常陸国 乱 その二十九 谷田部の戦い
まとまったので投稿です。不定期ですが……左右がややこしいですね。<(_ _)>
◆◆◆
鬼怒川側
結城側右翼 小山下野連合 一万
錐突陣で佐竹側の中央と左翼の間へ吶喊し一列目を分断さらに錐先部を二列目に押し込もうとしていた。
「前列突破!この勢いなら分断可能かと!」
小山氏朝
「よし、左右に槍衾を敷きつつ、更に奥へ突撃!敵右翼後方迄突き抜けて分断さらに兵を送り込む橋頭堡を作るぞ。」
錐突陣は雁行より極端に鋭角で敵陣に楔を打ち込み分断するのに適した陣で、突進しつつ先端部を左右に開き後ろの隊が突進するを繰り返し行う形となる。先端部は常に後方から突入突撃、左右展開を繰り返し行う為、先端部の突進力が常に落ちない様になっている。更に左右に展開した兵は中央の芯となる突進部に横槍を入れられるのを防ぐだけで無く隙あらば押し広げ突進する隊を増やし更に突進力を上げる働きを持っている。
そして敵を分断した後には敵後方に兵を送り込む橋頭堡となり背面展開から前後挟撃、更に包囲殲滅に繋がる。
錐突陣は守りを固めて動きが少ない陣形に対して効果的な流動陣形であると言える。
「敵増援!前方が厚くなっています。」
小山氏朝
「構うな!一度勢いがついた流れは簡単には止められぬ!厚かろうと突き抜けよ!」
「オオオオオ!!!!!」
更に気勢を上げ増援で厚みを増した敵陣に突入する、多少勢いは衰えたものの勢いに任せ力尽くでゴリゴリと人垣をこじ開けていく。
◆◆◆
谷田川側
結城側左翼 宇都宮下野連合 七千
「若!頭から!左に寄れです。」
多功秀綱
「……分かった、敵左翼中央より少し左手に突入する。全員我に続け!」
「オオオオオ!!!!!」
大太刀を振りかざして目標を指し示す!怒声が上がり勢いを増した魚鱗の一枚目が佐竹側右翼に突入していく。
魚鱗二枚目
多功房朝
「綱継!秀綱が崩した少し先を削りながら押していけ!」
(よし!敵は守りに主眼を置いているから動きが消極的だこのまま押しても大丈夫って……)
「うおぉぉ!!」
敵の物見矢倉付近から矢が雨の様に降ってくる。
「親父!」
多功綱継が房朝の前に付き飛来する矢の雨を槍で叩き落とす。
大槍を一閃して矢の雨を振り払い、何本もの矢を槍を振り回して叩き落とす。
「大丈夫か親父って、おりやぁぁぁ!!」
他の矢とは明らかに威力の違う矢を叩き落とそうとするが柄に食い込み槍を取り落としてしまう。
「お、おう、助かった。」
「あの矢倉の上からだ、那須の大弓使い位の奴が中央の矢倉の上にいる。」
「こっちから反撃は?」
「無理だ!届かねえ!……親父は俺の影に!指揮に専念してくれ、皆聞け!大弓だ矢楯の厚いのを二枚重ねて矢倉に対して斜めにかざせ!親父に傷一つつけるな!」
「応!」
すかさず大楯を持った兵が房朝を取り囲む。
「いや、指揮がとりづらいんだが。」
「そのぐらい我慢してくれよ、親父を弓の射程の外へ更に左だ!急げ!!」
「お、おいそんなに左に寄ったら削れない……」
◆◆◆
佐竹側中央 物見矢倉付近
「左翼右側を突破した敵はそのまま増援に突入速度は鈍りましたが以前前進を止めません。」
(使わない様に予備兵力で騎兵に回しておいたものを……)
「大掾貞国に伝令、一旦右翼に回り中央二列目と三列目の間を駆け抜け左翼に入り込んだ敵の錐突陣に騎馬部隊による横槍をいれよ!」
「横槍による分断が成功したら敵前衛は囲んで殲滅、後衛は押し返せ!」
「八戸殿!敵右翼、魚鱗一枚目が右翼中央に突入……右翼右側一列目壊滅しつつあり。」
「何!?」
(アレ?宇都宮ってそんなに強かったか?当代は宇都宮広……誰だっけ?……ええい有象無象なんぞ覚えてねーよ……落ち着け!現実に一列目は壊滅している今は中央内部で騎馬部隊を動かしてるから中央陣形は動かせん……)
「敵魚鱗の旗は!」
「三つ巴!宇都宮多功家のものと思われます!」
(多功……多功城!謙信や北条を何度も退けた一族か……どうする魚鱗はあと二枚ある三列目まで削られては右翼が壊滅する)
「小助!矢倉から二枚の大将付近に矢は届くか?」
「降らすだけなら隊の者ならギリギリ届きます、私は狙えます。」
「よし小助は指揮をとっている奴を狙え!殺せなくてもよい矢の雨を降らせて二の足を踏ませてやれ。」
「お任せ下さい。」
すかさず、近くの矢倉に伝令が飛び、一斉射の準備が整う。
「魚鱗二枚目の大将を狙え!一斉射撃て!」
天空に一斉に矢が放たれ放物線を描き敵陣に降りそそぐ。
(政栄様の恩為、大将首いただく)
八戸製の鋼鉄粒を再加工、加熱処理された板撥条合板で造られた連結組み立て式、小助カスタムの大弓をを構え打ち下ろしで狙いを定める。
(見敵!当たれ!)
轟という音と共に、剛性を増した特注の矢が放たれる。
矢の雨が降りそそぐ中、矢倉から一条の光が敵大将の首目がけて飛んで行く。
(もらった!……なに?)
敵大将の前に踊り出た騎馬武者が大槍をかざして矢を防ぐ、敵大将を狙い放った矢は大槍を吹っ飛ばすが、騎馬武者に防がれてしまう。
(おのれ!ならば二射目で……)
小助が改めて弓を引き絞るが、すでに大将の廻りには矢楯を斜めに構えた武者が囲み射程の外へと大将を連れだしていた。
構えた弓をおろし溜息をつく。
「政栄様、申し訳ありません逃しました。」
「魚鱗は下がったか?」
「はい、魚鱗は少し谷田川寄りに動き矢の射程から離れていきます。」
「よし十分だ!小助ご苦労、引き続き矢倉の指揮を頼む。」
「ハッ!」
(多功家か、宇都宮は芳賀高定一人の政略型の大名だとばかり思っていたが、一大名足る武力を持っていたのか……)
「敵右翼の動きは逐一報告してくれ。」
◆◆◆




