迎撃 花巻
夜の出陣となったが花巻砦まで街道が整備されているおかげで二刻とかからずに砦につく事ができた。
整備された道は疲れないしね、戦略的に整備道路の存在は大きいのだが、おっさんはどうおもってるのかね?
花巻砦
南下政策の足掛かりとして作られた物資集積場。
「城代は七戸家国か、ご近所さんだけど会ったことはないな。」
政実 「僕も会ったことはないなあ、とくに噂もきかないし。」
モブか……
よし、騎馬隊だけ徴発してさっさといこ。
花巻砦から南にある街道沿いの草原て縦陣をしき敵を待つ。
花巻砦からの騎馬を合わせて千二百か、思ったより集まったな。
九戸の五百がなかったら、守りに徹しなければならなかったところだな、危ない危ない。
しかし今回は物資などを準備する時間がなかったから、力と力のぶつけ合いになっちゃうなー。
俺は基本的に正々堂々正面からハメるのが大好きなんだがね。
今回は九戸騎馬隊の力だけでも十分だし、相魚鱗でよかったんじゃないのか。
損害を気にするなんて、俺らしくないんじゃないかな?
「敵、発見!! 旗は黒川!」
黒川は大崎近辺の独立勢力だと思っていたんだが。ちっ対南部で連合を組んでいるのか。まあいい今回は攻めてきた以上二度と襲撃とか考えられないぐらい叩き潰さないとね。
いきなり襲ってもいいんだけどね、陣形を整えるのを待ってあげるよ。一騎たりとも逃がすつもりはないからね。
爺 「敵は魚鱗四枚のようですな、速攻型ですかな。」
「うん、相手が守りを意識している、あるいは意識させた場合はあれが正解なんだけどね。でも……」
相手側から鬨の声が上がる、土煙をあげて四つの塊が向かってくる。
「では、政実殿、右翼を任せます流れは旗で指示します」
「ああ、君が敵でなくて、ほっとしてるよ。では!」
「爺、馬は任せた、私は旗を掲げる。」
「お任せください。」
青色の旗を掲げる。右翼、左翼ともに青色の旗で染まる。
縦陣の一列目、二列目が左翼となり敵を正面にみて左側に斜めに移動していく。
縦陣の三列目、四列目が右翼となり、右側に斜めに移動していく、上から見れば魚鱗をハの字を逆にした形で半包囲した形に見えるだろう。
「放て!!」
敵が弓の射程に入る直前、大量の矢が魚鱗の頭に降り注ぐ。ここまで事前の打ち合わせどうりだ。
明らかに早い?いえ、これで良いんです。
敵の馬脚が鈍った所で白い旗を掲げる。
右翼、左翼ともに白い旗に染まり、逆ハの字が広がっていく。
右翼は敵を弓の射程で弧を描くように陣形を変化させたあと反時計回りに移動していく、左翼はその逆だ。
ここで敵は四っつの選択肢ができた、移動する左翼の後ろを取るか、右翼の後ろをとるか、軍を二つに分けて両方の後ろをとるか、仕切り直す為直進して距離をとるか。
まあ、どれを選んでもろくな結末にはならないんだが彼らは欲をだし軍を二つに割る愚を犯した。
後ろを取るため方向転換する時間、魚鱗を二枚に割る指示を伝える時間、ほんの少しの時間だが騎馬隊同士の合戦ではそれが致命的となる。
黒川は並以上の将なのだろうが、騎馬部隊同士のハメ技は知らなかったのだろう。魚鱗の頭に矢を打たれた時、馬脚を鈍らせた時点で詰んでいたのだ。
左翼の後ろを取ろうとした敵の横腹を右翼の先頭が全速で突撃する。右翼の後ろを取ろうとした敵の横腹をを左翼の先頭が全速で突撃する。二匹の蛇が互いの尻尾を狙う敵に噛みつく。
敵が横撃を受け混乱したところで、赤い旗を掲げる。
右翼は反時計回りでちいさな円に左翼は時計回りで右翼と敵を囲む大きな円に変化する。
部隊が赤い旗で染った時、敵は四重に包囲されていた。
◆◆◆
敵の動きが止まる、ここで降伏勧告が……
ん?降伏勧告?、いやそんな指示はだしてないよ。
バカボンか?、いやいらないよ?捕虜なんて取ってる余裕はないよ?なにしてんの?大将は……やつだ!!
◆◆◆
降伏勧告?なにそれ美味しいの?
残念ながら黒川は降伏勧告を受けて馬を降りて、武器を手放した、ちっ。
「あっけなく勝っちゃったねえ、大勝利ってやつかい。」
ええ、あなたのおかげて損害もさらに少なくなりましたとも。
「政栄君、質問なんだが、さっきの敵が距離をとろうとしたときは?」
「黒い旗を掲げる。全軍追撃!それでおしまい。」
そう、追撃しながら全滅するまで追い回すのさ。
「なんて言うか、言葉がでないよ。」
「まあ、九戸騎馬隊の騎射ができる、これが勝因なんだけどね。」
「うん?騎射なんて出来て当たり前じゃないのかい?」
「普通は馬上槍も出来ないですよ。馬に乗って戦う事じたいほとんどないんですから。」
「僕らって凄かったんだね。」
「そうですね。」
調子にのせると後が怖いのでやめとこ。
選択肢の本当の正解? 最初の突撃で左翼か右翼に魚鱗を線にして叩きつける。半壊させたところで加速しつつ、次の敵に突撃する。
だが、寄せ集めで魚鱗を組んだ時点で正面突撃するしか無かったと思うよ。それをみこしたうえで正面に誘導するため、縦陣で待ってたんだから。
だが、今回一番悔しいのは、捕虜解放するまで、うちの食料を消費されることだな。ちくしょー!!




