戦力確認 特殊訓練
1554年 五月
八戸領もだいぶ暖かくなり、近隣の山々からも雪がようやく消え始めたよき日
くんれんじやー
ハッハッハよい敵兵は死んだ敵兵だけだ!!
わるいこは、いねがー
あーはっはっは!!!
「政栄殿!政栄殿!!」
「おう、誰だっけ?」
「戸沢です、仙北の。」
「うむ、思いだしたぞ。」
「これは、訓練なのですか?」
失礼な、訓練に決まっているだろうが。
ちゃんと、木と木の間にロープをつないで滑車で移動している。
どこからどうみてもくんれんじやー。
◆◆◆
「うむ、冗談はさておき、まずは低い所で滑車などの器具に慣れて置くことが肝心だからな、皆が怖がらぬよう見本を見せていたのだ。」
一堂 「…………」
「いきなり落ちたら死ぬような所で訓練したいのかな?」
【戸沢道盛】「皆、装備の確認作業をして訓練を始めるぞ。」
一堂 「はっ!!」
「うむ、こちらについて三日程だが、だいぶうちに慣れたようだな。」
【爺】 「慣れたと言うか、赤く染まりましたな。」
失礼な朱に交わったとでもいいたいのかな?
「なんだ、爺もやりたいのか?」
「我々は散々やりました。何度落とされたことか。」
「ちゃんと下に網を張っておいただろ。まあやってみないと改善出来んからな、実際よくやってくれた、ありがとう。」
「それで、後どんな事をするつもりですか。」
「バリスタの試射は終わっている、次はロープを張る訓練だな。」
「出来れば、大浦との訓練の前にある程度の動きが出来る用になって貰わんと。」
「直参の訓練は何をしているのですか?山にこもって隠れんぼや鬼ごっこばかり。」
「うむ、山中の隠密機動の練習だ食事をかけて攻撃側と守備側に分けたら皆必死でやるようになったぞ。」
「何というか、忍の訓練の方がマシに思えますな。」
「うむ、もしものために、石橋は叩いて壊してコンクリートの橋にしろだ!!」
爺 ……温いようにみえて、直参は本当に精鋭部隊になりましたな。九戸以外ならどこと戦っても一対一ならまず負けはしますまい、昨年とは体格も見違えます。
食事改善とかいって魚や肉をやたら食べさせてましたが、効果があるんですな。
「クックック、策士策を食いやぶれなのだよ。」
爺 ですが、時々意味がわかりません。
◆◆◆
直参と戸沢の兵を合わせて千か……直参の半分は正門に回したい……
大浦は最低うちの半分程度参加させないと戦功にならんしな。
直参五百と一般兵五百で正門を落とせるわけ無いよなー、嚢砂の計に最低二千、攻城槌の取り回しに二十
やはり合計最低四千は要るんだよな攻城槌案だと。
大浦が二千だとこちらの一般兵の割合が高すぎて正面攻略には使えないしな。
直参を増やすか……
ええい、仕方ない大赤字覚悟で直参千人募集するか、一人五石で五千石か……これでまた収支は赤字だな。
ちくしょうー。
◆◆◆
【戸沢道盛】 「決死隊待遇ですか?」
「うむ、生き残ったら直参に昇格などの特典つきだ。」
【道盛】 「しかし、この内容だと待遇が良すぎませんか。」
「前回までの生還率は六割を切っているんだよね、特に今回はあえて罠に飛び込むから何人生き残れるか分からない、そういう訳で希望者はほかの領の者でも構わない、もし戦死しても家族手当てははずむし、八戸領で残された家族の生活の面倒を見よう。」
【道盛】 「どんな地獄に叩き込むつもりなんですか。」
いや、あんたが隊長なんだが、まだだまってよ。
「囮部隊だからな、勿論生き残る為の装備や訓練はするぞ。」
【道盛】 「一つ聞いてもいいですか、この隊長は……」
分かるか、やっぱり。
「うん。」
【道盛】 「付いていく人を間違えたかな。」
◆◆◆
樹脂と麻糸で強化繊維の糸
樹脂と繊維はおおまかに同じぐらい大きい高分子体なんだが麻の繊維から糸をつくり松の樹脂(松ヤニ)を塗布して耐腐食性を持たせた漁業用の糸を作ってみた。(江戸時代の釣り糸や網の作り方参照)
勿論そこからロープにする為の技術は現代版だが、糸一本の強度を上げるのは限りなく難しい、戦国のころは釣り糸は職人による手作りの高級品だったわけだ。
それとは別の方法で、蚕や山蚕の生体組織から外科手術用の糸(天然テグスとか)を作ることもできるんだが………。
蚕からは絹糸(生糸)が採れるし、山蚕の繭からは天蚕糸と呼ばれる糸が採れ、そこから上絹という超高級品の反物を作ることができる、とてもありがたい(経済的に)生き物なんだよね、殺して漁業用の糸を作るなんて考えられませんから。
◆◆◆
で、なにしてるかといえば
【道盛】 「訓練もせず、こんなにのんびりして良いんですか。」
皆で釣りという名のタンパク質確保に来ました。
「新しく作った漁業用の強化繊維の実験を兼ねた食料確保だ。」
【道盛】 「本音は。」
「毎日やっても集中力が続かない、どうせ休むなら食料確保だ。」
【道盛】 「食料確保は絶対なんですね。」
「まあ、釣れなくてもいいから、のんびりしてくれ、昼寝してても良いぞ。」
【道盛】 「それでは、お言葉に甘えて。」
さて俺は続きを考えましょうかね。……




