評価査定
「では、次の話にまいりましょう。八戸領を回すために、米を買わねばなりません、ですが…。」
「ああ、もちろん金などない!、うちは貧乏だからな、ここまでの旅費もいままでの貯えをほぼ吐き出した位だ。」
「つまり、売り物を持ってきたわけですね。」
「話が早くて助かる、売れるかどうかはわからないけどね。というわけで田中殿に査定して欲しい。」
「値をつけろと?、私の本業ですから手加減はできませんぞ。」
「望むところ、と言いたいがお手柔らかにね。船に積んであるから見て貰おう。」
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堺港 南部丸下部倉庫
「目録は目を通しました、では一つ一つ見ていきましょう。」
「爺!塩壷から持ってきてくれ。」
あの、蠣崎との争いの切っ掛けとなった塩だが……
もともと、新井田領側に生産工場があったため父上である、新田行政が塩の管理をしていたわけだが、俺にナイショで旨塩を売っていたのよね、じじいの鎧とか、おかしいなとは思っていたんだが、しかも領内に流通している塩には混ぜ物(海草の灰)をして藻塩として売っていたそうだ。
使者に決まってから、堺に行くための旅費を工面していたとき父上から、旅費とともに教えられたわけだ。
斎藤衆め、俺に黙っていやがって、まあ雇い主は父上なんだけどね、爺までだまっていることはないだろう。しれっと行政様に口止めをされていたって。(泣)
仕返しに一週間奴らの料理の塩は藻塩にしてやった。
「ほう、南方の旨塩ではありませんか!しかもこんなに。」
「うちの領でつくっている塩だ、領内に出回っている塩には混ぜ物をして売っている、これは混ぜ物をしていない純粋な塩だ。」
後ろで爺たちが声を殺して笑っているな、あとで藻塩の刑だ。
「私でしたら一壷、二貫(二十万円)程で仕入れたいですな。」
いきなりこんな値段か、しかも仕入れ価格かよ、いったいいくらで売る気なんだ、そういえば父上も口を割らなかったよな、販売価格が気になる。
「これは、大量生産しているからいくらでもあるぞ、ただ…」
「ただ、考えなしに流通させては、値崩れを起こして価値がなくなりますな。」
後ろで爺たちが笑いたいのを我慢しているようだ、だが少し漏れてるぞ、あとでお仕置きだ!
「わかっている、その辺は田中殿のよいように我らは素人だ素直に従わせて貰う。」
「わかりました、一壷一貫で千壷を仕入れましょう、無くなり次第追加という形でどうです?」
いきなり半額?でも目標の四百石の倍?この塩を買う金持ちっていったいどんな人?
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勘違いをしてはいけない、田中殿は売ることのできる顧客を持っているから仕入れているのだ、俺達が売り切ることなどできんのだ。
「干貨は形の良いものを厳選しているのですね。干し鮑、干しナマコは倭寇と取引のある商人に流します。この量でしたら五百貫でいかがです。」
「全く相場がわからん干貨に関しては言い値でいい。」
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「では、食品関連は全部で二千貫で私が一旦預かりましょう。」
四百石の目標達成したよ。
「……よろしく頼む、次の漆器を爺頼む。」
「ほう、これは何と薄い、しかも正確な円を、木目も正目ですか、色は赤と黒の二種類ですね。」
「水車を利用して削りだしたから、形はすべて均一だ、まあ面白くはないかもしれんがな。」
「大きさ形の注文はききますか?」
「きくんだが注文を受けて一年位かかるかな、輸送関係で。」
「なる程、ではここにある物は見本として、二百貫で買い取ります、型紙などを使い注文をとることにしましょう。」
「それと、漆器に蒔絵を施した物を作りたいのだが、職人を紹介してくれないか。」
「ふむ、心当たりがあります。なんとか口説いてみましょう。」
「ああ、すまんが条件は一年、百石の最低五年、弟子の育成、八戸領まできてもらうの三つだが、来てくれるかな?」
「難しいですな。百石は破格なのですが、その……」
「わかっている、最悪倍だすから頼む。」
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二千二百貫、とっくに目的達成です。
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さて二千二百石か予想の五倍以上かよ。
中型の南部丸は排水量約三百トン、米一石が150キロで俵一表が60キロだから
300000÷150=2000で最大二千石
300000÷60=5000で最大五千表
だが、南部丸には貨物室に二千表しか積めないのだ、麦俵で試したからな。
2000×60÷150=800 つまり八百石しか積めないのだ!
ちなみに戦国時代の安宅船は米千石積で南部丸の半分位。有名な日本丸でおよそ米千五百石積(推定)だったらしい。
新しく建造中の大型も七百トン程度、並みのガレオンで千トン程度。
目標は年間三万石を輸送したいから年間一隻三往復としても
30000÷800÷3=12.5つまり南部丸が十三隻、ガレオンで六隻は必要なのですか。
これはマジで輸送特化の木造船を作らないといかんかな。
そのためには、環境を……。
まあ、始まったばかりだ、やることができてラッキーだと思おう。
とにかく今回は五百石程度にしておくしかないなこれは嬉しい悲鳴なのかな?
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三万石を三年間、麦と米を交換して、四十五万石の麦を貯め込み飢饉に備える腹づもりです。




