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南部家 評定その一

◆◆◆


三城の改修(建設)工事


休戦協定は決まったが一関砦、中新田城の修理と築館宿の砦の建設だけは最優先で行わなければならない。

防御がしっかりした城には簡単には攻め込めない、敵に無用なやる気を与えないためにもこの二つの重要拠点の補修や建設は急ぎ行わなければならないのだ。

中新田城は既に改修工事が始まっており、跳ね橋への改修と門前の地面の掘り起こしを始めている。二ノ丸の城塞化は門が完成してからゆっくり高くしていけば良いだろう。

新たに採用した、跳ね橋と石扉の門のコンポは中々攻略が難しい組み合わせで、跳ね橋を城の中に収納してしまえば、あとは門前で火計のやりたい放題が出来る凶悪な造りだ、跳ね橋の上げ下ろしにはガントリークレーンの技術も加えて、守るに堅く騎馬隊の出撃も短時間で可能となる西洋城門型設計となっている。

戦国時代前半では過剰な防御力かもしれないが、いずれ来る火薬全盛の時代に対応した門の試作を南部家の資金で出来るなら悪くない。

あと平時は空堀にして深めに掘ったり修繕が出来るように水門も新たに造らないとね。


一関砦も基本は同じ跳ね橋石扉だがこちらは天然の川で水門がいらないから楽でいい、改良したのは築館宿側と水沢側に通じる街道に吊り橋を架けた位かな、戦時は落とせば攻められないしバリスタを使って吊り橋程度なら簡単に張れる技術があるからね。

……山道の近道作りに使えるな、研究してみようかな?


問題は築館宿なんだよね、特に要害ってほどの山でもないし平城ほど広く縄張りをとることもできないか……

やはり趣味まるだしの中国式城壁で囲むか、工事で使う八戸領の麻袋も売れて一石二鳥だしね。


最大の問題は収穫時期で人手が足りない事かな、笑えることに各家の直参で何とか工事を行っているんたが、うちの工兵部隊はともかく、他の直参どもはプライドが高いね、良いから黙って仕事をしろっての、軍隊の基本は工事に始まり工事に終わるのだよ。


◆◆◆


南部評定


1556年 霜月 不来方城


陸前侵攻を公表してから一年、築館宿から奥羽山脈側の三郡を手中にして(少な!)停戦し一年の休戦協定を結ぶ事となった。


南部晴政は北信愛の献策を受け、二倍以上に膨れ上がった領土を効率よく治めるため新たな領地割や転封、功績の無かった家の取り潰しなどを行うため不来方城に一門と従う各家の代表を集めた。


「と言っても、ある程度の地割りは決まってるんだがね、問題はやはり意気込んだ割に戦功が少なかった九戸連合と冗談みたいな捕虜をとった馬鹿どもの処遇だな。」


石川高信 「誰が馬鹿だ誰が。」


「おや高信殿、何の事ですかな?ところでうちの祖父は何処に行ったかご存じありませんか、先程から探しているのですが?」


「外の軍事教練所で信仲殿とじゃれてるぞ、捕虜が増えたのはお主の策が悪いんじゃないか。」


「私もまさか二万も集めて山中に迎撃軍を向かわせるとは思ってませんよ、普通は領地ギリギリで迎撃に入るものなのに、公称はあくまでも公称適当に派手な数字をだしただけです、本当に二万で迎撃するとか呆れて物も言えません。」


「それを撃退して捕虜をとった我々が悪いみたいに……」


「悪いですよ、将と足軽頭以上を残して解放すればいいでしょうが雑兵なんて百五十文にしかならないのに、何食食べさせたんですか、赤字ですよ、赤字!」


「良いではないか、ちゃんと一人頭、百五十文手に入れて来たんじゃろ。」


「当然、でなきゃ大赤字だったんですからね、次からは赤字になりそうなら身ぐるみ剥いで解放してくださいね。」


「ヤレヤレ相変わらず鬼だな、金が絡むと。」


「どんぶり勘定な経営は後で必ず後悔しますよ、キッチリニコニコ明朗会計です。」


「九戸の方はお主のにも責任があるじゃろが、あんなに早く総大将の大崎義直を捕まえおって作戦が台無しじゃ。」


「くっ、たしかにそうですが、大量に捕虜を取ってあの地域一帯を壊滅しかけた尻拭いをが出来たんですからケガの巧名ですよ。」


「まあ、割を食ったのは九戸と言うことか、作戦どうりに大勝とはなかなかいかんもんじゃのう。」


「そうですね、計画どうりにはなかなかいかないですね、それと九戸の損失補償はしますから、協力してもらいますよ。」


「九戸は金持ちじゃしほっとけばいいじゃろ。」


「陸中や羽後の小領の者も参加してます、後々の事を考えれば冷遇はできませんよ。今回は金子で我慢してもらいますがね。」


「金子ってまさか。」


「ええ、まさかです。」


「老い先短いジジイの金を奪うとは、本当に鬼じゃな。」


「なにを言ってるんです、まだまだ働いて貰うんですから大丈夫二十年はいけます。」


「はーヤレヤレじゃな。」


◆◆◆


「おお、信愛殿ちょうど良いところに、ちょっと相談事があるんだが。」


北信愛 「なんです?いまちょっと予定が詰まっているんで手短にお願いできますか。」


「実は、大浦から援軍で来て貰っていた小笠原殿と兵がねうちに来たいって言ってるんだが。」


「またですか、仙北の戸沢殿は直接治めていたから調整は簡単でしたが、大浦となると話がややこしくなりませんかね。」


「決死隊で半分位死なせたからね、残された家族は全員面倒見るつもりだし、褒美関係の不公平な事はしたくないからね、なんとか地割りで調整出来ないかな。」


「地割りでって、あれだけ浅虫に拘ってましたが良いんですか。援軍の兵は二千だから二千戸……野辺地辺りまで削る事になりますよ。」


「約束は約束だし田名部領の境目辺りまで削られるのは正直痛いんだが、まあなんとか防御体制を考えておくさ。」


「……八戸港を手放すのは駄目ですか、南部家中でも問題に上がってます、貴方が開発したのはわかってますが、正直突き上げが面倒くさいので形だけでも本家の管理下に置きたいのですが。」


「ウーン、正直それほど執着してる訳では無いんだけど、少なくとも大型輸送艦が完成するまで権力の二重構造で開発が遅れるのは勘弁してほしい、高炉関連の物の流れを理解出来ないとかえって損害がでるんだよ、ある程度技術者が育ってからじゃないと金の卵どころか、金食い虫にしかならないよ当分は介入して欲しくない。」


「そうですね、正直私でも複雑すぎて理解できないところがありますから。」


「全体の流れを理解出来ないと港が混乱する、本音はもっと大きな港が欲しいんだよね、石巻とか塩釜とか、地形的にはいいけど釜石を一から開発するのは辞めとく。」


「石巻は今は葛西家の支配地ですし、塩釜までは岩出山を抜かないといけませんしね。」


「あー岩出山ね、アレはなんとかなりそうだよ、ちょっと準備に掛かりそうだけとね。」


「岩出山をですか、準備ってどれ位です。」


「高炉を完成させて硬鋼の長い奴を造らないとそれを開発できないから、完成まで三年位かな?」


「三年ですか……八戸港もなんとか今のままで運用できるようにしておかないと……本家の目を陸前に向けておく必要もあるか、築館宿の砦が機能するのは二年後位でしたね……大崎、伊達とは政栄殿抜きでしばらくやって貰いますか。」


「信愛殿……結構エグイ事言ってますよ。」


本家連中じゃあ勝てない……まあ俺もそう思うけどね。


「地割りや本家連中の事はなんとか調整しましょう、ですが高炉関連や内政はやって貰いますよ、外交はどうしますかね。」


「奥州探題を継ぐにしても将軍家や朝廷とは仲良くしておいた方が良いからね、といっても、官位がある人じゃないと使者にもなれないし。」


「高信殿に頼みたいんですが、築館宿を任せる事で地割りも済んでますし、まさか晴政様に行けと言う訳にもいきませんしね。」


「少しお金積んで、俺と信愛殿、九戸の政美殿と実親どの高信殿の息子あたりは官位を手にしとかないと、これからの南部家の外交を考えれば今川とか古河の公方とか、うちより家格の高い所との交渉は必然なんだし。」


「お金ですか、ハァ官位を金で買う時代なんですね、その辺も後で話し合いましょう、残念ですが時間がありません、小笠原殿や兵の件は了解です。」


「ひきとめて悪かった、よろしく頼むよ。」


◆◆◆




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