新年会(1555)
少し戻って、新年会からでごさる。
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1554年 12月
三陸沖 快速南部丸 船上
「……ということで、葛西家の城を攻めることは禁止となりました。」
【七戸家国】 「なる程、昨年からの噂はまことでしたか、わかりましたどちらかと言えば守りのほうが得意です、お任せ下さいと晴政様にお伝え下さい。」
うん、あんたの得意とか知らんけど、攻めずに攻められてろって、無茶振りを可とか無いわー、作戦考えたの俺だけど無いわー。
「確かにお伝えします。七戸殿三陸の守り頼みましたぞ。」
閑散とした漁村なんて攻めない攻めない。
じじいと交代で三陸の守りにつく七戸殿を連れて三陸に来ていた。ぶっちゃけ葛西家の城を攻められると俺の策が使えなくなるため七戸殿に釘を刺しに快速南部丸で送った訳だが……。
ぜってー攻めないなこの人。
やる気とかじゃ無く、根本的に攻勢に向いて無い気がする。
ヤンデレの推薦は正しかった。
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【新田盛政】 「お迎えご苦労」
おつとめごくろうさまでした……とか言ったら似合うんだがな。
「はい、壮健そうで何よりです。」
「心にも無いことを、背中が痒くなるぜ。」
もちろん心にそんなもんあるかー!
「盛政様、現状について報告があります。」
「だいたいは(斎藤衆から)聞いているが詳細を聞こうか。」
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【盛政】 「しかし、お前もその手の策が好きだね嫌われるぞ。」
「構いませんな、策など引っ掛かる方が悪いのです。」
「でだ……、お前の直参二千と大浦の二千で一関砦を攻略って勝算は有るんだろうな。」
「一関砦攻略は準備に手間取りましたが、正攻法の他、裏の手と、最悪草を使うので問題ありません。」
「草は十年以上仕込んでるんだから使うんじゃねえぞ。」
ていうか、どの辺まで草を仕込んでるんだよ、爺も大殿の許可がないと言えないとか言うし。
「分かっております。問題は……」
「築館宿付近での待ち伏せか、考えすぎと言いたいところだが、晴政に伏兵を仕掛ける手並み、騎馬で陽動したうえでのハメだからな、十分あり得るだろう。」
【盛政】 「で、そこまで考えたからには対策もあるんだろ。」
「それが、ゴリ押ししか思いつかなくて。」
「ゴリ押し結構、勝算は?」
「決死隊を使って伏兵を山道まで引き出します。後は数の勝負になるかと。」
「わかった俺の直参二百は騎馬だから貸せんが問題無いんだな。」
「そこは問題ありません、盛政様には、高信殿の援軍の指揮か、築館宿付近の城の制圧に回っていただく予定です。」
「なる程、うちで戦功を独占するのもアレだからな高信の援軍に回るよ。」
「わかりました、信愛殿に書状をしたためておきます。」
「ん?新年会はお前が行くんだぞ。」
「はい?」
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1555年 正月
不来方城 大広間
後見人が帰って来たんだから、新年会はじじいが行くべきだろ。
なにゆえにまた俺なんだよ、新年会に来るとロクなことがないからな、正直来たくなかった。
三領合わせても三万石ないから一族衆でも末席なのは目立たなくていいんだが、しかし、羽後、陸中の小勢力を取り込んだからか大広間でギリギリだな、一関を落としたらこの城じゃあ新年会はできないな。
【戸沢道盛】 「おめでとうございます、政栄殿、八月以来ですなご無沙汰しております。」
三ヶ月ほど軽く(軽く?)訓練した後、収穫時期の前に仙北に帰ってもらったんだが、まあ元気のようだね。
「道盛殿おめでとう、収穫はどうだった。」
「戦がないと開墾が進んで良いですな。二千石は多く収穫できましたよ。」
「豊作ですね、それはなにより。」
今年の作戦で使う兵糧もギリギリいけそうだとヤンデレ報告書に書いてあったが東北地方は豊作とみていいかな、間に合わなかったら来年に繰越だったんだがね、残念。
とはいえ今回の今川の尾張侵攻ももう手詰まりな感じだし兵士を帰したら織田も息を吹き返すだろうな、人材ゲット出来ないよねこれじゃあ。
と言うわけで予定(最初から無理)も無くなったし、大人しく一関攻略に専念しますかね。
【道盛】 「ところで、今日外向きに発表するのですか。」
「ああ、晴政様から最後にね、とっとと帰りたいよ俺は。」
陸前攻略の発表を行い敵に警戒させるって、今回は作戦の内だから良いとして、よく考えたらアホらしいよね士気とか知らんし。
「家臣の件よろしくお願いしますぞ。」
「一関攻略後のゴタゴタが終わったらね、本当にいいのか陪臣になっちゃって。」
「ええ、一関攻略楽しみですな。」
何かしらんけど、作戦話したらノリノリに成っちゃって大丈夫なの?、あんたは決死隊の隊長なんだけどね、納得してるみたいだからから良いけど。
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