水平城(中新田城)の戦い その三
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中新田城 正門裏
最上兵侍大将 「よし!定直様の許しがでたぞ!開門!味方を中に入れるぞ!」
ゆっくりと門が開いていく、その陰には千ほどの足軽達が槍を隠し持ってすぐに槍衾を組めるよう息を潜めて整列している、さらに定直の命で開いた門からは見えにくい所に柵を立てて馬止めを作らせ南部の騎馬対策をしていた。
「門があいたぞ!」「助かった!」「チクショウ、あのくそガキめ!」
敗残兵(八戸兵)部隊が正に命からがら入城してきた。
最上兵足軽頭 「そこにいると危ないぞー!、こっちえ来て柵のうらに入るんだ!」
泰造…… 正門の裏に伏兵……馬止めの柵まであるぜ、あのくそガキ感が冴えてやがるのか……おっと合図だったな。
「おい!」「はっ!」
「助かった!ありがとう。」「八戸のやつらに追われてきたんだ!」「あのくそガキ集団で矢を射掛けてきやがって」「危なく死ぬ所だったぜ。」
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中新田城 正門前
【斎藤衆】 「若、敗残兵(八戸兵)部隊が門の中に侵入していきます。」
スゲーな泰造の奴、馬に跳び乗って部隊に追いついちゃつたよ。さすが爺の孫?そういや見たことなかったな、どっか修行でもしてたのかな?
まあ、それは後でいいか、今は開門して、何も音沙汰がないんですがねー。
「うーんちょっと怪しいな、こんなにすんなり門を開けるものかな……罠かな?」
たいていこういう場面では騎馬隊で入城する時間を稼いだり、門付近から弓兵で矢の雨を降らせるものなんだが。
いかにも、どうぞご自由に感がはんぱない……
「若!部隊から八戸兵に追われてきた!です。」
やべ、やっぱ待ち伏せかよ。怪しまれないように南部に追われてきた、は伏兵なし突入せよ!八戸に追われてきた、は伏兵あり突入中止と決めておいて良かったー。
「青旗!実親殿!突入中止!」
青の中止の旗を上げる、それを見て門に突っ込もうとしていた騎馬部隊が曲線を描きゆっくりと戻ってくる。
「政栄殿、如何された?」
「突入部隊が待ち伏せを知らせてきました、先方は八戸兵足軽にやらせます。」
「わかった、ではいったん騎馬隊は下げさせて私は九戸の足軽と参加します。」
騎馬部隊が使えないならそのほうがいいか。
「分かりました、直衛(護衛)と本陣に参加してください。」
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折角開いた門だ有効活用せねばな、再編を急ぐぞ!
「盾兵は足軽達に槍の柄を渡して短槍で使うように、足軽達は柄を受け取ったら長槍に組直せ!、それが終わったら全軍盾兵を外一列に左右に六列列縦隊!」
うちの樫製の金属関節式の槍はニメートルの太めの槍だが柄を足せば三メートルの槍になるのさ、バランスは悪いけどね。
叩き合い?使わんよあれは竹柄の折れにくい奴でないとね。
雑兵物語は貧乏な領主の苦肉の策、道三も信長も樫製の長槍を使い突いていたと記述がある。要するに素材の問題なのさ。
九戸実親 「政栄殿、我々は?」
「八戸兵が突入して左右に道を開きますので、敵の裏に回って囲んで下さい。」
「心得た!九戸兵、八戸兵の後ろに四列縦隊!」
理解はや!坊ちゃん頭は良いのかね?
六列の八戸兵の後ろに本陣その後ろに四列の九戸兵、最後尾に騎馬隊と縦長の陣形を取った。
「実親殿、合図を!」
「では改めて、全軍突撃!」
八戸九戸兵 「オオオオオオオオ!!!」
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中新田城 正門裏
守備側 大崎最上陣営
斥候 「敵が突入してきます!」
侍大将 「定直様に伝令!、本陣の旗が見えたら槍衾を組んで突撃だ!」
攻撃側 八戸九戸陣営
政栄 「八戸兵!最後尾は門から離れるな!密度を上げれば大丈夫だ!よし左右に方向転換!槍伸ばせ!!」
八戸兵が左右に二つに割れて門の陰にいた敵の槍隊と向かい合う、奇襲を行ったはずの大崎、最上兵は驚愕する、整然と槍衾を組んでいたのもそうだが、なにより南部兵の槍が自分達のより半間ほど長かったのだ!
守備側陣営
「なっ、我々のより長い。」「あれ?もしかして。」「不味い、どうする?」
侍大将 「ええい!ちょっと長い槍がなんぼのもんだ!全員突撃だ!!」
「オオオオオオオオオオオオ!!!」
攻撃側陣営
政栄 「長いのは足と一緒で正義なのだよ!俺はそこそこだがな。」
無言で肩を叩く実親。
「まだ成長するかもしれませんし。」「そうだな、諦めるには早いよな。」「「ハッハッハッハッハ!!」」
「と、言う分けで、突撃!殲滅せよ!!」
実親 「九戸兵は左右に割れて廻り込め!」
「オオオオオオオオオオオオ!!!」
大咆哮とともに槍衾がぶつかり合う!
無常にも、大崎最上兵の槍は密度を上げた盾兵に防がれ、半間ほど長い槍で攻撃範囲外から一方的に突かれた為、瞬く間に隊列が崩壊した。
「まあ、こちらが数も上なんだし当然なんたがね。」
侍大将 「致し方なし正門は放棄!!撤収!!」
「撤収、撤収!!」
踵を返しパラパラと逃げ出す大崎最上兵。
廻り込んだ九戸兵の横槍を受けて次々と討ち取られていく。
「実親殿、深追いはせず適当に切り上げて下さい、八戸兵は再編成、本陣を中央に前後に方陣!」
さて、弓兵が現れて矢を射る……通路ではなさそうだな、それほど段差がないし櫓も目視できる所には無い次の廓まで弓兵の出番はなさそうだな。
敵兵が二方向に分かれて逃げ出したか、隠し扉とか面倒くさい造りじゃないだろうな、まあ開かない門とかに誘導の意味もあるのかな?、この水平城は外観からかなり広いし、見通しの悪い通路からの横槍もあるだろう、方陣で盾兵を外側に編成してからゆっくりと追うとしよう。
「本陣の工兵隊は半分は残って突入部隊と馬止めの撤去作業を、突入部隊は着替えておけよ。」
「編成終わりました。」
「実親殿、八戸兵で露払いをします、後退できる位の間を開けて九戸兵に付いてきてもらいます。」
「わかった、盾兵は足はないが攻城時には便利だな、うちも考えて見ようかな。」
「よし!では左手からいってみますか、あっ爺、突入部隊から斎藤衆抜いて連れてきて。」
「はっ!すぐに。」
詰まったら泰造とか身体能力の高い連中で特攻隊編成しよ(鬼)。
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中新田城 一ノ丸
氏家定直…… 正門は取られたか、密集した盾兵があれ程防御力があるとはな、それと、我々のより長い槍を装備していたとは、斥候からは報告は上がって来なかったが、奴らいつの間に……槍衾の待ち伏せは使えないな、城攻めに足の遅い防御力のある部隊とは、非常識なやつだな……いや時間的余裕があればいずれ定石になるのかもな。
伝令 「正門から左手の殺し間に向かいました。」
「よし、瞞し門付近に兵を集め、三方から弓で攻撃せよ!」
暫くは開かない門で遊んでいてもらおう、その隙に反対側に罠の設置をさせるか。
定直 「伝令!」




