表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/163

築館宿の戦い

◆◆◆


築館宿の戦い


一関砦陥落から慌ただしく皆が戦いの後始末をするなか夜が明けた、朝一番で予定通り増援の八戸領の工兵部隊に五十台ほどの馬車と道路整備の道具が届く。


【政栄】 「一関砦攻略に参加した兵は交代で休息をとるように。築館宿砦建設、一関砦再建の道具は後から届く予定だ、今は街道の木を切り倒し見通しを良くしながら築館宿へ向かうぞ、負傷者と見張りの兵を残し五千に再編成する。」


【道盛】 「分かりました、一刻程で再編成を終わらせます。」


【政栄】 「決死隊二千五百には先頭に立って貰う、作戦は変わらずだ。」


【信浄】 「今回は奇襲でしたからな、次が本番と言うわけですな。」


【政栄】 「生き残るための策は取れるだけ取ったあとは……」


【道盛】【信浄】「「やるだけですな。」」


◆◆◆


築館宿の制圧といったが……


やってることは道路整備なのよねー


まあ要するに騎馬隊や馬車が通れるようにすれば良い訳で、築館宿まで五里(約二十二キロ)の行程を木を切り倒して見通しを確保しながら進んでいく一日一里といったところか、倒した木は築館に作る砦の建材にするから一石二鳥ね。


さて一関砦陥落から、三日か四日目ぐらいに夜襲があるだろう、距離的にもこれ以上道を広げられて近づかれると騎馬隊の勢いを止めるのが難しくなるからね。

交代で睡眠を取らせる訓練は夏の楽しいキャンプで皆やったからここにいる兵は全員出来るし、この作戦が終わったらゆっくり休ませてやるからな。


◆◆◆


一関砦陥落の前日


陸前 大崎領 中新田城


中新田城……鳴瀬川近くに立てられた水平城(堀に川の水を流している)で高さはないが広く万の兵が守備につける二つの廓を持つ防御に優れた城で、羽前、陸中の抑えとして重要な地点に作られた城である。

ここを抑えることにより最上領と大崎領を行き来する街道の分断が可能になる戦略上の重要拠点なのです。


中新田城 大広間


大崎義直と氏家定直の会談が行われていた。


【義直】 「最上の宿将たる定直殿が直々にやってくるとは、何事が起こったのかと思ったが、なる程これは危急の要であるな。」


定直…… まさか中新田城に義直殿が詰めて居られるとは運が向いてきたか。古川城までの行き帰りで二日間は得をしたな。


【定直】 「一関砦からの街道の出口を抑えて南部家の騎馬隊が陸前に雪崩込まぬよう、守りに就くための兵をお貸し願いたい、代わりの兵は倅の守棟が三千の足軽を連れてこちらに向かっております故是非。」


定直…… 常識なら兵の貸し借りなどあり得んのだが、大崎と最上は羽州探題、奥州探題の間柄で血の繋がりも濃い敵の裏を掻き精鋭を揃えるにはこれしかあるまい。


【義直】 「あい分かった、此方としても南部晴政と石川高信の迎撃で将兵が出払っていて、ワシの直属の兵しか自由に出来ない状況ではどうにもならなかった所だ、定直殿が行ってくれるなら喜んで兵を貸そう、山中に騎馬を送る訳にも如何から馬は十分用意出来る、直属の五千の兵を貸すから存分に力を振るってくれ。」


【定直】 「五千も!ありがたくお借りします。」


定直…… 人が良いというか、平和な時代なら名君として名を残したろう人物なんだが、おっとこの決断をムダにしてはいかん。


【定直】 「では、急ぎ築館宿の守りに就きます。」


【義直】 「定直殿頼んだぞ!」


◆◆◆


奥羽街道 築館宿手前


【伝令】 「定直様、街道の奥から人の群れが。」


【定直】 「人の群れ?何処の軍ではないのか?」


【伝令】 「旗先物も鎧も武器も持つておらぬ様子。」


【定直】 「わかった、話しを聞きたい誰か一人連れてくるように。」


【伝令】 「はっ!」


定直…… まさか、迂回したのでは無く一関砦を落として……

いや、そんな馬鹿なあの要害の砦をこんな短期間に陥落させるなど不可能だ、あれは兵糧攻めでしか落とせん砦のはず、まさか裏切り行為か?


◆◆◆


定直…… 一関砦は落ちたか……


兵の話しでは、一ノ丸から二ノ丸に敵が攻め込んできたといっていたが、四方を崖にかこまれた砦に外から侵入したとは思えん、やはり裏切り行為があったということか、葛西晴信か柏山明吉か、葛西家は策にはめられたというのが源五郎様の見解だったなワシもそう考えるのが辻褄が合うと思う、だが柏山?あれは胆沢の地頭の家だろう、南部家は柏山を砦に埋伏させていたとでも?あり得ん……あとは百々隆元は古川近くの城主で大崎の重臣、あり得んなこの一件は分からない事が多すぎる。

ただ重要な情報は手に入った、敵兵は五千程かこれなら十分奇襲でなんとかなる。


築館宿に間に合った事といい、まさに天は我に味方したといったところか。


◆◆◆


奥羽街道 築館宿の手前二里


政栄…… 明日は築館宿に入れる距離なんだが、ここで奇襲が無ければ、敵の援軍が間に合わなかったか、俺が深読みし過ぎたか……


【爺】 「若、敵を発見しました。」


【政栄】 「きたか、信浄に作戦どうり行動せよと伝令を、道盛には守りを固めてゆっくり後退しろと伝令を、急げ!」


【爺】 「はい、直ちに!」


政栄…… 敵の誰かさんは楽をさせてくれないか、まあいい二年間鍛え上げた直参の力を見せ付けてやる。


◆◆◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ