襲撃
朝、九戸を出発して峠を登り、視界が開けて来たところで異変は起こった。
「若、南から幾筋もの狼煙が上がっております。」
峠から見える不来方城方向の更に南に微かに狼煙があがっている。
いや、また一つ煙の筋ができた。
今狼煙を上げたようだな。
襲撃か……戻るより、不来方に入る方が早いな。
「爺、九戸に早馬を出す、皆の荷物はまとめて置いていく、書状をしたためる間に準備しろ。」
「あせらなくていい、不来方城に兵が集まるまでなにもできんからな。」
ほんと勘弁してほしいぜ、馬は使うから荷物は置いていくしかないな、盗まれたら泣くぜちくしょうー。
◆◆◆
不来方城
正門から騎乗したまま中へ、城内の空気は騒然として落ち着きがない。
「城代の石亀(信房)のじいさんはどうした。」
「あわわわわ、どどうすれば……」
原因の一つはあれか、とう!
素晴らしい角度でドロップキックが決まる!!
「なにをするんだって、政栄君じゃないか、いつかえ……」
「えい!」
水平チョップをひじからムチのようにしならせて喉に決める。
「グェェェー」
悶絶する?
「やっと落ち着いたようだな、政頼殿。信房じいさんはどうした。」
「いや、落ち着かせるのに、ここまでする必要はないよね。」
「非常事態だゆるせ!」
「そうだ!大変なんだよ、早馬で親父が倒れてえんぐんが。」
「ああ、もう良い、石亀政頼、非常事態故、信房殿が復帰するまで不来方城の指揮をこの八戸政栄が執る、よろしいか!」
「えっ、いや、その」
「よ、ろ、し、い、か?」
手をチョップの形にしてにじり寄る
「わかりました!八戸殿!」
指揮権強奪~
◆◆◆
不来方城 大広間
「政栄君、こんな所に座っている場合じゃグェェー」
「置物はしゃべらない。」
「爺、皆を部屋に、置物は黙って座っているように。」
さすがに、俺の命令を聞かん奴がいるかもしれんからな、こいつが座っていればなんとかなるだろ。
◆◆◆
「花巻から早馬で援軍を求むと伝えてきた。信房殿が危急のため政頼殿が指揮をとる。」
「では、城内の馬を使い花巻以北の砦や村に敵襲を知らせ砦へ避難させる、そこのお前、準備させ、でき次第出発させよ!」
「はっ!」
「次に八戸領の馬を入れ替えで城内で休ませて置け、水と飼い葉を与えておくのを忘れるな、そこのお前、指揮せよ!」
「はっ!」
「城外に集まる兵士は騎馬と足軽にわけ騎馬は城外で休憩、食事をさせておけ、足軽は峠に置いた八戸領からの補給物資を不来方城に運び込ませろ。足軽はそのまま不来方城の守備にまわす。そこのお前とお前、分かれて指揮せよ。」
「はっ!、はっ!」
「九戸に援軍要請を出してある、到着後花巻に出陣する予定である。」
「残りの皆は、出陣の作業にかかれ!」
「はっ!!!!」
うん政頼殿、指揮してないね。誰も突っ込んでこなかった。(泣)
「あ、政頼殿は、そこで座っているように。大事な仕事だからね。」
「いや、俺もなにかて……」
「返事は、了解か承っただ!」
「う、うけたまわった。」
◆◆◆
夕刻。九戸騎馬隊が到着した、いい笑顔で。
◆◆◆
不来方城 大広間
「みな揃ったようなので、まず、現在の状況を説明します。」
「今回は一関の東、北上川の向こう岸に陣を構えた(いやどこに構えてるの?)晴政様の裏を抜けてきたものであると考えられる。(なにしてんの?あのおっさん)」
「街道を北進、途中の村等を襲っていないことから、敵の目的は花巻の物資集積場を襲撃、兵糧を焼き払うことと考えられます。」
「目的上、敵は機動力のある騎馬中心の軍であると思われます。」
「こちらは花巻砦の南、北上川の西の草原に移動、街道を北進してくる敵軍を迎えうちます。」
「軍の編成は早期迎撃を目的とします、機動力を重視して騎馬隊のみの編成を行います、大将は九戸政実、目付に私が、初期陣形は四列縦陣、部隊長に色付きの旗を持たせます、旗を目印に行動することを徹底させること、い…、不来方城の留守居役は石亀政頼、以上!半刻後出陣する。」
いらない子お留守番。
◆◆◆
不来方城 大広間
九戸政実
「本当にいいのかい?、政栄クンが大将じゃなくて。」
「ええ、騎馬中心の編成ですし、主力は九戸騎馬隊ですからね、大将が私では締まらないですよ。」
「悪いねえ、ところで陣形なんだが、草原での迎撃なのに魚鱗でなくていいのかい。」
ほう、さすが戦に関しては、頭がまわるね。
「おそらく敵も、魚鱗か、数が多ければ鶴翼で押してくるでしょうから、被害を少なくするため、四列縦陣からの絡めで敵を壊滅させます。」
「敵を壊滅って……いいね、わかった君の作戦にしたがうよ。」
横陣や縦陣は変化させてなんぼ(価値がある)だからね、九戸騎馬レベルならではの変化を敵にみせてやるよ。
「あ、忘れてた、九戸騎馬隊は一列目と四列目、装備は弓を多めで頼むよ。」
「わかった、うちの実力を敵にみせてやるよ。」




