけれど、それにしても本気出しすぎじゃないか?

「今回も勿論男女ペアやで。鍵を使って手錠を外し、一番最初に校長を見つけてパスワード言ったやつらが優勝。また豪華な賞品送られるらしいから、まあがんばりやぁ」

玖奈芽さんによると、どうやらここは金持ち校の力を発揮し、親睦会と言っても規模が大きいらしい。

目的は新しく入学した一年と、また、新しくなったクラスメイトとの親睦を深めるため。

 ルールは簡単。

クラス内で男女二ペアになり、手錠で二人は拘束され自由の制限がかけられる。その状態で一番最初に渡された紙の指令どおりに動き、謎を解き、また移動して、謎を解き…の繰り返しをして、手錠の鍵を得る。あとはクイズ中に得た文字を組み合わせてパスワードを作り、放浪している校長を捕まえてそれを言う…らしい。

一位には豪華な景品を、最下位には罰ゲームを。

ちなみに毎年最下位のペアには、委員会全ての命令を半年間聞き続けるという罰がかせられる。拷問である。

「んで、まあ例年のことやけど。実行委員、決めなあかんねん。生贄だと思て堪忍してぇや」

どよどよ…とざわめきが走る。実行委員が生贄って…どういうことだ?

「殺人的に忙しい、主に委員会役員勢から下僕のようにこき使われる、当分部活には出れないエトセトラ…。去年実行委員になった奴は、これの恐ろしさ理解しとるやろぉ?」

その玖奈芽さんの言葉に、幾人かの生徒がぶるりと身震いした。ああ、彼らは昨年の実行委員なのだろう。冷や汗が垂れておる。そんなに忙しいものなのか…。

「で、そこでや。俺は、朔にこの仕事を頼もう思てる。どうや?」

……ワッツ??その玖奈芽さんの一言に、ざわざわとクラスがどよめく。ボクもどよめく。何言ってんのこのエロ教師。

「異議あり」「却下やで~」

立ちあがって抗議するけど、玖奈芽さんに笑顔で却下された。狐のような目をより一層細めて堪忍なぁ、と肩をすくめる。が、絶対にそんなこと思っていない。

 クラスメイト達もとばっちりを受けないためかじっとボクを見つめていた。どうせ委員会勢もイケメンなんだろ?!ここでお近づきになるチャンスじゃないか!!どうして今ここで本気にならない!!

「じゃ、反対意見はなしってことで。朔、よろしゅうなぁ~」

………ふざけんな歩く十八禁。絶対絶対あとで会ったら金的してやるからな。


結局ボクは、実行委員という面倒なものを押し付けられるハメになったのだ。






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