早馬
中新田城 一ノ丸
政栄は九戸実親を呼び出して今後の行動について話し合いを行っていた。
「やってくれましたな、実親殿。」
「いやあ、やはりバレましたな。」
「きちんと確かめなかった私も同罪ですが、部下達はともかく我々ふたりの戦功には成りませんからそのつもりで。」
「そんな~、せっかく重要拠点を落としたのに……」
「戦功と引き替えにお咎めなしになるよう交渉が巧くいくことを祈っていてください。」
「あー大丈夫でしょ、政栄殿にお任せしますから。」
おい!この腹黒坊ちゃん最初からそのつもりだったな、くう~そこまで俺を利用するつもりだったとは不覚。
「はぁー、分かりましたこの話は私がなんとかしましょう、大崎様との交渉はひとま……」
「大崎って、敵の総大将ではないですか、なんで?アレそれでは戦は終わりですか?」
「あー、大崎様が石川殿の迎撃で中新田城に詰めていたことはご存知なかったのですか、むせき……ゲフンゲフン、話を戻しますが我々は二ノ丸まで後退します。」
「交渉では、本丸と引き替えに将兵を解放するのでしたよね、まさか……」
「ええ、大崎様も解放しますよ、全軍を停止させた後で。」
九戸が気合をいれて揃えた軍勢も台無しだよねー。
「うわー、父上に怒られるどうしよう、政栄殿なんとかして。」
俺は未来からきたロボットじゃないから。
「そこまでは面倒みきれません、叱られてください。」
「大崎義直を殺っちゃうの駄目ですか?戦のドサクサで仕方なくって事で。」
「駄目です、もともと古川城を攻撃対象から外しているのは大崎家を生かして利用するためなんですから、信仲殿も了承したことです。南部全体の方針ですからねバレたら粛清ものですよ。」
「そんな~」
「まあ、話を戻します、二ノ丸まで軍を後退させて、大崎様が最上の将と話し合いをして合意すれば、大崎様と護衛千名を残して解放するという流れになりますね。」
「父上は怒ると恐いんですよ。」
聴いてねえよクソ坊ちゃん。
「では、そういう事で軍を後退させて再編成します。築館との間の補給物資の輸送も考えませんといけないので失礼します。」
「あっ、政栄殿、待って!」
待ちません、黙って叱られてください。
◆◆◆
中新田城 二ノ丸 八戸政栄の陣
ちっ!まったく余計な仕事が増えちまったぜ、一関砦を直して、築館に砦を建設して、中新田城の修復作業の手配、停戦交渉に、後で九戸と話し合いもせんとな恨みは買いたくない……今年中に帰れるかな?
斎藤衆伝令 「若!、大殿から早馬が書状をこれに。」
「ご苦労様伝令は休憩させといて、あとで大量に早馬をだすから準備しておいてくれ。」
「はっ!」
じじいからねー、そう言えば奥羽山脈の山ん中で戦してたね、ああ懐かしい思い出だ、中新田城落としたからもうどうでもいいや。
なになに、戦は大勝利……ほーそりゃよかったね、よし、山道を広げて花巻から中新田まで街道をつくらせよ。
立ってる奴はじじいでもこき使えと格言もあることだし、暇なら働け!
んで捕虜を一万五千程取った?……
ん?捕虜を一万五千だと?……
何を馬鹿なコとをアホか、食料とかどうするつもりだ、花巻に確かにあるが全部つかったら戦闘継続は……ああしなくていいけど……いかん!早く解放しないと無駄に食料が減る!
まて。ただで解放しては勿体ない、なんとか金にって大崎はここにいてる古川城にかえれボケ!こんな出城に金なんかあるか。
よしわかった!気合をいれて交渉だ!早く解放しないと食料がへる!
◆◆◆
中新田城 本丸
大崎義直と氏家定直の停戦交渉に関する会談が終わり、氏家定直が最上の詰所に戻ってきた。
守棟 「如何だった南部からはなんと。」
「……本丸と交換で将兵の解放するそうだ。」
「大崎殿もか?」
「一旦軍を止めて、古川城に返すそうだ兵も護衛千名ほど残してよいとか……」
「なんだそれは?対応が甘々すぎないか?一応大崎殿は総大将だろう。」
「分からんか?南部は大崎家を飲み込む腹だ……逆らえない状況……もうほとんど大崎家の力は削がれたな、ここから大崎家の奥州探題の名前だけ利用して、伊達や相馬を潰していくと宣言したようなものだ。」
「なっ、そんな……」
「一関でも本丸と交換で兵を解放している。南部は約束は守る構えを続けてきた、足枷にならないとは限らんが大崎義直を解放するのは副次的効果がいくつあることやら。戦っても命を取らぬ相手か……弱いならともかく、三国を併合した南部にやられるとなると少領の所が南部に降伏するのは止められまい。恐らく葛西などは大事に扱われるな、良い宣伝になる。」
「そんな、では我々はどうすれば。」
「……どうだ、南部と交渉してみんか?」
「交渉……まさか。」
「中新田城を抑えられたことで、最上家が陸前に援軍を送るのは難しくなった、なら送らなくても言い訳が立つわけだ。」
「この機に羽前を統一して他の勢力に対抗する、最上家が生き残るにはコレしか無い。」
「……義守様は?」
「引退していただく、専横と罵られようと源五郎様を補佐して羽前統一をはたすのだ。」
「それに関しては俺も賛成だ、で南部とはなんと交渉するんだ?」
「不戦でよかろう、こちらは伊達に援軍を出さない、岩出山が落ちるようなら米沢を南部の力を借りて落とせば良い。」
「飲むかな?」
「飲むな、これで正面に立つのは伊達だけ相馬や二本松、蘆名などの援軍もあるだろうが最上家と軍を二つに割らない分有利に戦える。」
「わかった。交渉には俺も連れていってくれ。」
◆◆◆
中新田城 本丸
大崎義直の八戸政栄の会談
「度々(たびたび)呼び出してすまんな、早馬の件もあるし早い方が良いと思ってな。」
「いえ、案件を素早くこなそうと為さる姿勢、素晴らしいかと。」
いや、ほんと一日四万五千食とか冗談じゃない今日中に早馬をだすんだい!
「そうかの、ハッハッハ。」
「それで、最上家はなんと。」
「先ほどの条件で了承してくれた。早速協同で早馬をだそう。」
「それは、ありがたい既にしたくは整っております。あとは旗と書状を持たすだけとなっております。」
「一関の時もそうだがお主は仕事が早いのう、わしも準備はできておる旗と書状すぐに届けよう。」
「では、この件はここまでで、停戦後の取り決めの話をしておきませんか。」
「停戦後かどういう意味かな?」
「今は収穫時期の直前でごさいます。捕虜となった兵もだいじな領民であり働き手です。」
「ふむ、そのことに関してはワシも心配していたのだ。」
「すぐに解放して収穫作業に従事させるため停戦合意してすぐに解放する算段を取るのはいかがでしょう。」
「なる程だが、古川城ならともかく出城のここでは金子もないしのう。」
「いえいえ、金子など後払いで良いではないですか、捕虜一人幾ら、将一人幾らだけきめて各家が渡せばよいだけ、南部は金子が少ないので一関の時の価でお願い致したいのですが。」
「ふむ、あの時の価なら他の家も反対しまい、わかったそのことも書状に書きすぐに届けよう。」
「ありがたく、こちらも、収穫作業に従事させるため兵を早めに退けるのはありがたいですから。」
ヒャッホーラッキー捕虜の食事代位にはなるかな。ふーヤレヤレ。
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