中新田城 停戦交渉
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本丸を囲んで、門前に木砲(撃てるンです)を設置してから交渉の使者を本丸に送りこんだって……俺ね。
「んじゃそう言う事で、私が使者として行ってきましょう。」
実親 「どういう事?まあわかりますけど、政栄殿しか交渉できそうな人が居ませんからね。」
まあ、そゆこと。
「泰造!暇なら付いてこい、護衛任務だぞ。」
「えーお偉いさん居るところとか、堅っ苦しくていやだよ。」
爺 「嫌だじゃない、いかんか!!」
「うわ、わかったよ、いくよ!いけばいいんだろ。」
「後ろで背後霊してれば良いから。」
「なにそれ、なんか怖いんだけど。」
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泰造にはちょっと聴きたい事があったからな、本丸への道すがら話をしとくかな。
「なあ、泰造、お前なんで爺の名前をだして仕官しないんだ?」
「俺は足軽から天下取りになるんだ!」
そうか、そういえば中二病のバカだったか……よしよしバカはバカで使い道が沢山あるからな。
「そうか、じゃあ足軽のうえの足軽頭にしてやろう。」
直参じゃないから俸禄はほぼないけどね。
「本当か?」「おう!今から俺の草履とりでいいな。」
「草履とりかよ。」「出世とはそう言うものだ、一つ一つ偉く成っていくのが格好いいのだ!」
次は足軽大将補佐かな?
「そうか、それならいいぞ。」
よし、無料の護衛ゲット!
爺の名前をだせば侍大将から草履とりだったんだが余った石高は小助に付けとこう。
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中新田城 本丸
「この度は交渉を受け入れていただきありがたく。」
久々のど、げ、ざ、ふう~いい加減にしとけ!なんであんたが前線の城にいるんだよ、古川城でドッシリしてればいいだろ。
大崎義直 「まさか八戸殿とは、二年振りだな。」
「はい、ごぶさたしております。」
「前線基地となる中新田城に詰めていたのたが、ワシが居るこの城を落とされるとは。残念だがこれも武家の宿命か……。」
ふーん、中新田城ね……ん?
中新田城か~……やべ、石川の爺さんの目的地じゃねえか!
あちゃーなる程九戸の攻略目標に入って無いわけだな。
「それでは、本丸の明け渡しと一時停戦の話し合いといきたいんですが……しばらくの間はこの城から解放するのは無理そうですね。」
「ん?何故だ?」
お前が居るからだろ、一応総大将でしょう名目上のね!
「古川方面は九戸が侵攻している真っ最中ですから、大崎様には中新田城から古川城に戻って貰うとして、一旦南部の総大将に早馬をだして全軍に戦闘を停止させませんと。古川に帰る前に九戸に刈られますよ。」
「色々と話が飛んでしまったようだが、ワシを解放するつもりなのか?」
「こちらから、本丸と将兵の解放を条件に申し入れたのですから、約束は守りますよ。」
「そ、そうか、なんというかそれはそれでありがたい、それでは九戸を止められないとはどう言う事なのだ、八戸殿は交渉を任されているのであろう。」
「ええ、それは間違いないなく、ですが九戸も晴政様の命令を受けて侵攻している訳ですから、私が直接九戸の侵攻を止めるのは越権行為になります、そこでどうでしょう大崎と南部の旗をもたせた早馬を協同で出して北上川でにらみ合っている葛西、大崎、伊達の陣を通過して晴政様の陣に向かわすと言うのは、花巻周りで時間を取られると古川方面が大変な事になりますよ。」
参ったね、古川城は残して大崎とは停戦する未来図を書いてたんだがここで大崎に滅亡されるとうち(南部)が奥州探題になる前に、伊達が自称するかもしれんし、将軍家との仲も悪く成りそうだからな。信仲殿には前々から古川城は攻めないように言ってあるから良いとしても、他の功に焦った連中に大崎義直が殺されたら目も当てられん、かといって総大将をいつまでも軟禁しておくのもなあ…大崎と伊達のバランスも考えておかないといかんか。
大崎は南部に取り込んでおいて次の当主の時にでも、養子なり譲り受けるなりの形で奥州探題になるのが南部としては理想的だからな、うーん信仲殿には伊達の城を落としまくれとでも書状を送っとくか。
「なる程、九戸と八戸はそれぞれ命を受けて行動中か、分かった協同で早馬を出そう。」
「それからの城にいる伊達、最上、葛西の援軍は解放しますので城から出てもらってかまいません、城にいる大崎の軍は義直様の護衛が必要ですから千名ほど残されて、負傷者は村へ帰されてはいかがでしょう。」
食料も勿体ないし、軟禁する手間もかかるし正直はよ帰って。
「おおそうか護衛の事まで気を遣わせて悪いな、わかった最上と話し合って決めたいのでしばらく待って貰ってよろしいか。」
「では、決まり次第に早馬を出したいので後で大崎様の旗と書状をいただけますか。」
「そうだったな、決まり次第すぐに届けよう。」
「将兵の不安もあるでしょうし、我々は二ノ丸まで軍を引かせていただきます。」
「うむ、それはありがたい、囲まれていると思うと落ち着かんからな。」
「それでは一旦失礼させていただきます。」
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「なあ、あんなに譲歩しちまっていいのか?大将も帰しちゃうって。」
「大崎義直には生きて帰って貰った方が南部の役に立つからな、今死んで貰ってはちょっと面倒くさい。」
「ちょっとかよ、それで生かされる大崎様が可哀相な気がしてきたよ。」
「伊達や相馬と戦って不利になったとき大崎様を使って停戦や交渉をするのさ。東北地方から、古河の公方や将軍家、朝廷に調停を頼むのは時間も金も掛かるからな、交渉に応じなければ奥州探題に逆らった逆賊として後でみんなでタコ殴りにする。」
「ここに、鬼がいたよ……あれ?と言うことは今俺達って逆賊なのか?」
「停戦するから逆賊じゃないよ、と言ってみたり。」
「本当に大崎様に同情するよ。」
「泰造、大名は地位のある人ほど、力が無ければ自分の命さえ自由に出来無いんだよ、まあ大崎殿は奥州探題の地位のおかげで殺されずに生き残れるんだから幸運なんじゃない。」
「俺らに城を落とされて、九戸に領地もけずられて、生き残っても利用されて、踏んだり蹴ったり殴られたりで幸運かよ。」
「ああ、この時代生き残れる保障があるだけで幸運なんだよ。」
「あんたのちょっとの保障だけどな。」
「そうだな、例えば晴政様が殺せと言ってきたら殺されるんだから、ちょっとの保障なんだよな、まあ信愛殿がいるからなんとか諫めてくれるだろ、おおそうだな先に信愛殿に書状が届くようにしておかないとな。」
「いい加減で危ない保障だな……でも幸運なんてそんなもんか。」
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誰かが護衛とかで居ると、独り言で説明しなくて良いからありがたい。




