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南部評定 その二

不来方城


「おーい、政栄クンちょうど良いところに。」


「どうしましたそんなに汗をかいて、はい手拭い。」


「いや済まないね、父上がいつものアレでね。」


「はあ?アレですか?」


「そうなんだよ、子供の頃からの関係らしくてね、会うと必ず勝負するらしいんだ。」


あー脳筋のスキンシップね、納得。


「なる程それは、此方としても申し訳ない。」


「いや、そんなことはどうでも良いんだよ、父上が評定に出られなくなってね、私一人で出ることになったんだよ。」


なにやってんだ、馬鹿どもが。


「何と言えばいいのか重ね重ね申し訳ない。」


「私は評定とか出たことが無いので何をしたら良いか分からないんだよ。」


「なる程だから、私を探していたと。」


「頼むよこういうのは苦手でね、訓練してる方が気が楽だよ。」


「……分かりました、実親殿の事もあるので援護するつもりでいましたから……今回は任せてくれて構いません、楽に聞いていてください。」


「いやあ助かるよ、所でこの手拭い柔らかくて良いね、これも八戸領の特産品かい。」


「ええ、三河産の綿を紡いで布地を作るんですが、わざと糸が一定の長さはみ出す様にに織って貰った布地を表と裏に一枚使ってこの柔らかでフワフワ感を出しているんですよ。」


「うん、汗を吸ってくれてとても良いねえ、これも高級品かい?」


「ええ、使い心地を聞いて回っているんですが、なかなか好評です。タオルと名付けて売り出す予定です。」


「うん、稽古の後なんかに良いねえ、後で何枚か送ってもらえるかい。」


毎度あり~♪


「とりあえず三十枚と風呂上り用に大きな奴も送っておきますね。」


「ふーん風呂上り用にか良さそうだねえ。」


「後で使い心地を教えてもらえますか、いろいろ意見を集めているので。」


「なる程、研究熱心だねえ。」


ふむ、九戸の坊ちゃんも愛好して使っています。ちょっとゴロが悪いかな、何か殺し文句を考えておこうかな?


◆◆◆


「うむ、警備ごくろう、石亀の?」


「政頼!いい加減覚えてよ。」


「うむ、政頼殿、評定所の警備ごくろう!」


「いや、私も出るからね、警備じゃないから。」


「?、何をしにで………すまん聞いてはならんことを、許せ。」


「なにか勘違いしてない?」


「いや、政頼その年で世間の荒波に放り出されては大変だろう下男として雇ってもいいぞ。」


「いや、石亀家は取り潰しになってないし、しかも下男ってもうちょっとなんとかならないの?」


「なんだ、余りにも無能なので取り潰しになったんだとばかり、下男は残念ながら変えられん草履取りも決まってるし。」


「草履取り以下なの?」


「うちの草履取りは優秀だからな、スマンが下男で我慢してくれ。」


「もう、良いよとにかく取り潰しにはなってないって言うか心配になってきたよ。」


「冗談だたぶん。」


「たぶんなの?これでも一応兵糧の輸送で活躍したんだよ。」


「ふむ、兵糧の管理は大事だぞ補給を疎かにする軍はいずれ滅びる南部もここまでか……」


「いや、ちゃんと管理していたよ、滞りなかったでしょ山の中にも過不足なく届いたはずだよ。」


確かにあの膨大な量を捌いていたのか……補給とかなかなか得難い才能なんだが、こいつ妙な才能に目覚めたのかな?まあ使えるようになるならいいか。


「うむ、わかった補給隊の隊員としてこれからも頑張ってくれ。」


「何故今より降格に、せめて現状維持でっておーい。」


「スマンが、私は忙しいのだ、バッハハーイ。」


◆◆◆


「おお、先に来ていたか。」


「盛政様、信仲殿は?」


「おう、また返り討ちにしてやったぜ。」


反省してねえよ、このじじい。


「地割りの話は聞いてる、新田は遠野かすこし寂れているが昔からの古都のあった場所だ三陸側も含めて大躍進と言ったところかな。」


「捕虜はともかく、戦功は一番ですからね、久慈を挟める様にちょっと。」


「だろうな、いくら何でも躍進しすぎだ、あとはそんなに久慈が気になるのか、あそこにそんな気にする奴いたか。」


「虎の子を見て、猫の子と勘違いするなかれ。と言った所です。」


「時々よくわからんが、お前が言うならそうなんだろ。」


「遠野は高台にあり、三陸側にも不来方にも睨みが利きます、ここに騎馬隊を集めて置けばいざと言うとき必ず役にたちます。」


「後継者問題か、早く出来ればいいんだがな。」


「もしもの一手ですが、遠野は守るに堅い王城の地ありがたく使わせて貰いましょう。」


「ヤレヤレ何処までみえてるんだか。」


「所で、氏家定直はどうだった。」


「どうもこうも、しぶとい、しつこい、勝つためには何でもしそうですね、実際最上の精鋭が手足だったら……いえ、戦場にたら、ればはありません、揃えられなかった定直殿の責任です。今回は私の勝ち、そして次も勝ちますよ。」


「自分の弱点は見えたか。」


「ええ、残念ながら体格と武芸では並以下ですからね、強硬突破に彼所まで弱いとは、力を力で返せないのは分かっていました肉迫された時点で勝負は負けです、戦は辛勝ですがね。」


まあ実際の所半壊しましたがね、次は勝つ。


「武芸者、突撃隊長ってところかなまあ俺には必要無いがな、頑張って探せよ、俺も後見を外れる訳だしな。」


ええ、本当その武力だけは羨ましいですね~


「そうですね、でもそんなに簡単に転がってませんからね。」


劉邦なら樊噲、劉備なら関羽、張飛か……この時期東北にそんな人材居ねえよ!柳生の里にでも行って青田買いしてこようかな。

それにしたって官位がないとな、結局の所南部の臣であるから上昇志向のある奴を臣下に招くのは難しいのよね。


あーあ、どっかに人材落ちてないかね。


◆◆◆


評定も無事に終わった、意気込んでいた人には悪いがこういうのはあらかじめ殆ど事前に決まってるのよね、後は承認して貰うだけ。


「政栄殿、後で晴政様の屋敷にとの事です。」


ちっ、俺はお残りかよ。


◆◆◆



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