伏兵
北上川 渡河場所
大崎義直
「南部の陣が移動を始めたか。」
まさか、白寿の言うとおりになるとは、義守殿も末恐ろしい跡継ぎをもったものだ。まさか南部の大将をこれ程たやすく討てる機会がめぐってくるとは。
ワシとて腐っても奥州探題大崎氏の当主、南部ごとき田舎者に大きな顔をされてなるものか。
必ず討ち取ってくれる。
◆◆◆
移動中
小声「じい、晴政様が討たれていたら、三陸に逃げて盛政様と合流、南部丸で八戸領に戻るぞ。」
小声「わかっております、花巻の渡しから遠野を抜けましょう。」
お家騒動で混乱する前に軍を整えないとな。
◆◆◆
北上川 渡河場所
「晴政様が渡り終えました。」
「よし、次だ、急げよ!」
晴政を降ろした舟が戻っていく、周りは、泳いできた者、河原で火を焚き暖をとる者であふれている。舟で武器、皮鎧などを運んでいるが、全然行き渡っていない。
舟が向こう岸に着いたとき、近くの森から鬨の声があがった。
◆◆◆
「敵襲、晴政様をお守りしろ!」
晴政
「敵襲だと、伏兵が潜んでいたのか?」
「晴政様、急ぎ鎧を。」
「馬鹿者!間に合わんわ!、槍を持て!みな武器を取るのだ!!」
◆◆◆
大崎義直
「天は我らに味方したぞ!!ゆけ!晴政を打ち取るのだ!」
南部一万に対して大崎三千ほどだが、川を渡った兵は四千ほどで殆どが武装していない状態だった。
鬨の声を揚げて迫る武装した大崎兵三千、武器を持たない南部兵はなすすべなく討ち取られていく。
◆◆◆
鬨の声が聞こえた。
間に合わなかったか、どうする戻るか?
いや落ち着け……今始まったばかりのはずだ、ここから川沿いに出てそのまま敵に全速て突撃、反転する時間を稼ぐ為に、部隊を分けて時間差を付ける、伏兵だ万の数ではない、大丈夫だ駆け抜けるだけだ……よし!
「政実殿、全速で川沿いを駆け抜けます。」
「了解だ、政栄クン、先頭は任せたまえ。」
なぜだ?バカボンがとても頼もしく見える。
騎馬の一団は、林を抜け川沿いの草原にでる。
「政実殿、九戸の騎馬をまとめて、二つに割って突撃です!」
複雑な命令は要らない、彼らは南部家最強の騎馬隊だ。
政実殿が槍を回すとすぐに集団になり、部隊を二つに分け加速していく。
「残りは我とともに縦三列!」
残りの騎馬隊が縦三列の陣形に分かれていく。
「よし、左のお前たち、塊となって九戸に続け!」
「はっ!!!!」
左一列が集団になり九戸に続いていく。
「よし、右のお前たち、塊となって続け!」
「はっ!!!!」
右一列が集団になり続いていく。
「みな塊となって我と続け!!」
「はっ!!!!」
まあ、おれは爺の背中にくっついてるだけなんだけどね。
◆◆◆
南部晴政
「おるあぁぁぁぁぁ、ふん!大崎ごときがワシを取るなど千年早いわ、カッカッヵ!!」
不味いな、ここまで押されたか、だが覚悟はある!ここが我が死に場所だ!一人でも多く道連れにしてくれるわ!!
すでに南部兵は半数が討ち取られ。組織的な抵抗は晴政の周りだけになっていた。
◆◆◆
大崎義直
「晴政を逃がすな、囲め!囲むのだ!!」
「おぅ!!!!!」
大崎義直が勝利を確信したその時、川上に土煙があがった。
◆◆◆
九戸政実
川下に南部の旗が見えてくる、鎧を付けていない兵が円陣を組み囲まれながらも、まだ戦闘を続けている。
「間に合ったようだね……なんで裸で戦ってるんだい?まあ良い後で政栄クンに聞こう。」
槍をゆっくりと横に振る、集団が蜂子の陣形に変化する。
「吶喊!!我に続け!!」
「おおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
◆◆◆
バカボンが突入したようだ。
敵の数が分からない以上、殲滅するより、おっさんを逃がすことを優先させるか。
「直参は晴政様を救出!!、川沿いを川上に駆けよ!!」
八戸領の騎馬隊が集団から離れていく。
……あれ、殿で俺の集団数少なくね?
◆◆◆
騎馬隊の突撃で南部本陣から兵を引き剥がすことに成功した。
八戸、南部の旗が戦場を離脱していく。どうやら無事だったようだって。
こっちは、それどころでないわー!
「ええい、何故俺にばかりむらがる?」
「若の格好が問題では。」
うん、混乱する戦場で二人乗りの黒装束、目立ってるぜ!!
「ハハハ、爺!離脱するぞ!!」
「南部兵!、引け!引け!、晴政様は無事だぞー!!」
「引け、引け!!」
◆◆◆
白寿は最上義光の幼名、このころは源五郎ですが、白寿にしました。親父さん(義守)は、息子の頭の良さを気味悪いと感じているようですね、大崎義直は義光の外祖父にあたります。
伊達家は大崎氏を事実上従属させていますが。あくまでも奥州探題は大崎義直なので盟主は大崎氏としています。
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いろいろご迷惑をかけて申し訳ない。
投稿は続けるので読んでくれると嬉しいです。
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